第65話 1600年6月5日
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朝
俺は目を覚ますと湯を沸かし、コーヒーを淹れた。いつものように煙草に火をつけ、一服しながら今日の予定を考える。
先日の現代での納品ラッシュと仕入れには、ほとほと疲れた。あれだけの買い物を短期間で済ませたのだから、疲れるのも無理はない。ただ、予定していた機械の納品も仕入れも滞りなく終わり、ひとまず安心している。
唯一、ティアラだけは注文制作になってしまい、納品まで一週間かかることになった。
もっとも、南蛮人たちが沖縄に戻ってくるのは三か月後だ。それまでに現代の時間を一週間進めればいいだけなので、ティアラの完成を待たずに塩屋村へ戻ってきた。
塩屋村では、昨日からゴーヤーとヘチマの収穫が始まっている。どちらもなかなかの出来で、村人たちも喜んでいた。
ただ、これだけ収穫できると塩屋村だけでは食べきれない。せっかくなので、今日は近隣の三つの村へお裾分けに持っていこうと思っている。
そういえば、三つの村では、そろそろ第三畑の開墾が終わっている頃だろう。
食料が不足している村々なので、第一畑と第二畑は開墾が済むとすぐに作物を植えた。しかし、第三畑は冬野菜を育てる予定だったため、木の切り株や石を取り除くところまで村人たちに任せ、耕すのは日を改めて俺が手伝うと約束していた。
ちょうど今日はゴーヤーとヘチマを届けに行くつもりだったので、ついでに第三畑も耕してしまおう。
今回は現代で購入した大型トラクターがある。クボタの百馬力、ロータリー付きだ。これまで使っていた機械とは馬力が違うので、一ヘクタールの畑を耕すのにどれくらい時間がかかるのか、俺自身も楽しみにしていた。
三つの村を回っても、ブラックホールを使えば移動時間はほとんどかからない。
よし、今日は一日で三つの村の第三畑を耕してしまおう。
そう決めると、俺は残っていたコーヒーを飲み干し、煙草を灰皿に押しつけた。
朝食を済ませると、俺はシンガとタルガニに声をかけた。
「今日は三つの村を回ろうと思うんだ。ゴーヤーとヘチマを百五十キロずつ用意してくれないか。二人も一緒に行こう」
二人とも車に乗れると聞いて、嬉しそうに二つ返事で引き受けてくれた。
前回は荷台に乗ってもらったが、今回は俺を含めて三人だけなので、全員が車内に座れる。
用意してもらったゴーヤーとヘチマを荷台に積み込み、俺たちは村を出発した。
最初の村までは三十分ほどだった。
朝早い時間だったが、村人たちは車の姿を見つけると、次々に集まってきた。子供たちも嬉しそうに駆け寄ってくる。
車を降りると、村の長老が出迎えてくれた。
「ユウマ殿、先日は琉球芋をありがとうございました。村の者たちも大変喜んでおります」
長老は丁寧に頭を下げた。
「いえいえ、お役に立てたならよかったです」
「それで、今日はどうなされたのですか?」
「塩屋村で野菜がたくさん採れましてね。皆さんにもお裾分けしようと思って持ってきました。それと、第三畑の様子を見に来たんです。準備ができていれば、今日中に耕してしまおうと思いまして」
そう説明すると、近くにいた畑仕事のリーダー格の男が前に出てきた。
「ユウマ殿、第三畑の木の根はすべて取り除きました。大きな石も片づけてあります。いつでも耕せるようになっております」
どうやら、こちらが思っていた以上に準備は進んでいるようだった。
とりあえず、持ってきたゴーヤー五十キロとヘチマ五十キロを村人たちに渡した。
「皆さんで分けて食べてください。塩屋村では昨日から収穫が始まったばかりなんですが、なかなかの豊作なんですよ」
長老は何度も礼を言い、村人たちは珍しい野菜を手に取って嬉しそうに眺めていた。調理の仕方はシンガに説明してもらうことにして、俺はタルガニを連れて第三畑へ向かった。
畑は百メートル四方、ちょうど一ヘクタールある。見渡す限り木の根や大きな石はなく、村人たちが相当頑張ってくれたことが分かった。
