第54話 2026年6月3日
ブックマークしてくれた人ありがとうございます
結局、買い出しは一日では終わらなかった。
6月1日に中古トラクターを契約してから、ホームセンター、農協、米屋と回ったものの、必要な物の量が多すぎた。特に倉庫用の木材と防鳥ネットは、その場で全部持ち帰れるような量ではなかった。
翌日の6月2日には、予定どおり午前中にトラクターが自宅へ届いた。操作方法を教わり、ガレージに収めたあと、再び買い出しに出かけた。結局、すべての品物が揃ったのは今日、6月3日になってからだった。
俺は机の上にレシートと納品書を並べた。ホームセンターのレシートだけでも相当な枚数がある。さて、いったいいくら使ったんだろうな。
今回は80人ほどの村を支援するための買い物だ。塩屋村で使った道具を流用するわけにもいかないし、倉庫から炊事場、農具、トイレまで、ほとんど一から揃えている。
俺は電卓を取り出し、品物を一つずつ確認し始めた。
まずは倉庫用の資材からだ。6メートル×6メートルの倉庫を建てるために、杉角材90×90×4,000mmを24本、1本3,980円で95,520円。杉角材45×90×4,000mmを30本、1本1,880円で56,400円。構造用合板12mmを42枚、1枚2,480円で104,160円。野地板20束が39,600円。大型ブルーシート10×10mを2枚で15,960円。コンクリート束石16個が20,480円。
それに補強金具48個で11,424円、コーススレッド8箱で11,840円、釘4箱で3,920円、蝶番4個で2,392円、掛金2個で1,596円、木材保護塗料4缶で15,920円。倉庫用資材の合計は379,212円だった。
次は炊事場だ。ロケットストーブを作るための耐火レンガ100個が34,800円、耐熱モルタル4袋が11,920円。100リットルのステンレス大鍋が39,800円。80人分のお椀が15,840円、スプーン80本が10,240円。炊事場と食器の合計は112,600円。
それから宿泊用の四人用テントを3張り、1張り12,980円で38,940円。今回は俺を含めて11人だから、これで全員が寝られる計算だ。
農業用品も結構な金額になった。化成肥料20キロ入りを25袋、合計500キロで74,500円。20リットルのバケツ14個が11,172円。角スコップ20本が39,600円。斧10本が49,800円、ナタ10本が39,800円、一輪車3台が29,940円。農業用品の合計は244,812円だった。
バケツ14個のうち10個は農作業用で、残り4個は共同トイレに使う予定だ。塩屋村と同じように、排泄物をバケツで受けて回収し、堆肥作りに利用する。地面に穴を掘って終わりというわけではない。隣村の人たちには、シンガから堆肥の作り方も含めて説明してもらおう。
共同トイレ4か所分の資材は、合板12枚が23,760円、垂木20本が15,960円、蝶番8個が3,184円、ラッチ4個が1,992円、目隠しシート4枚が5,120円。合計50,016円。バケツは先ほどの農業用品に含まれているので、ここでは二重に計算しない。
さて、問題の防鳥ネットだ。100メートル四方の畑を2か所作るため、塩屋村で使ったものと同じ9m×18mの防鳥ネットを144枚購入した。1枚1,078円だから155,232円。園芸支柱2.1mを144本で42,912円、ロープ100m巻を24巻で23,520円、結束バンド16袋で7,968円。防鳥対策の合計は229,632円だった。
塩屋村で買った時と同じネットだから、思ったほど高くならずに済んだ。それでも畑が2ヘクタールもあると、ネットだけで相当な量になるな。
最後はチョコレートだ。個包装のチョコレートを50袋、1袋498円で24,900円。これはマカトとの約束だから忘れるわけにはいかない。あいつの喜ぶ顔が目に浮かぶな。
ここまでのホームセンターでの買い物は、全部合わせて1,080,112円だった。
続いて米屋の納品書を確認する。業務用米30キロ入りを6袋、合計180キロで60,000円。隣村の80人に朝と夕方の雑炊を作り、とりあえず1か月分の米を支援するためのものだ。
