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ブラックホールの向こうは400年前の沖縄でした〜現代の道具と知識で始める琉球王国改革〜  作者: gere


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第55話 1600年5月1日 その3

今回の長めです

ブックマークついたので頑張ってみました

俺は1600年に戻って来た。ブラックホールを抜けて塩屋村に戻ると、タルガニたちはポカーンとした顔でこちらを見ていた。


それも仕方ない。村人たちからすれば、俺がブラックホールに入ったと思ったら、すぐに出て来たのだから。だが、俺は2026年で3日間過ごしている。


その間に中古トラクターを購入し、隣村を支援するための物資を買い揃えて来た。村人たちには一瞬の出来事でも、俺にとっては結構忙しい3日間だった。


俺はハイラックスから降りると、準備していたチョコレートの袋を取り出した。「タルガニ、これをみんなに配ってくれ。1人1袋ずつな。余った分は俺に返してくれ」


そう言って、チョコレートの入った袋をタルガニに渡した。「ユウマ、これは何だ?」「チョコレートだ。甘くてうまいぞ。みんなで食べてくれ」


タルガニが袋を開けると、真っ先に反応したのは子供たちだった。「チョコだ!」「俺にも!」「こっちにもくれ!」子供たちが一斉にタルガニの周りへ集まって来た。


タルガニは子供たちに囲まれながら、1人ずつチョコレートを配っている。「待て待て! ちゃんと順番に並べ! 全員にあるから慌てるな!」


そう言っているタルガニ自身が、子供たちの勢いに押されて少々困っているようだった。袋を受け取った子供たちは、さっそく中身を取り出して口に運んでいる。


甘いものなど滅多に食べられない時代だ。ましてやチョコレートなんて、この子たちにとっては想像もできない食べ物だろう。あちこちから歓声が上がり、村の広場はちょっとしたお祭り騒ぎになっていた。


俺はその様子を横目に見ながら、出発の準備を始めた。まずは、おーはちーを2026年のガレージに戻しておくことにした。


俺はおーはちーに乗り込み、エンジンをかけた。軽快なエンジン音が響くと、近くにいた村人たちがこちらを振り向いた。


俺はそのままブラックホールへ向かい、おーはちーを2026年のガレージへ移動させた。ガレージには、今回購入した中古トラクターや倉庫用の木材、農業用品、炊事場の資材、米などが大量に置いてある。


俺はおーはちーを所定の場所に停めると、再びブラックホールを通って塩屋村へ戻った。さて、あとは細かな道具だな。


ノコギリ、金槌、水平器、釘、ビスなどの大工道具は、わざわざガレージに戻す方が面倒だ。これから隣村でも使うのだから、そのままハイラックスの荷台に積んでおけばいい。


それにブロックチェーンも忘れてはいけない。重い木材を動かしたり、建築作業を進めたりする時に役立つはずだ。俺は道具類を荷台に積み込み、走行中に動かないように固定した。


これで準備は整った。「よし! それじゃみんな、乗ってくれ!」俺が声をかけると、今日出発する10人がハイラックスの周りに集まって来た。


今回の参加者は俺を含めて11人。助手席にはカナさん。後部座席にはグシーと妻のマル、それに農業担当のシンガが乗る。


荷台には猟師のシルー、カナグシ、マチューの3人と、漁師のウミトゥ、サブロウ、タルーの3人だ。全員が車を間近で見るのは初めてではないが、実際に乗るとなると話は別らしい。


「ユウマ、本当にこれに乗って行くのか?」グシーが車内を覗き込みながら尋ねて来た。「そうだ。歩くよりずっと速いぞ」


「これが動くんだよな……」「さっき見ただろ」「いや、見たけどよ。自分が乗るとなると、ちょっとな……」


グシーがそう言うと、隣にいたマルも不安そうな顔をしている。カナさんも助手席の前で立ち止まり、どうやって乗ればいいのか分からない様子だった。


「カナさん、ここに足をかけて乗ればいいよ」俺が乗り方を教えると、カナさんは恐る恐る助手席に腰を下ろした。


「わあ……中はこんなふうになっているんですね」カナさんは座席を触ったり、窓の外を眺めたりしている。


後部座席では、グシーが先に乗り込み、マルの手を引いていた。シンガも続いて乗り込んだが、落ち着かない様子で車内を見回している。


一方、荷台の6人はというと、もっと大変だった。「おい、本当にここに乗るのか?」「走っている途中で落ちたりしないだろうな?」


「しっかりつかまっていれば大丈夫だろ」猟師と漁師たちが口々に話している。普段は山や海で危険な仕事をしている連中なのに、ハイラックスに乗るとなると随分慎重になるものだ。


俺は思わず笑ってしまった。「大丈夫だ。荷物につかまらず、決めた場所に座ってくれ。急に立ち上がったりするなよ」


6人は互いに顔を見合わせたあと、意を決したように荷台へ乗り込んだ。全員が乗ったことを確認し、俺は運転席に座った。


カナさんは隣で背筋を伸ばし、両手を膝の上に置いている。「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」俺が声をかけると、カナさんは少し照れたように笑った。