俺は畑の脇にブラックホールを出した。以前なら大騒ぎになっていたところだが、何度も見ている村人たちは、もうそれほど驚かなくなっている。
「ちょっと神様から道具を借りてくるから、ここで待っていてくれ」
そう言ってブラックホールをくぐり、現代の倉庫へ戻った。
倉庫には先日購入したばかりの大型トラクターが置いてある。クボタの百馬力、ロータリー付きだ。運転席に乗り込み、エンジンをかけると、力強いディーゼルエンジンの音が倉庫に響いた。
俺はそのままトラクターを動かし、ブラックホールを通って村へ戻った。
大きな機械が姿を現すと、さすがに村人たちが集まってきた。
「ユウマ、なんか前より大きくなってないか?」
タルガニが不思議そうに尋ねてきた。隣にいたシンガも、以前のトラクターとの違いに気づいたようだった。
「そうなんだよ。神様がもっと大きなものを用意してくれたんだ。これなら広い畑も早く耕せると思う」
「これ以上大きなものまであるのか……」
タルガニは呆れたように笑っていた。
俺はトラクターを畑に乗り入れ、ロータリーを下ろしてゆっくり走り始めた。
後ろでは回転する刃が土を砕き、固まっていた地面を次々と掘り起こしていく。百馬力ともなると余裕がある。多少土が固いところでもエンジンの回転が落ちることなく、一定の速度で進んでいった。
最初は畑の外周から耕し始め、端まで行くとロータリーを持ち上げて方向転換する。今度は隣の列を少し重ねるように走り、耕し残しが出ないようにした。
ロータリーの幅が広いので、一度通るだけでもかなりの面積を耕せる。以前の小型トラクターなら何度も往復しなければならなかったところが、今回はあっという間だった。
村人たちは畑の端に集まり、次々と土が掘り返されていく様子を眺めている。
途中、小さな石がいくつか出てきたので、いったんトラクターを止めて取り除いた。村人たちが事前に大きな石や木の根を片づけてくれていたおかげで、それ以外は順調だった。
一時間ほど経ったところで、畑の半分以上を耕し終えていた。
俺は運転席から周囲を見渡した。さっきまで雑草の生えていた地面が、きれいに砕かれた茶色い土へと変わっている。
さらに作業を続け、最後に畑の端を整えるように耕していった。
結局、一ヘクタールの畑を耕し終えるまでに、二時間もかからなかった。
ロータリーを持ち上げて畑の外へ出ると、俺はエンジンを止めた。
静かになった途端、村人たちが一斉に畑へ入っていった。
タルガニはしゃがみ込み、手で土をすくい上げている。
「ユウマ、すごいな。こんなに柔らかくなるのか」
シンガも隣で土を触りながら、感心したように頷いていた。
「これなら作物もよく育ちそうだ」
俺は運転席から降り、二人のところへ歩いていった。
「今日は最初の荒起こしだから、すぐに何かを植えるわけじゃないんだ。雑草が生えてきても、そのまま土を覆わせておいてくれ。植え付けの前に、もう一度耕しに来るよ」
畑のリーダー格の男も近づいてきて、深々と頭を下げた。
「ユウマ殿、ありがとうございます。これで第三畑の準備も整いました」
「皆さんが根っこや石をきれいに取り除いてくれたおかげですよ。こちらこそ助かりました」
俺はそう答えながら、耕し終えた畑を眺めた。
これで一つ目の村は終了だ。
残りは二つ。
時計を見ると、まだ午前中だった。
この調子なら、今日中に三つの村を回れそうだ。
少し問題があったのは、次の村だった。
一つ目の村を出た俺たちは、二つ目の村へ向かった。到着すると、こちらでも村人たちが出迎えてくれた。
まずは持ってきたゴーヤー五十キロとヘチマ五十キロを渡した。村人たちは大喜びで、シンガが食べ方を説明すると、女たちが早速野菜を分け始めた。
俺は村の長老に第三畑の状況を尋ねた。
「第三畑の準備はどうですか? 今日は耕しに来たんですが」
すると長老は少し困った顔をした。
「それが、ユウマ殿。一つだけ、どうしても抜けない木の根がありまして……」
話を聞くと、以前俺が渡したチェーンブロックを使い、村人総出で引き抜こうとしたものの、びくともしなかったらしい。
「ほかの根や石は全部片づけたのですが、それだけが残っております」
