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目覚めたら異世界で人魚だった  作者: 御餅屋ハコ
目覚めたら異世界で人魚だった 第三章
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第三章 08 この世界の回復魔法

08 この世界の回復魔法


 目覚まし時計のベルに起こされ、私は目を覚ました。身支度を調え、ノアタムと共に町に出る。

 朝から開いている店で、『メーコのパン・タコのスープ・海藻サラダ・木の葉のお茶 50テニエル』の朝食セットを頼んだ。メーコのパンは米粉のパンのようだった。スープやサラダは文字通りの物だった。お茶も、植物由来の甘くない飲料の味がした。

 宿に戻り、受付で今日の宿代を払う。

 昨日もやったことなので、どれもスムーズに終えることができた。

「魔法屋って、何時ぐらいからやってるの?」

 部屋に戻り、私はノアタムに尋ねた。ベッドの枕元の目覚まし時計は、左斜め下を指している。日本で言う朝の八時前後だろう。

「魔法屋の経営者次第だが、時計塔の鐘が鳴る朝の七刻から開店するところが多いだろうな。今から出かけるのは少し早いかもしれん」

 朝の七刻は針が270度の位置、午前九時のことだ。

「魔法屋を探す時間がいるとしても、一時間ぐらい早いもんねえ」

「そうだな。では、出かける前にこの世界の回復魔法について説明しておこうか」

「あ、知りたい知りたい! 自分の怪我を治してはもらったけど、どういう仕組みなのかよくわかんなかったもん」

 私はベッドに腰掛け、ノアタムに続きを促した。

「わかった。

 昨日も説明したように、この世界で人魚が使う魔法は、『人魚の精神力を使い、精霊の力を借りて、一瞬だけ、その場に世界のエネルギーを呼び出した』状態だ。

 回復魔法は、『人魚の自然治癒力を高める精霊の力を、一瞬、呼び出した』状態と考えればいい。

 だから、どんなダメージもたちどころに回復するわけではない。

 『時間を掛ければ魔法無しでも治るような人体のダメージを、精霊の力によって短時間で回復させるもの』なのだ」

「ほう」

「この世界の魔法には、初級、中級、上級があり、それは回復魔法も同じだ。

 初級は、何もせずとも、または傷薬を塗る程度の簡単な処置だけでも短期間で治癒するような怪我を、一瞬で回復させるレベルだ。

 軽度の擦り傷や切り傷などをすぐに治せる程度の威力、ということだ。

 中級は、軽度の医療行為が必要になる怪我を一瞬で回復させるレベルだ。

 そうだな、例えば現代の日本で、病院のない場所にキャンプに行ったとしよう。そして捻挫や火傷などの怪我をしたとする。だが、キャンプは中断せずに応急処置で数日を乗り切り、キャンプの終了後に町の医者にかかる程度の怪我。それを一瞬で治せるほどの威力だ。

 上級は、即座に病院に向かうべき大怪我、それを一瞬で回復させるレベルだ」

「ふーん……。

 日本人で例えると、初級は絆創膏を使うしかできない素人で、中級は、お医者さんじゃないけど応急処置の知識がある人で、上級が、お医者さんって感じ?」

「級の分類のイメージとしてはそう考えても良い。

 だがこの世界では、上級の回復魔法を習得しているだけの者は、医者とは呼ばん」

「え、なんで?」

「回復魔法は病気には効きづらいのだ。風邪などの、本人の自然治癒力が高まれば回復するような軽度の病気ならばともかく、原因を取り除かない限り治らない病気もあるからな。

 だからこの世界の医者には、回復魔法に加え『この症状にはこの薬草が効く』などの医学の知識がなければならん。

 上級の回復魔法と、医学の深い知識。医者になるにはその両方が必要だ。

 魔物狩り屋は、回復魔法は怪我を治すために習得する者が多い。だが病気のことまで学ぶ者は少ないので、上級の回復魔法を習得している魔物狩り屋がいても、それは医者ではないのだ」

「なるほどねー」

「そしてもう一度言っておくが、回復魔法とは、『魔法を使わない医療行為でも時間を掛ければ治るような怪我を、長い時間を使わずに治す』だけの物だ。

 だから手当てしても治せないレベルで肉体が破損した場合、回復魔法でも治せんぞ。

 RPGではHPが0になった状態から『蘇生』する魔法があったりするが、この世界では死んだ者は蘇らない。魔物と戦うときは気をつけることだな」

「うっ……脅さないでよ……」

「忠告だ」

 ノアタムの話が一段落し、私は今の説明を自分の中で反芻した。

「ええと……私はどれも中級の魔法を習得してる設定なんだよね? てことは、回復魔法も中級ってことでいいの?」

 しばらく考えて質問が浮かんだので、私はノアタムに尋ねた。

「うむ。だが、中級といってもピンキリだからな。シンの回復魔法がどの程度の威力かは、これから魔法屋に行って確かめるといい」

「またそういうこと言う……。

 あっ、じゃあさあ、RPGだと、HP全回復の魔法と、HP小回復の魔法があったりするじゃない? で、魔力の低いキャラは全回復の魔法は覚えられないけど、小回復の魔法を何回も重ねがけしてHPを全快させる、とかやったりするじゃない?

 私の回復魔法が中級だとしても、重ねがけすれば大怪我でも治せたりするの?」

「……できんことはない。中級の回復魔法を掛けるごとに、複雑骨折がただの骨折になり、骨にひびが入った状態になり、ただの打撲になり、正常に戻る、というようにな。

 だが、そんなに中級の回復魔法を連発するのは、上級の回復魔法を一回使うのよりも疲れるからな。それがやれるかどうかはお前次第だ」

「そっか……消費MP20のHP全回復の魔法を一回使うより、消費MP5の小回復魔法を五回使う方がMPの消費は多いもんねえ。でもいざとなったら、ちまちま回復するしかないよね」

 魔法の説明も、RPGでイメージするとわかりやすい。

 そしてノアタムの今の説明で、私はまた疑問が浮かんだ。

「あれ? でも、この世界の回復魔法って、『人魚の自然治癒力を高める』って感じなんだよね? 骨折にそのまま回復魔法を掛けたら、骨が歪んだままくっついちゃわないの?」

「いい質問だ。

 確かに回復魔法は人魚の自然治癒力を高めるものだが、少しは精霊の力の補助がある。骨折に対する添え木のように、骨の位置を正常に戻すぐらいならば精霊の力に助けてもらえるのだ。他にも、傷口に入った泥なども精霊の力により除去される」

「わあ、便利」

「だが、怪我を治すのはやはり、本人の回復力だからな。体力が落ちていると傷の治りも遅い。だから年を取ると回復魔法も効きづらくなるのだ」

「なるほどー。万能じゃないんだ」

「そうだ。だから回復魔法があるからといって、自分の体を粗末に扱うなよ」

「はーい」

 この世界の回復魔法について、なんとなくイメージがつかめてきた。後は実践あるのみだ。

 ノアタムと話していて、それなりに時間も経ったようだ。

「じゃ、そろそろ行こうかな」

「うむ」

 私は座っていたベッドから腰を上げ、町に魔法屋を探しに行くことにした。

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