「だって、こんな乗り物に乗るのは初めてですから」「すぐ慣れるよ」俺はエンジンをかけた。


ブルルルッ。エンジンが始動すると、車内の4人が一斉に体を強張らせた。後ろの荷台からも何やら声が聞こえて来る。


「おおっ!」「動いたぞ!」「まだ動いてないだろ!」どうやらエンジンの振動だけで大騒ぎしているらしい。


俺は窓を開け、見送りに集まっていた村人たちに手を振った。タルガニも、ウシマルも、ナビーも、みんなこちらを見ている。


その中にマカトの姿を見つけた。「マカト! いい子にしてるんだぞ!」俺が大きな声で呼びかけると、マカトがこちらを向いた。


口いっぱいにチョコレートを頬張っている。「うん!」そう返事をすると、マカトは嬉しそうに手を振った。


口の周りにはチョコレートが少し付いていた。まったく、あいつらしいな。俺は笑いながら手を振り返した。


「それじゃ、出発!」俺はゆっくりとハイラックスを発進させた。


俺はマルの案内で山道を進み、30分ほどかけて目的の村に到着した。村は塩屋村から山側に約5km離れた場所にあった。


道は舗装されておらず、あちこちに石が転がり、雨で削られたような溝もあった。それでもハイラックスが通れないほどではなく、速度を落として走れば特に問題はなかった。


村の中に入ると、ちょっとした広場が見えてきた。俺はそこでハイラックスを停め、エンジンを切って運転席のドアを開けた。


すると、周囲にいた村人たちから一斉に驚きの声が上がった。大きな鉄の箱が音を立ててやって来たと思ったら、その中から人間が出て来たのだから無理もない。


「何だ、あれは!」「人が出て来たぞ!」「あんなもの、見たことがない!」村人たちは遠巻きにハイラックスを眺め、誰も近づこうとしなかった。


俺は後部座席から降りてきたマルを呼び、村人たちの前に出てもらった。「マル、みんなに大丈夫だって説明してくれ」


マルは大きな声で村人たちに呼びかけた。「みんな、私よ! マルよ! 怖がらなくても大丈夫だから! この人たちは塩屋村から来たの!」


村人たちはマルの姿を確認すると、ようやく少し落ち着きを取り戻した。それでも子供たちは興味津々で、ハイラックスを指さしながらワーワー騒いでいる。


「マル、長老を呼んでもらえるかな。村のみんなにも集まってほしいんだ」俺がそう頼むと、マルは村人たちに向かって長老を呼んでほしいと伝えた。


しばらくすると、人垣の向こうから長老が姿を現した。俺を見るなり、驚いたように目を見開いた。


「おや、ユウマ殿ではありませんか。こんなにたくさんの人を連れて、いったいどうなされたのですか?」


俺と長老は、以前の孤児の件で顔見知りだった。少なくとも、いきなり現れた怪しい男として扱われる心配はなさそうだ。


「長老、実は今日は、この村を支援しに来たんです」俺がそう答えると、長老は不思議そうな顔をした。


すると横からマルが口を開いた。「長老、このユウマさんは神様の使いなんです。島の村々を助けるために来てくださったんです!」


その言葉を聞いた途端、長老の表情が変わった。「な、何と! 神様でいらっしゃいましたか!」そう言うなり、その場にひれ伏してしまった。


「えっ、ちょっと、長老!」俺が慌てて声をかける間もなく、周囲の村人たちまで長老にならって次々と地面にひれ伏し始めた。


おいおい、そういうことじゃないんだけどな。俺は慌てて長老の前にしゃがみ込み、顔を上げてもらうように頼んだ。


「長老、違います! 俺は神様じゃありません。普通の人間です。たまたま神様が俺を選んで、島を豊かにするようにと言われただけなんです」


長老はゆっくりと顔を上げた。「では、神様から遣わされたお方ということでございますか?」


「まあ、そういうことです。それより長老、塩屋村が以前より豊かになっているのはご存じですよね?」


長老は何度も頷いた。「もちろん存じております。塩屋村は随分と変わりました。以前とは比べものにならないほどです」


そう言うと長老は立ち上がり、集まっている村人たちに向かって話し始めた。


「皆の者、塩屋村の話は聞いておろう。あの村では塩がたくさん作られるようになり、我々も分けてもらったことがある。それだけではない。今では毎日の食事にも困らなくなっておるそうじゃ」