「そうですか。とりあえず見に行きましょう」
俺たちは第三畑へ向かった。
畑に着くと、確かに中央付近に大きな切り株が残っていた。近づいてみると、直径は一メートル以上ある。周囲の土は深く掘り返され、太い根も何本か切断されていた。
村人たちが相当苦労したことは一目で分かった。
「こりゃ大きいな……」
俺は切り株の周囲を歩きながら眺めた。これだけ太い木なら、地中にも相当な根が張っているはずだ。
「何人がかりで引っ張ったんですか?」
「男たちが交代で綱を引きました。神様からいただいた道具も使いましたが、少しも動きませんでした」
なるほど。チェーンブロックにも限界がある。これほど大きな切り株を人力で引き抜くのは、さすがに無理だろう。
「分かりました。これは俺が何とかします」
「ユウマ殿、何とかなるのですか?」
「ええ。ちょうどいい道具があるんですよ」
俺はそう言って畑の脇へ移動し、ブラックホールを出した。
「ちょっと神様から別の道具を借りてきます。皆さんは危ないので、畑の外で待っていてください」
タルガニとシンガも、何を持ってくるのか気になるらしく、顔を見合わせていた。
俺はブラックホールをくぐり、現代の倉庫へ戻った。
倉庫には先日購入したばかりのコマツの二十トンクラスのパワーショベルが置いてある。
運転席へ上がり、エンジンを始動させた。
腹に響くようなディーゼルエンジンの音が倉庫に響く。
俺は操作レバーを握り、ゆっくりと機体を動かした。鉄製のキャタピラが地面を踏みしめながら前進する。
ブラックホールを通り抜け、再び1600年の村へ姿を現した。
その瞬間だった。
「うわあああっ!」
「な、何だあれは!」
「化け物だ!」
村人たちの悲鳴が響き渡った。
さっきまで畑の脇に集まっていた男たちが、一斉に後ずさりする。腰を抜かして尻餅をつく者までいた。
無理もない。
先ほどのトラクターでも十分大きかったのに、今度は二十トンもの鉄の塊だ。巨大な腕を前方に突き出し、鉄のキャタピラで動いている。
しかも、これまで村人たちが見たことのない形をしている。
「ユ、ユウマ!」
タルガニが叫んでいる。
俺は運転席から手を振った。
「大丈夫だ! 俺だよ!」
それでも村人たちは動こうとしない。
シンガなどは口をぽかんと開けたまま、完全に固まっていた。
俺はパワーショベルを切り株の近くまで移動させ、いったんエンジンを止めた。
運転席から降りると、タルガニが恐る恐る近づいてきた。
「ユウマ……これは何なんだ?」
「パワーショベルっていうんだ。土を掘ったり、大きな木の根を引き抜いたりする道具だよ」
「道具……?」
タルガニは信じられないという顔をしている。
「これが道具なのか? 家より大きいじゃないか!」
確かに、そう言われればそのとおりだ。
長老もようやく近づいてきたが、パワーショベルを見上げたまま言葉を失っていた。
「ユウマ殿……神様は、このようなものまでお持ちなのですか……」
「ええ。これなら、あの切り株も抜けると思います」
俺はそう答えると、再び運転席に上がった。
エンジンをかけると、村人たちがまた一斉に後ずさりした。
まずは切り株の周囲を掘り下げることにした。
操作レバーを動かすと、巨大な腕がゆっくりと持ち上がる。
「おおおっ!」
村人たちからどよめきが上がった。
今度はバケットを地面に突き立て、手前へ引き寄せた。
ザクッという音とともに大量の土がすくい上げられ、そのまま横へ移動して積み上げられていく。
「土が飛んだぞ!」
「腕が動いている!」
「人が何十人いても、あんなことはできん!」
村人たちは口々に叫んでいた。
俺は構わず作業を続けた。
切り株の周囲を少しずつ掘り下げ、地中に伸びている太い根を露出させていく。
さすが二十トンクラスだ。
人間が何日もかけて掘ったであろう土を、ほんの数分で取り除いてしまう。
太い根が見えてきたところで、バケットの爪を使って周囲の土を崩し、根を一本ずつ切り離していった。
何本目かの根を処理したところで、切り株がわずかに動いた。
よし、いけそうだ。
俺は機体の位置を調整し、バケットを切り株の下へ差し込んだ。