農協では安納芋の種芋200キロを1キロ680円で136,000円。粟の種8キロを1キロ2,200円で17,600円。農協での購入金額は153,600円だった。米屋と農協を合わせると213,600円になる。
そして最後が、一番高かったトラクターだ。クボタの中古25馬力ディーゼルトラクターはロータリー付きで1,375,000円。安納芋用の畝立て作業機が198,000円。納車前の最終点検とオイル交換が33,000円。軽油対応の20リットル携行缶2個が13,200円。自宅までの配送料が16,500円。トラクター関連の合計は1,635,700円だった。
俺は電卓を叩き、最後にすべての金額を足し合わせた。
ホームセンターが1,080,112円。米屋と農協が213,600円。トラクター関連が1,635,700円。
合計2,929,412円。
「約293万円か。まあ、80人の村を立て直すための初期投資と考えれば、こんなものかな」
そういえば、今回の買い物で銀行口座の残金がいくらになったのか、まだ確認していなかった。
俺は銀行の残高を確認し、今回使った2,929,412円を差し引いた。
残金は18,432,936円。
「まだ1,800万円以上あるのか。とはいえ、これから3つの村を支援するとなれば、出費も増えるだろうな」
俺は残高を確認して、パソコンを閉じた。
机の上に広げていたレシートをまとめる。倉庫も建てられる。炊事場も作れる。農具も揃ったし、種芋と粟の種もある。トラクターも昨日届いた。
これだけの物資があれば、隣村の暮らしを大きく変えられるはずだ。
あとは1600年へ運び込むだけだな。
俺はガレージに積み上げられた大量の荷物を思い浮かべた。これだけの買い物をしても、ブラックホールのおかげで運搬に困らないというのは本当にありがたい。
さて、準備は整った。そろそろ塩屋村に戻るとするか。
そう思ったところで、ふと気になることがあった。
今回、ブラックホールの入口が最大5×5まで広がったことで、これまでとは前提条件が大きく変わってしまった。
以前は人が持ち運べる物資を中心に考えていたが、今ではトラクターや重機まで運び込める。そうなると、今まで考えていた村づくりの計画も、一度調べ直した方がよさそうだな。
特に気になるのは、塩屋村を含めた4つの村の関係だ。これまでは村ごとに支援することを考えていたが、4村が協力して食料や物資を融通し合う仕組みを作った方がいいんじゃないだろうか。
俺はパソコンを開き、ChatGPTに質問を入力した。
「1600年の沖縄で、塩屋村を含む4つの村が協力して食料経済ブロックを形成した場合、どのようなメリットとデメリットがありますか?」
しばらくすると、画面に回答が表示された。
『メリットは主に5つあります。
1. 食料の安定供給。4村で農作物、魚、獣肉を融通し合うことで、食料不足の危険を減らせます。
2. 分業による生産性向上。農業、漁業、狩猟、塩作りなどを村ごとに分担できます。
3. 余剰食料の交易。余った農作物や塩を他地域と交換し、生活物資を獲得できます。
4. 労働力の共有。開墾、建築、収穫などに必要な人手を4村で協力して確保できます。
5. 交渉力の向上。村単独よりも、王府や商人との取引で有利になる可能性があります。
一方、デメリットも5つあります。
1. 村同士の対立。収穫物の分配や労働負担を巡って不満が生じる可能性があります。
2. 塩屋村への依存。特定の村からの支援に頼りすぎると、各村の自立が進まなくなります。
3. 輸送と保管の負担。村同士を結ぶ運搬手段や倉庫が必要になります。
4. 不作の連鎖。特定の作物に依存すると、4村全体が食料不足に陥る危険があります。
5. 王府との摩擦。独自の経済圏が拡大すると、租税や交易の管理を巡って警戒される可能性があります。
推奨するのは、4村を1つに統合するのではなく、それぞれの自治を維持したまま、食料と労働力を融通する共同体を形成する方法です。』
俺は画面を眺めながら考え込んだ。
確かに、4つの村が協力すれば、今までよりずっと安定した暮らしができるはずだ。ただ、塩屋村だけが物資を提供し続けるような関係では長続きしないだろう。