村人たちの間から、ざわざわと話し声が上がった。塩屋村が豊かになっているという噂は、この村にも伝わっていたようだ。


俺は長老の話が終わるのを待ってから、村人たちに向かって口を開いた。


「どうでしょうか? 俺たち塩屋村から来た人間が手伝いますので、みんなでこの村を塩屋村のように豊かにしませんか?」


長老は村人たちを見渡した。「皆の者、どうじゃ。ユウマ殿たちに任せてみようではないか」


「本当に食べ物が増えるのか?」「毎日腹いっぱい食べられるようになるなら、俺は手伝うぞ!」「私たちにもできることがあるなら、何でもします!」


あちこちから声が上がり、村人たちの表情が少しずつ明るくなっていった。俺は頷いてから、もう一度長老に向き直った。


「ありがとうございます。ただし、条件が1つあります。これから皆さんが見る道具は、すべて神様から預かっているものです。ですから、他の村や役人には内緒にしてください」


長老は真剣な表情で俺の話を聞いていた。周囲の村人たちも静かになり、こちらに耳を傾けている。


「もし役人から、どうしてこの村が豊かになったのかと聞かれたら、塩屋村に手伝ってもらったとだけ答えてください。道具のことは絶対に話さないでほしいんです」


「承知いたしました。皆にも固く言い聞かせます」長老が答えると、周囲の村人たちも頷いた。


「それから、もう1つ。これから作る畑は村人全員で管理してください。収穫した作物も、誰かが独り占めするのではなく、みんなで平等に分けるんです」


俺は一度言葉を切り、村人たちを見渡した。「俺たちは対価をもらうつもりはありません。みんなで腹いっぱい食べられる村を作りましょう」


長老は深々と頭を下げた。「ユウマ殿、ありがとうございます。村の者一同、力を合わせて働きます」


これで話はまとまった。あとは実際に動き始めるだけだ。


俺はシンガを呼び、塩屋村から持ってきた残りのチョコレートを渡した。「シンガ、これを村のみんなに分けてくれ。数に限りがあるから、少しずつな」


「分かりました」シンガは袋を受け取ると、近くにいた村人たちに配り始めた。


「とりあえず今から朝食を作ります。それまで、これを食べて待っていてください」俺がそう伝えると、村人たちは不思議そうにチョコレートを眺めていた。


だが、誰かが一口食べた途端、周囲から驚きの声が上がった。「甘い!」「何だ、これは!」「こんなに甘いものがあるのか!」


特に子供たちの喜びようは凄かった。小さなかけらを口に入れては、嬉しそうに飛び跳ねている。


塩屋村でもそうだったが、子供たちの反応はどこも一緒だな。俺はその様子を見ながら、カナさんとマルに声をかけた。


「カナさん、マル、朝食の雑炊をお願いできるかな。具をたっぷり入れて、村のみんなに食べてもらおう」


「分かりました。マルさん、一緒に準備しましょう」カナさんがそう言うと、マルも笑顔で頷いた。


俺は続いて猟師と漁師たちを集めた。「まずはロケットストーブを作ってくれ。レンガは今から持ってくるから、準備しておいてくれ」


それから俺は、村の広場から少し離れた茂みへ向かった。人目につかない場所でブラックホールを出し、ハイラックスに乗って2026年のガレージへ戻った。


ガレージには今回購入した物資が積み上がっている。俺はその中から、とりあえず必要なものを選んで荷台に積み込んだ。


米30kg、鶏肉、ロケットストーブ用の耐火レンガ、4人用テント3張り。それに俺が普段使っているキャンプ用具一式と、自分用のテントも積んだ。


まだまだ運ぶものは山ほどあるが、まずはこれだけで十分だろう。俺はハイラックスに乗り込み、再び1600年の村へ戻った。


広場にハイラックスを乗り付けると、村人たちがまた驚いた顔でこちらを見ていた。さっきまでいなかった鉄の箱が、突然戻って来たのだから当然か。


「みんな、ちょっと手伝ってくれ! 荷台の荷物を下ろすぞ!」俺が声をかけると、猟師と漁師たちがすぐに集まって来た。


米袋やレンガ、テントなどが次々と荷台から下ろされていく。塩屋村で作業に慣れているだけあって、みんな手際がいい。


「シルー、ロケットストーブは頼んだぞ。カナさんたちがすぐに使えるようにしてくれ」「分かった。任せておけ!」


シルーは数人を連れて耐火レンガを運び始めた。塩屋村でも何度も作っているので、もう説明する必要はない。


残りの者にはテントの設営を頼んだ。4人用テント3張りと俺のテントを、広場の端に並べて張っていく。


村人たちは布でできた家が次々と立ち上がるのを、不思議そうに眺めていた。何人かの子供は、テントの周りをぐるぐる回っている。


ほどなくして4張りのテントが横一列に並んだ。これで今夜からの寝床は確保できたな。


俺は広場とは反対側の、テントの裏手へ回った。ここなら村人たちからも見えにくい。