ゆっくりと力をかける。
最初はびくともしなかった。
さらに周囲を掘り、残っていた根を処理してから、もう一度バケットを差し込んだ。
今度は切り株がぐらりと傾いた。
「動いた!」
村人の一人が叫んだ。
俺は慎重に操作レバーを動かし、切り株を少しずつ持ち上げていった。
ミシミシと根の裂ける音が響く。
そして次の瞬間、巨大な切り株が地面から引き剥がされた。
「うおおおおっ!」
畑の外から大歓声が上がった。
俺は切り株をゆっくりと地面に下ろし、機体を少し後退させた。
周囲に残った根を取り除き、掘った穴を埋め戻して地面をならす。
ようやく作業が終わった。
エンジンを止めて運転席から降りると、村人たちが切り株の周りに集まっていた。
何人もの男が力を合わせても動かなかった切り株が、今では地面の上に転がっている。
タルガニは切り株を見て、それからパワーショベルを見上げた。
「ユウマ……俺たちが何日もかけて抜こうとしたものを、こんなに簡単に……」
シンガも呆然としていた。
「神様の道具ってのは、いったいどこまであるんだ……」
俺は思わず笑ってしまった。
「まだまだあるよ」
そう答えると、二人は同時にこちらを振り向いた。
「まだあるのか!」
今度は俺が笑いをこらえきれなかった。
俺は再びパワーショベルの運転席に乗り込み、引き抜いた巨大な切り株を畑の外へ移動させた。
地面に転がしてみると、改めてその大きさがよく分かる。根まで含めれば大人の背丈を超えるほどで、村人たちがいくら頑張っても抜けなかったのも納得できた。
「これで邪魔なものはなくなったな」
俺は切り株を畑の端に置き、周囲に残っていた土を片づけた。掘り返した場所には大きな穴ができていたので、パワーショベルで土を戻しておいた。
エンジンを止めて運転席から降りると、長老が近づいてきた。
「ユウマ殿、まことにありがとうございます。あの木の根だけは、もうどうにもならぬと諦めておりました」
「いえいえ、これで畑全部が使えますね。それじゃ、今度は土を耕しましょう」
「まだ何かされるのですか?」
「ええ。今度は別の道具を持ってきます」
そう言うと、長老はパワーショベルを見上げ、困ったような顔をした。
「これほどのものがあるのに、まだ別の道具が必要なのですか……」
俺は笑いながら頷いた。
「これは土を掘る道具なんです。畑を耕すには、もっと向いているものがあるんですよ」
俺はパワーショベルをブラックホールから現代の倉庫へ戻し、エンジンを止めた。
続いて大型トラクターに乗り換え、エンジンを始動させる。
再びブラックホールを通って村へ戻ると、村人たちがこちらを見ていた。
「おお、また違うものが出てきたぞ!」
「さっきの化け物より小さいな」
「いや、あれでも十分大きいぞ!」
村人たちは口々に話していたが、先ほどのパワーショベルほど驚いてはいなかった。
タルガニが近づいてきた。
「ユウマ、今度はさっきの村で使ったやつだな」
「そうそう。こっちは畑を耕す道具だよ」
「さっきの大きなやつでは耕せないのか?」
「耕せないこともないけど、こっちの方がずっと早いんだ」
俺はそう説明すると、村人たちに畑の外へ下がってもらった。
第三畑は百メートル四方の一ヘクタール。切り株があった場所を除けば、きれいに整地されている。
俺はトラクターを畑に乗り入れ、ロータリーを下ろした。
ゆっくりと前進すると、後ろの刃が勢いよく回転し、固まった土を次々と砕いていく。
「おおっ!」
「土が柔らかくなっていくぞ!」
村人たちから歓声が上がった。
最初の村と同じように、畑の端から順番に耕していく。百馬力のエンジンには十分な余裕があり、ロータリーも安定して回っていた。
一往復するだけでも、かなりの面積がきれいな土に変わっていく。
俺は運転席から後ろを振り返った。
先ほどまで固く締まっていた地面が、細かく砕かれている。これなら植え付け前にもう一度耕すだけで、十分使える畑になりそうだ。
途中、先ほど切り株を引き抜いた場所まで来た。
パワーショベルで埋め戻しておいたものの、周囲にはまだ小さな根が残っていたので、いったんトラクターを止めた。