それぞれの村が得意なものを作り、余ったものを融通し合う。そうすれば、俺がいなくても村同士で助け合って暮らしていける。
問題は、それをどうやって実現するかだな。
俺はもう一度、画面に表示された回答を読み返した。
ここで、もう一つ気になることが出てきた。
今回、隣村では安納芋と粟をそれぞれ1ヘクタールずつ栽培する予定だ。実際にどれくらい収穫できるのか。それによって、村の食料計画も変わってくる。
俺は続けてChatGPTに質問を入力した。
「今回、安納芋を1ヘクタール、粟を1ヘクタール栽培する予定です。それぞれの予想収穫量はどれくらいになりますか? また、沖縄の気候なら年2回収穫する2期作は可能でしょうか?」
しばらくすると回答が表示された。
『沖縄の気候と、現代の肥料・農機具を使用する条件で、おおよその収穫量を試算します。
1. 安納芋(1ヘクタール)
予想収穫量は1回あたり15〜25トンです。栽培期間はおよそ4〜5か月。沖縄の温暖な気候なら年2回の栽培も可能ですが、冬季は生育が遅くなるため、収穫量が減る可能性があります。
年2回とも順調に収穫できた場合、年間30〜50トンが目安になります。
2. 粟(1ヘクタール)
予想収穫量は1回あたり1〜2トンです。栽培期間はおよそ3〜4か月。沖縄では年2回の栽培も気候上は可能ですが、日照時間や品種、台風の影響によって収穫量が変わります。
年2回収穫できた場合、年間2〜4トンが目安です。
3. 2期作について
安納芋も粟も、沖縄の気候であれば2期作を検討できます。ただし、必ず年2回収穫できるわけではありません。
特に注意すべきなのは、台風による被害、冬季の生育不良、連作による地力低下です。
初年度は1回目の収穫実績を確認し、2回目の作付けを判断することをおすすめします。』
俺は画面に表示された数字を見て驚いた。
安納芋が1回で15〜25トン。粟も1〜2トンか。しかも、うまくいけば年2回収穫できるらしい。
これだけの収穫量があれば、80人の村の食料事情もかなり改善できるんじゃないだろうか。
ただ、数字はあくまでも予想だ。今回開墾する土地で本当にそれだけ収穫できるかは、実際に育ててみなければ分からない。
まずは1回目の収穫を成功させることだな。
俺は最後に、もう一つ気になっていたことをChatGPTに質問した。
「1600年の沖縄で、今回の村改革が成功し、食料不足が解消され、栄養状態や衛生環境が改善された場合、現在5歳から10歳の子供たちが20歳まで生きられる確率はどれくらいになりますか?」
しばらくすると回答が表示された。
『1600年の沖縄における年齢別の正確な死亡統計は存在しないため、以下は歴史的な生活環境を参考にした仮定上の試算です。
現在5〜10歳の子供が20歳まで生存する確率
改革前の村では65〜80%、食料事情と衛生環境が改善した場合は80〜90%、さらに栄養、安全な飲料水、衛生、感染症対策まで継続的に改善できれば90〜95%を想定できます。
ただし、これらは実測された歴史的数値ではなく、改革の効果を考えるための想定値です。
食料の安定供給によって栄養失調への対策が進み、清潔な飲料水や排泄物の適切な処理によって感染症の危険を減らせます。
一方、現代の抗生物質や予防接種、救急医療がなければ、感染症や事故による死亡を完全に防ぐことはできません。
特に重要なのは、食料増産だけでなく、安全な飲料水の確保と衛生管理を継続することです。』
俺は画面に表示された数字をじっと見つめた。
うまくいけば、今いる子供たちの9割以上が20歳まで生きられる可能性があるのか。
塩屋村のマカトや、ナビーが面倒を見ている6人の子供たちの顔が浮かんだ。
俺がやっていることは、単に村を豊かにするだけじゃない。あの子たちが大人になるまで生きられる可能性を高めることにもつながっているんだな。
もちろん、ChatGPTの数字はあくまで仮定だ。それでも、目指す価値は十分にある。
俺はパソコンの画面を閉じた。
読んでいただきありがとうございます。
続きが気になったらブックマークや評価をして頂けると励みになります
面白くなくても評価をして下さい今後の参考にしたいです。よろしくお願いいたします