そこでブラックホールを出し、再び2026年のガレージへ戻った。今度は倉庫建築用の木材や農具、肥料などを運ぶ番だ。


ハイラックスの荷台に資材を積み込み、村へ戻ってみんなで下ろす。またガレージへ戻って積み込み、村へ運ぶ。その作業を繰り返した。


木材、合板、屋根材、農具、肥料、鳥よけネット、トイレ用の資材。運んでも運んでも、まだガレージには荷物が残っている。


とりあえず5往復したところで、いったん運搬を終えることにした。広場の端には資材が山のように積み上がっていた。


村人たちは目を丸くして、その山を眺めている。ついさっきまで何もなかった広場に、見たこともない道具や材料が次々と現れたのだから無理もない。


そうこうしているうちに、カナさんとマルが朝食を作り終えた。ロケットストーブの上では大きな鍋が湯気を立て、具沢山の雑炊がいい匂いを漂わせている。


「ユウマさん、できましたよ!」カナさんの声に振り向くと、村人たちも次々と鍋の周りに集まって来た。


俺は持ってきた椀とスプーンを取り出し、村人たちに配り始めた。みんな不思議そうに椀を触ったり、スプーンを裏返したりしている。


まったく、どこの村も一緒だな。塩屋村でも最初は同じ反応だった。


「これは食べ物を入れる椀です。こっちのスプーンで食べてください。こうやって使うんです」俺が使い方を見せると、村人たちは真似をし始めた。


カナさんとマルが順番に雑炊をよそっていく。鶏肉や野菜がたっぷり入った雑炊を見て、村人たちから驚きの声が上がった。


「こんなに具が入っているのか!」「肉まで入っているぞ!」「これを本当に食べていいのか?」


「もちろんです。遠慮しないで食べてください」俺がそう言うと、村人たちは恐る恐るスプーンを口に運んだ。


次の瞬間、あちこちから歓声が上がった。「うまい!」「何だ、この味は!」「こんなうまいもの、初めて食べた!」


子供たちは夢中になって雑炊を口に運んでいる。大人たちも最初の遠慮が嘘のように、次々と椀を空にしていった。


少し遅い朝食になったが、みんな満足そうだ。腹が減ったままでは仕事にならないからな。


食事が終わると、俺は塩屋村から来た男たちを集めて作業の段取りを決めることにした。これから本格的に村の開拓を始める。


「よし、みんな集まってくれ。これからの仕事を分担するぞ」俺は広場に積み上げた資材を指さしながら話し始めた。


「まずシンガ。村の男たちに斧とナタを配って、畑にする場所の雑草や木を切ってくれ。畑は安納芋と粟で、それぞれ1ヘクタールずつ作る予定だ」


シンガは頷いた。「分かりました。まずは畑にする場所を決めて、木を切っていきます」


「切った木は邪魔にならない場所にまとめておいてくれ。根っこは前に塩屋村でやったように、ブロックチェーンで持ち上げて根を切ればいい」


「はい。村の人たちにもやり方を教えながら進めます」シンガは早速、斧とナタを持って村人たちのところへ向かった。


俺は続いてカナグシとタルーを呼んだ。「2人には共同トイレを作ってもらいたい。男用2つ、女用2つの合計4つだ」


「トイレか。塩屋村と同じように作ればいいんだな?」カナグシが尋ねて来た。


「そうだ。使ったものを集められるようにしてくれ。板や柱は運んであるから、それを使ってくれればいい」


「分かった。タルー、行くぞ」「おう!」2人はトイレ用の資材を確認し始めた。


俺はもう一度シンガを呼び止めた。「シンガ、共同トイレが完成したら、村の人たちに使い方を教えてくれ。それと、集めた糞尿を堆肥にする方法も説明してほしい」


「分かりました。塩屋村でやっているのと同じですね」


「そうだ。これが今後の農業で大事なところだからな。堆肥の作り方や扱い方をしっかり教えてくれ。畑に肥料がなければ、作物も十分には育たないからな」


もちろん、生の糞尿をそのまま畑に撒くわけではない。衛生面にも気をつけながら、きちんと処理して使う必要がある。


「残りの者は倉庫を頼む。6メートル×6メートルの倉庫を、できるだけ早く完成させてくれ。材料は全部ここにある」


シルーたちは積み上げられた木材を見ながら頷いた。「分かった。塩屋村で建てた時と同じように進めればいいんだな」


「ああ。村の人たちにも手伝ってもらってくれ。建て方を覚えてもらえば、これから自分たちで家を作る時にも役立つはずだ」


これで作業の分担は決まった。


「俺は畑を作る。どうしても抜くのが難しい根っこがあったら、すぐに呼んでくれ。おーはちーを使うから!」


俺がそう言うと、男たちはそれぞれの持ち場へ散っていった。


いよいよ、この村の開拓が始まる。


まず俺は長老のところへ向かい、畑に使ってもいい土地を尋ねた。「長老、この村で畑にしてもいい場所はありますか? できれば広くて、あまり傾斜のない土地がいいんですが」


