↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目覚めたら異世界で人魚だった  作者: 御餅屋ハコ
目覚めたら異世界で人魚だった 第二章
PR
25/217

第二章 11 質問(魔法の全体攻撃と単体攻撃とか)


11 質問(魔法の全体攻撃と単体攻撃とか)


 紙包みを開き、ほぐした魚肉と刻んだ海草をはさんだパンをスカートの上に置く。人間ならば『膝の上』と表現する辺りだ。それから瓶詰めのジュースを自分の横の地面に、海底に置く。瓶はコルクのような弾力のある木で栓がしてある。

 ノアタムはひれを三脚にして隣に立った。

「魔法の単体攻撃と全体攻撃だが、それは魔法の級によって決まるものではない。

 魔法が使えるようになるには、精霊に『この人間に、世界のエネルギーをこれだけの量、呼び出すことを許可する』と認められる必要がある。

 一度そうやって許可されれば、その量までなら、人魚がエネルギーを狭い範囲に使おうが、広い範囲に使おうが、自由なのだ」

「ふんふん」

 私は弁当を食べながらその話を聞く。

「だが、中級の火の魔法を一つ習得したからといって、中級の火の魔法がすべて使えるようになるわけではない。

 そもそも、中級といっても初級に近い所から上級に近いところまで、幅がある。同じ級の魔法でも、扱う人魚によって、精霊に許可されたエネルギー量が異なる。

 それに、エネルギーの発動の仕方が違えば、気合いの入れ方も異なってくる。だから魔法が得意な者でないと、応用は難しい」

「うーん……」

 私はうなりながらノアタムの話を聞く。

「そうだな、例えば、日本の語学学校を想像してみろ。

 英会話教室は、初心者用、日常会話用、ビジネス用、試験用など、いろいろなコースがあるだろう。

 英語が苦手な者は初心者コースの英文でも習得が難しい。

 それでも努力すれば、初心者コースを修了して日常会話コースに進み、テキストの例文を丸暗記するぐらいはできるだろう。

 英語が得意な者は、いきなり日常会話コースに通っても内容を理解できる。そして、テキストの例文を応用して、臨機応変に使いこなすことができるだろう。

 だが、いくら英語が得意でも、知っている単語の範囲でしか応用できない。

 だからもっと上達するためには、ビジネスや試験用のコースに通って、日常会話には出てこない専門用語を覚えないといけない。

 この世界の人魚が魔法屋に通うのも、そんな感じに近いな」

「あーなんか、イメージできてきたかも。

 例えば火の玉を一個、作れるようになりたいって魔法屋に通って、精霊に認められて習得するよね。それは例えば、火の玉のエネルギーが100だったら、同じ熱量までの火の魔法なら使えるってことだよね。100の火の玉を一個作るか、1の火の粉を百個作るかは、人魚が好きにしていいんだ。でも、器用な人じゃないと、応用して魔法を使うのは難しいわけだ」

「そう。だから器用な者なら、魔法屋で単体魔法を一つ習得しただけで、自力でそれを全体魔法に変化させられる。

 だが器用でない者は、魔法の発動させたい形ごとに、何度も魔法屋に通って訓練するのだ」

「そっかー。器用な人だと費用が浮くからいいね。

 ねえ、私はどっちなの? 応用できる人? さっきの火の玉を、火の粉みたいに降らせることもできる?

 それか、過去に何度も魔法屋に通って、火の粉みたいに降らせるやり方も習得してる、って設定になってるの?」

「それはお前自身で確かめてみるといい。シンは『魔法とナイフを使って一人旅をしてきた』のだから。どんな火の魔法が使えるのかは、自分が一番よく知っているはずだ」

「煙に巻くようなこと言って……。応用できる人、って確定してれば、今後違う魔法を覚えるんでも、魔法屋に一回通えば済むから安上がりでいいのに……」

「そうは言うがな、魔法の範囲を単体から全体に増やせば、威力は弱まるのだぞ。

 威力100の火の玉を一個作る魔法を覚えた人魚がいるとしよう。その者は器用で、自力でその火の玉を、火の粉の全体魔法に応用もできたとする。

 だが、威力100火の玉を二つ同時に作って放ちたければ、やはりもう一度魔法屋に通って、威力200までのエネルギーが使えるように、精霊に認めてもらう必要がある。

 これは例え話だから、ここまで厳密な数値が決まっているわけではない。だが、単体攻撃と同じ威力で全体攻撃を使おうと思ったら、魔法屋に通って訓練する必要があるだろうな」

「そっかー。魔法をたくさん使えるようになるには、魔法屋に何回も通わないといけないんだ。お金かかるなあ」

 ため息をつく私に、ノアタムは言った。

「そういう仕組みでないと困るのはお前だぞ。

 誰もが『火の中級魔法を一度習得したら、あとはどんな火の中級魔法も使える』ということになったら、町の魔法屋の経営が成り立たん。

 ゲームでは、町の施設をプレイヤーが気が向いたときに使うだけでもよいが、実際の施設は、客が来なければ経営難に陥る。

 『以前、火の玉の魔法を覚えに通って、今度は、火の粉の魔法を覚えに来ました』という客が何人もいなくては困るのだ。

 だから、精霊の姿を美しくデザインし、他の魔法屋ではなくうちに来てください、と客を呼び込むわけだ」

「……ああ! 鑑定屋を出たときにもそう言ってたね! 精霊が綺麗な顔で萌えキャラみたいになってるのは、そういう理由もあったんだ」

 私は納得した。

「語学学校などでも、先生が好きだから通う、という場合もあるだろう。人魚が精霊の外見に好意を持てば、やる気につながって上達しやすい。今すぐ必要でもないけど、精霊に会いたいから新たな魔法を覚えようか、と何度も魔法屋に通う者も出てくる。経営者は利益を得るし、通う人魚は自分の能力が増える。

 施設の運営側にも利用者側にもメリットがあるから、精霊の外見は美しく作られていることが多いのだ」

「なーるほどねー」

 私は大きくうなずいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。