村人たちに声をかけると、数人の男が駆け寄ってきた。
「この辺りに残っている根を拾ってもらえるかな。ロータリーに絡まると困るから」
男たちはすぐに作業を始め、土の中から出てきた根を次々と取り除いてくれた。
俺はその間に水を飲み、一服した。
タルガニとシンガもやって来た。
「ユウマ、あの大きな道具があれば、山の木だって全部抜けるんじゃないか?」
タルガニが真顔で聞いてきた。
「まあ、大抵の木なら何とかなると思うけど、何でも抜けるわけじゃないよ」
「それでもすごいな。俺たちが何日も苦労したのは何だったんだろうな」
「いや、みんなが周りの根を掘ってくれていたから、俺も早く抜けたんだよ」
そう答えると、タルガニは少し嬉しそうな顔をした。
根の除去が終わったので、俺は再びトラクターに乗り込んだ。
残りの畑を順番に耕し、最後に外周を整える。
作業を始めてから二時間弱で、一ヘクタールの畑をすべて耕し終えた。
エンジンを止めて降りると、長老をはじめ村人たちが集まってきた。
「ユウマ殿、見事な畑になりましたな」
長老は柔らかくなった土を手に取り、何度も頷いていた。
「今日は最初の荒起こしです。冬に作物を植える前に、もう一度耕しに来ます。それまでは雑草が生えても、無理に全部抜かなくて大丈夫ですよ。土が雨で流されないようにしておいてください」
「分かりました。そのようにいたします」
俺は畑を見渡した。
一つ目の村と同じく、こちらも第三畑の準備が整った。
「それじゃ、俺たちは次の村へ向かいます」
長老は深々と頭を下げた。
「今日は野菜までいただき、畑も耕していただいて、本当にありがとうございました」
「いえいえ。皆さんも畑の準備、ご苦労さまでした」
俺はトラクターをブラックホールから現代の倉庫へ戻し、再び村へ戻ってきた。
車のところでは、シンガとタルガニが待っていた。
「ユウマ、次の村でもあのでっかい道具を出すのか?」
タルガニが尋ねてきた。
「いや、次の村は根っこが全部取れていれば、トラクターだけで済むと思うよ」
「そうか。ちょっと残念だな」
「何が残念なんだよ」
「もう一回、あのでっかい腕が動くところを見たかったんだ」
シンガまで隣で頷いている。
俺は思わず笑ってしまった。
「お前たち、すっかり見物気分だな」
二人も笑いながら車に乗り込んだ。
荷台には、最後の村へ届けるゴーヤー五十キロとヘチマ五十キロが残っている。
俺はエンジンをかけ、三つ目の村へ向けて出発した。
三つ目の村に到着した頃には、昼を少し過ぎていた。
こちらでも村人たちが出迎えてくれた。残っていたゴーヤー五十キロとヘチマ五十キロを渡すと、長老は大変喜んでくれた。
第三畑の状況を尋ねると、木の根も石もすべて取り除いてあるとのことだった。
実際に畑を見に行くと、百メートル四方の土地はきれいに整地されていた。これなら問題なさそうだ。
俺はいつものようにブラックホールを出し、現代の倉庫から大型トラクターを持ってきた。
村人たちは初めて見る大きなトラクターに驚いていたが、俺は簡単に説明すると、すぐに作業を始めた。
途中で大きな石や根が出てくることもなく、一時間半ほどで一ヘクタールを耕し終えた。
長老には、冬の植え付け前にもう一度耕しに来ることと、それまでは雑草を無理に抜かなくてもいいことを伝えた。
これで三つの村、合計三ヘクタールの第三畑の荒起こしが終わった。
俺はトラクターを現代の倉庫へ戻し、長老たちに別れを告げると、シンガとタルガニを乗せて塩屋村への帰路についた。
帰りの車中、助手席のタルガニが口を開いた。
「なあ、ユウマ。今日はすごかったな。あんな大きな木の根まで抜いてしまうとは思わなかったぞ」
後部座席のシンガも頷いている。
「俺も驚いた。あれだけ大きな道具があれば、畑を作るのもずいぶん楽になるな」
「そうだな。これからはもっと広い畑も作れると思うよ」
俺はそう答えながら、ハンドルを握っていた。
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