長老は少し考えてから、村の奥にある山裾を指さした。「あちらに広い土地があります。今は草木が生い茂っておりますが、昔は一部を畑に使っていたこともあります」


俺は長老とシンガ、それに村の男たち数人を連れて見に行くことにした。村から少し歩くと、山の斜面が緩やかになった場所に出た。


確かに広さはありそうだ。雑草や低い木が生い茂っているが、開拓すれば十分に畑として使えるだろう。ただ、あちこちに木の根が張っているので、それなりに手間はかかりそうだった。


俺たちは周囲を歩きながら、土地の広さや傾斜を確認していった。安納芋と粟をそれぞれ1ヘクタールずつ植える予定だから、合わせて2ヘクタールの土地が必要になる。


その途中で、ひときわ大きな木が目に入った。周囲の木より明らかに太く、枝も大きく広がっている。幹を見上げながら、俺は思わずため息をついた。


「うわ、これは厄介そうだな」ほかの木は斧で倒して根を抜けば何とかなりそうだが、この大木だけは簡単にはいきそうにない。


とりあえず畑にする場所の見当はついた。俺は長老に、この辺りを開拓しても構わないか確認した。


「ここを畑にしたいんですが、よろしいですか?」「もちろんです。村のために使っていただけるのであれば、何も問題ありません」


土地の話がまとまったところで、俺は村の人数についても詳しく聞いてみた。「そういえば長老、この村には何世帯あるんですか? 子供は何人くらいいるんでしょう?」


「この村は23世帯でございます。子供は25人おります」長老はそう答えた。


23世帯で子供が25人か。人口はおよそ80人と聞いていたから、大人が55人前後ということになる。塩屋村よりもずっと大きな村だ。


これだけの人数がいれば、畑の開拓も倉庫の建築も人手には困らなさそうだ。ただし、全員が働けるわけではない。老人や小さな子供もいるだろうし、普段の生活に必要な仕事もある。


俺は長老に、働ける人たちを集めてもらうよう頼んだ。「まずはこの土地を開拓します。村のみんなにも手伝ってもらいたいんですが、よろしいですか?」


「もちろんです。皆にも声をかけましょう」長老がそう言うと、一緒に来ていた男たちが村へ戻り、作業に参加できる人を呼びに行った。


俺はシンガと相談し、最初にあの大木を倒すことにした。畑の真ん中に残しておくわけにもいかないし、周囲の木を片付ける前に手をつけておいた方がいいだろう。


「シンガ、まずはあの大きな木から片付けよう。斧を持った男たちに交代で切ってもらってくれ。倒す方向だけは十分に気をつけてな」


「分かりました。周りに人が近づかないようにします」シンガは頷くと、村の男たちに作業の説明を始めた。


男たちは斧を手にすると、大木の周囲を確認し、倒す方向を決めてから作業を始めた。カーン、カーンと乾いた音が山裾に響き渡る。


何人かが交代で斧を振るい、少しずつ幹に切り込みを入れていく。さすがに大きな木だけあって、そう簡単には倒れそうにない。


俺はその様子を確認してから、ほかの村人たちにも道具を配ることにした。斧やナタ、スコップなどを渡し、作業する場所を分けていく。


「こっちの人たちは草を刈ってください。低い木は切って、枝と幹を分けて積んでおいてください。切った木は後で薪にも使えますから、捨てないでくださいね」


村の男たちは慣れない道具を手に取りながらも、すぐに作業を始めた。ナタで草を払い、斧で木を切り、切り倒した枝を運んでいく。


最初は道具の使い方が分からず戸惑っていた者もいたが、塩屋村から来た連中が手本を見せると、少しずつ動きが良くなっていった。


シンガは早速、ブロックチェーンの使い方を教えていた。丈夫な木を支点にしてチェーンを掛け、切り株を引き上げる仕組みを説明している。


「いいか、ここをこうやって動かすんだ。少しずつ引っ張れば、大きな力をかけられる。無理に引っ張らず、根が浮いてきたら周りを切っていくんだぞ」


村人たちは不思議そうにブロックチェーンを眺めていたが、実際に切り株が持ち上がり始めると、驚きの声を上げた。


「おおっ! 動いたぞ!」「こんな小さな道具で木の根が持ち上がるのか!」「これは凄いな!」


シンガは得意そうに笑いながら、次の切り株でも同じ作業を見せていた。塩屋村では教わる側だったシンガが、今ではすっかり教える側になっている。


俺は少し離れた場所からその様子を眺めた。村人たちが次々と道具の使い方を覚え、あちこちで草を刈る音や木を切る音が響いている。


さっきまで草木に覆われていた土地が、少しずつ開け始めていた。まだまだ先は長いが、これだけの人数がいれば思ったより早く進むかもしれない。


俺は再び、大木の方へ目を向けた。男たちが交代で斧を振るい、太い幹に少しずつ切り込みを入れている。


さて、あの大木が一番の難関だな。


俺は畑の開拓が順調に進んでいるのを確認すると、一度広場へ戻り、カナさんとマルを呼んだ。太陽もだいぶ傾いてきたし、そろそろ夕飯の準備を始めてもらった方がいいだろう。


「カナさん、マル、そろそろ夕飯の支度をお願いできるかな。それと、この村の女の人たちにも料理の仕方を教えてあげてほしいんだ」


「料理の仕方ですか?」カナさんが尋ねたので、俺は広場に設置したロケットストーブを指さした。「そう。まずはロケットストーブの使い方からだね」


「火のつけ方や薪の入れ方、それに鍋の扱い方も教えてあげて。使い終わった後の片付けや、道具の管理の仕方も頼むよ」


カナさんは頷いた。「分かりました。塩屋村でやっていることを、そのまま教えればいいんですね」


「そうそう。それから、この村は80人くらいいるから、どれくらいの米や野菜を使えば全員分の食事が作れるのか、その辺りも教えてあげてほしい。毎回俺たちが作りに来るわけにはいかないからね」


「それなら、村の女の人たちに実際に手伝ってもらいながら教えますね」マルも隣で頷いている。もともとこの村の出身だから、女たちに声をかけるのもマルに任せた方が早いだろう。


「今夜も具沢山の雑炊でお願いね。野菜に鶏肉、卵、大根、それからフーチバーもたっぷり入れてくれ。みんなに腹いっぱい食べてもらおう」


「はい。お昼と同じくらいたくさん作ればいいですね」カナさんはそう答えると、マルと一緒に村の女たちを集め始めた。


俺は2人が準備を始めるのを見届けてから、マルにもう1つ頼み事をした。「そうだ、マル。この村に猟師がいるなら、何人か呼んできてもらえるかな」


「猟師ならいますよ。すぐに声をかけてきます」マルはそう言うと、近くにいた村人に声をかけ、猟師たちを呼んでもらった。


ほどなくして、3人の男が俺のところへやって来た。いずれも日に焼けた顔をしており、山仕事に慣れていそうな体つきをしている。


「ユウマ殿、猟師を呼んでいると聞きましたが、何か御用でしょうか?」3人のうちの1人が尋ねてきた。


「ああ、来てくれてありがとう。実は、これからこの村の食事を支援することになったんだ。米や野菜は俺が用意するから、みんなには山で獲物を捕ってきてもらいたい」


3人は顔を見合わせた。「獲物ですか? それなら、いつもやっている仕事ですが……」


「そう。今までどおり山で狩りをしてくれればいい。その代わり、畑の開拓や農作業には参加しなくていいよ。獲ってきた肉を村のみんなで分けられるようにしてほしいんだ」


俺は塩屋村でも同じように、猟師と漁師に食料の確保を任せていた。全員が畑仕事をするより、それぞれ得意な仕事を分担した方が効率がいい。


この村は山側にあるため、漁師はいなかった。海まではそれなりに距離があるし、普段から魚を手に入れる機会も少ないのだろう。


その分、山で捕れる獲物は貴重な食料になる。米や野菜だけではなく、肉も食べられるようになれば、村人たちの食生活は随分変わるはずだ。


「捕れた獲物は、まず村のみんなの食事に使ってほしい。たくさん捕れた時は保存する方法も考えよう。無理に毎日捕ってこなくてもいいから、安全第一で頼むよ」


「分かりました。それなら我々に任せてください」3人は嬉しそうに頷いた。畑仕事をしなくていいと聞いて、少し安心したようにも見えた。


「これからこの村も忙しくなるけど、みんなで仕事を分担すれば何とかなるさ。よろしく頼むよ」


3人は頭を下げると、さっそく狩りの相談を始めた。これで、この村でも塩屋村と同じような役割分担ができそうだ。


俺が畑へ戻ろうとしたところで、村の男が1人、息を切らしながら走って来た。「ユウマ殿! あの大きな木が倒れました!」


「おっ、倒れたか! 思ったより早かったな」俺は男の報告を聞き、すぐに畑へ向かうことにした。


例の大木は、男たちが交代で斧を振るっていた木だ。幹が太かったから時間がかかると思っていたが、人数をかけたのが良かったらしい。


ただ、木を倒しただけでは畑にはならない。問題は地面に残った大きな切り株と、その下に広がる根っこだ。


俺は広場の裏手に回り、ブラックホールを開いて2026年のガレージへ戻った。そこに置いてあるおーはちーに乗り込み、再び1600年へ戻って来た。


エンジンをかけて畑へ向かうと、村人たちが作業の手を止めてこちらを見ていた。ハイラックスに続いて、今度は小さな鉄の機械が現れたのだから驚くのも無理はない。


「みんな、ちょっと離れてくれ! これからあの切り株を掘り起こすから!」俺は大きな声で呼びかけ、作業していた男たちを安全な場所まで下がらせた。


畑の真ん中には、さっきまで立っていた大木が横たわっていた。太い幹から枝が四方に伸び、周囲の草木を押しつぶしている。


その横には、地面から突き出した大きな切り株が残っていた。近づいて見ると、幹の太さは相当なものだ。根もかなり深く張っていそうだった。


「こりゃ、斧とブロックチェーンだけじゃ大変だったろうな」俺はそう呟きながら、おーはちーを切り株の横につけた。


まずは周囲の土を掘り、根がどの方向へ伸びているのか確認することにした。俺は操作レバーを動かし、バケットをゆっくりと地面に下ろした。


ガリガリッと土を削る音が響き、バケットいっぱいの土が持ち上がった。周囲で見ていた村人たちから、一斉に驚きの声が上がった。


「おおっ!」「土が持ち上がったぞ!」「何だ、あの鉄の腕は!」


俺は構わず作業を続けた。切り株の周囲を少しずつ掘り下げていくと、太い根が何本も姿を現した。


さすがに大木だけあって、根の張り方も凄い。これを人力で掘り起こそうとしたら、何日かかるか分からないな。


俺は露出した根の周囲の土をさらに取り除いた。太い根は無理にバケットで引きちぎらず、土を落として切れる状態にしていく。


「シンガ! 根が見えてきたから、切れるところから切ってくれ。ただし、俺が機械を止めて合図してからな!」


「分かりました!」シンガは村の男たちを連れて、少し離れた場所で待機した。


俺はエンジンを止め、作業する場所を確認してから男たちに声をかけた。斧を持った男たちが露出した根を切り始める。


太い根を何本か切り終えたところで、再び全員を下がらせた。俺はおーはちーに乗り込み、今度は反対側から土を掘り始めた。


バケットで周囲の土を落とし、根の下まで少しずつ掘り進める。切り株の周りには、いつの間にか大きな穴ができていた。


「よし、もう少しかな」俺はバケットを切り株の下へ差し込み、ゆっくりと力をかけてみた。


しかし、切り株はびくともしなかった。どうやら、まだ地中に太い根が残っているらしい。


俺は無理に持ち上げるのをやめ、もう一度周囲を掘り直した。おーはちーは便利だが、相手が大きすぎれば何でも簡単に持ち上げられるわけではない。


根の位置を確認しては土を掘り、機械を止めて男たちに根を切ってもらう。その作業を何度か繰り返した。


やがて、切り株の片側がわずかに浮き上がった。「おっ、動いたぞ!」俺は慎重にバケットの角度を変え、もう一度ゆっくりと力をかけた。


ミシミシッという音とともに、切り株が少しずつ傾き始めた。地中に残っていた細い根が切れ、土が崩れ落ちていく。


「おおおっ!」周囲から歓声が上がった。俺は機械に無理な力がかからないよう、少しずつ位置を変えながら切り株を起こしていった。


最後に残っていた根が外れると、巨大な切り株が地面からごろりと転がった。根には大量の土が絡みつき、まるで大きな岩のようだった。


「よし、抜けた!」俺は思わず声を上げた。


村人たちも一斉に歓声を上げた。さっきまで地面にしっかり根を張っていた大木が、今では幹も切り株も地面に横たわっている。


俺はおーはちーを少し後退させ、エンジンを止めた。周囲の男たちは恐る恐る切り株に近づき、むき出しになった根を眺めている。


「こんな大きな根まで抜けるのか……」「人間が何十人集まっても無理だっただろうな」


俺は運転席から降り、切り株を見ながら頷いた。これで一番厄介だった大木は片付いた。


あとは残りの木と雑草を取り除き、畑にする土地を整えていけばいい。


さすがにこれだけの人数がいると作業が早い。広い土地を覆っていた雑草も、夕方にはほとんど刈り終わろうとしていた。


俺は再びおーはちーに乗り込み、今日切り倒した木や掘り起こした根っこを集めて回ることにした。畑のあちこちには、伐採した幹や枝、土の付いた切り株が散らばっている。


まずは近くに積まれていた木をバケットで寄せ、運びやすいようにまとめた。太い幹は一度に運べないので、男たちにも手伝ってもらいながら少しずつ片付けていく。


集めた木や根っこは村の広場の端まで運び、邪魔にならない場所に下ろした。それからまた畑へ戻り、次の木を集めて広場へ運ぶ。


何度も往復しているうちに、広場の端には木材と切り株の山ができていた。枝や細い木は乾燥させれば薪になるし、太い幹も何かに使えるだろう。


村人たちも俺の作業を見ながら、運べるものは自分たちで運んでくれている。おかげで畑の中は随分すっきりしてきた。


そうこうしているうちに、太陽が山の向こうへ傾き始めた。そろそろ夕方だし、今日の作業はこの辺りで終わりにした方がよさそうだ。


「みんな、今日はそろそろ終わりにしよう! 明日は残った木の根っこを全部片付けるぞ!」俺が声をかけると、男たちから元気な返事が返って来た。


俺はおーはちーを広場の端に停めると、ブラックホールを通って2026年のガレージへ戻った。今度はLEDランプを持って来るためだ。


ガレージを探すと、予備のLEDランプが6台残っていた。そういえば1台は陳さんに売ってしまったんだったな。手元に残っている予備はこれで全部だ。


俺は6台のLEDランプを抱え、再び1600年へ戻った。広場では、作業を終えた村人たちが少しずつ集まり始めている。


ランプは広場のあちこちに分けて置くことにした。炊事場の近く、テントの前、村人たちが食事をする場所など、なるべく広い範囲を照らせるように配置していく。


全部のスイッチを入れると、白い光が広場に広がった。まだ少し日が残っているのでそれほど目立たないが、完全に暗くなれば随分明るくなるはずだ。


村の子供たちは早速ランプの周りに集まって来た。「これ、何?」「火がないのに光ってる!」「触っても熱くないぞ!」


俺は笑いながら、子供たちに勝手に持ち運ばないように言っておいた。珍しいものを見ると、どうしても触りたくなるんだろうな。


やがて畑で作業していた男たちも全員戻って来た。顔も腕も土だらけで、みんな随分疲れているようだったが、その表情は明るかった。


広場では、カナさんとマル、それに村の女たちが夕飯の準備を終えていた。大きな鍋からは湯気が立ち上り、野菜や鶏肉のいい匂いが漂っている。


今夜の雑炊は、昼よりもさらに具沢山だった。鶏肉に卵、大根、野菜、それにフーチバーもたっぷり入っている。


村人たちは鍋の中を覗き込むと、驚いたように声を上げた。「昼にもあんなに食べさせてもらったのに、夜もこんなにあるのか!」


「肉も卵も入っているぞ!」「本当に全部食べていいんですか?」あちこちから声が上がり、子供たちは待ちきれない様子で鍋を見つめていた。


一方、塩屋村から来た連中はというと、さも当たり前のことだと言わんばかりの顔をしている。村人たちに椀の持ち方やスプーンの使い方まで教えていた。


おいおい、お前たちだってほんの半年前までは同じ境遇だっただろう。俺はその様子を見ながら、思わず笑ってしまった。


それでも、塩屋村の連中がどこか誇らしげにしているのは悪い気がしなかった。自分たちが教わったことを、今度は別の村の人たちに教えているのだから。


カナさんとマルが大きな鍋から雑炊をよそい始めた。村の女たちも手伝い、次々と椀いっぱいの雑炊が配られていく。


「おかわりもあるから、慌てずにゆっくり食べてくださいね!」俺が声をかけると、村人たちから歓声が上がった。


「おかわりまであるのか!」「今日は何という日だ!」「こんなに食べたら、明日も力いっぱい働けるぞ!」


俺は笑いながら頷いた。「うまくいけば、これから毎日お腹いっぱい食べられるようになるよ。畑ができて作物が育てば、今度は自分たちで食べ物を作れるようになるんだから」


その言葉を聞いて、村人たちの表情がさらに明るくなった。今までは明日の食事がどうなるか分からない日もあっただろう。


だが、今日は違う。目の前には温かい雑炊があり、明日からは自分たちの畑を作る仕事が待っている。


村人たちは椀を手に、あちこちで楽しそうに話し始めた。「明日はあっちの根っこを抜こう」「あの道具があれば早いぞ」「畑ができたら、どれくらい芋が採れるんだろうな」


子供たちも大人たちに混じって、今日見たハイラックスやおーはちーの話をしている。どうやら鉄の機械が土を掘る姿が、よほど印象に残ったらしい。


俺も椀を受け取り、カナさんによそってもらった雑炊を口に運んだ。鶏肉の旨味がしっかり出ていて、フーチバーの香りもいい。


「カナさん、うまいよ。今日もありがとう」「ふふ、村の女の人たちも一生懸命手伝ってくれたんですよ」


カナさんはそう言って、隣にいたマルと顔を見合わせて笑った。女たちも自分たちが作った料理を村人が喜んで食べているのを見て、嬉しそうにしている。


やがて太陽が完全に山の向こうへ沈んだ。辺りが暗くなるにつれて、広場に置いた6台のLEDランプの明かりがはっきりと浮かび上がってきた。


「おおっ、明るい!」「夜なのに昼みたいだ!」村人たちが驚きの声を上げる中、広場ではまだ賑やかな食事が続いていた。


白い光に照らされた広場で、子供たちが笑い、大人たちが明日の仕事について話している。朝、この村に来た時とは随分雰囲気が変わったものだ。


俺は雑炊を食べながら、その光景を眺めていた。まだ畑もできていないし、倉庫も建築途中だ。やることは山ほど残っている。


それでも、村人たちの顔には確かに明日への希望が見えていた。


まずは腹いっぱい食べられること。それだけでも、人はこんなに明るくなれるんだな。


明日は残った木の根を片付ける。全部取り除けたら、いよいよトラクターで畑を耕せる。


俺は賑やかな広場を見渡しながら、もう一口、温かい雑炊を口に運んだ。


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