↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラックホールの向こうは400年前の沖縄でした〜現代の道具と知識で始める琉球王国改革〜  作者: gere


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/69

第50話 1600年4月22日

ブックマークしてくれた人、評価してくれた人ありがとう御座います。


朝


俺は目を覚ますと、いつものように湯を沸かした。コーヒーを淹れ、煙草に火をつけて一服する。


温かいコーヒーを飲みながら、昨日の出来事を思い返していた。


そういえば、昨日買ったものの計算をするのを忘れていたな。


俺は財布からレシートを取り出し、机の上に並べた。


昨日は孤児6人を引き取ることになり、着替えや寝具、それに3段ベッドの材料まで買い込んだ。


あれこれ忙しくしているうちに、金額を攻略本へ記入するのをすっかり忘れていた。


まずはタオルケット60枚。1枚1,500円で9万円。続いて子供用の作務衣6着が、1着3,000円で1万8,000円。


最後に3段ベッドの木材や金具、ネジなどの材料費が1万5,000円だった。


合計12万3,000円か。


前回の残金は2,148万5,348円だったから、今回の買い物を差し引くと2,136万2,348円になる。


俺は攻略本の収支欄に金額を書き込み、レシートをまとめて挟んでおいた。


「まだ2,000万円以上あるけど、油断できないな……」


農業機械だけで1,400万円も使ったばかりだ。今後も必要な道具や設備が出てくるだろうし、無駄遣いは控えないといけない。


計算を終えた俺は、残っていたコーヒーを飲み干して煙草の火を消した。


部屋のドアを開け、倉庫の中に置いた3段ベッドへ目を向けると、サンルー、チラー、クマの3人はまだぐっすり眠っていた。


昨日は知らない村に連れてこられ、初めて会う人たちに囲まれて、よほど緊張していたのだろう。


新しい作務衣やベッドをもらって喜んでいたが、やはり疲れていたようだ。


食事にはまだ少し早いので、そのまま寝かせておくことにした。


俺は倉庫を出て広場へ向かった。炊事場では、いつものようにかなさんとナビーが朝食の準備をしている。


かなさんは大鍋をかき混ぜ、ナビーはその隣で野菜を切っていた。


俺が近づくと、ナビーはなぜかニヤニヤしながらこちらを見ていた。昨日のことをまだ面白がっているのだろうか。


「かなさん、ナビー、おはよう」


「おはようございます、ユウマさん」


2人が揃って挨拶を返してくれた。


かなさんはいつものように微笑んでいるが、ナビーの方は相変わらず意味ありげな笑みを浮かべている。


俺は気づかないふりをして、ナビーに話しかけた。


「そういえば、昨日引き取った女の子たちはどうだった? ちゃんと眠れた?」


「ええ、3人ともぐっすりですよ。昨日はよほど疲れたんでしょうね。今朝もまだ寝ていますよ」


「そうか。うちの男の子3人もまだ寝てるよ。やっぱり緊張してたんだろうな」


「そうでしょうね。知らない村に来て、知らない人たちと暮らすことになったんですから。


でも、昨日の夕飯は本当に嬉しそうに食べていましたよ」


ナビーはそう言って笑った。確かに、昨日の6人は夢中になって雑炊を食べていた。


今までどんな暮らしをしていたのか詳しくは聞いていないが、少なくとも食事には苦労していたのだろう。


しばらくすると朝食が出来上がり、広場にも村人たちが集まり始めた。俺は男の子3人を起こすため、いったん倉庫へ戻ることにした。


倉庫に戻ると、3人はまだ眠っていた。俺は3段ベッドのそばに立ち、声をかけた。


「おーい、サンルー、チラー、クマ。朝だぞ。起きろ、飯の時間だ」


最初に目を覚ましたのはサンルーだった。眠そうに目をこすりながら体を起こし、俺の顔を見上げた。


「……飯?」


「ああ、朝飯だ。もうできてるから、顔を洗って広場に行こう」


すると、サンルーは驚いたように目を見開いた。隣で起き始めたチラーも、不思議そうな顔をしている。


「朝も飯があるんですか?」


「ん? 当たり前だろ。朝飯を食べないと腹が減るじゃないか」


俺がそう答えると、3人は顔を見合わせた。話を聞くと、前にいた村では朝食を食べることはほとんどなかったらしい。


食料が足りず、一日に一度食べられればいい方だったという。


そういうことか。昨日の夕飯をあれほど夢中になって食べていた理由が、少し分かった気がした。


「塩屋村では朝も昼も夜も飯があるからな。遠慮しないで食べればいい」


そう言うと、3人は慌ててベッドから降り始めた。クマなどは寝ぼけていたのが嘘のように目を輝かせている。


俺は3人に顔を洗わせ、それぞれ自分の椀とスプーンを持たせて広場へ向かった。


俺たちが広場へ戻ると、女の子のウミ、マナ、チヨもすでに起きてきていた。


ナビーのそばでそれぞれ椀を持ち、朝食が配られるのを待っている。


どうやら俺が倉庫へ戻っている間に、ナビーが起こして連れてきたらしい。


「おはよう。よく眠れたか?」


俺が声をかけると、3人は少し照れくさそうにうなずいた。昨日に比べると、ずいぶん表情も柔らかくなっている。


炊事場では、かなさんが村人たちに雑炊をよそっていた。俺は男の子たちを列に並ばせ、女の子たちも一緒に朝食を受け取ることにした。


「みんな、おはよう。よく眠れた?」


かなさんが笑顔で声をかけると、6人は揃ってうなずいた。かなさんは一人ずつ椀を受け取り、具沢山の雑炊をたっぷりよそってくれた。


大根やカラシナ、卵の入った雑炊から湯気が立ち上り、いい匂いが漂っている。


俺は6人を空いている場所に座らせ、自分も隣に腰を下ろした。


「ほら、早く食べな」


俺がそう言うと、子供たちは目の前の雑炊を驚いたように見つめた。


昨日の夕飯だけでも十分驚いていたのに、朝からこんな食事が出てくるとは思っていなかったのだろう。


しかし、腹は正直だった。


サンルーが真っ先にスプーンを握り、雑炊を大きくすくって口へ運んだ。それを見たチラーとクマも、負けじと勢いよく食べ始める。


女の子たちも少し遠慮がちだったが、ウミが食べ始めると、マナとチヨもそれに続いた。


「熱っ!」


「ゴホッ、ゴホッ!」


男の子3人は慌ててかき込んだものだから、熱さに驚いて咳き込んでしまった。


クマは口をすぼめて涙目になり、チラーは慌てて椀を置いている。


「おいおい、そんなに慌てるなって。誰も取らないから、ちゃんと冷まして食べろよ」


俺が笑いながら声をかけると、近くにいたかなさんも心配そうにこちらを見た。


「大丈夫? 熱いから、ふうふうして食べるのよ」


3人は恥ずかしそうにうなずき、今度はスプーンにすくった雑炊を何度も吹いて冷ましてから口へ運んだ。それでも食べる手は止まらない。


その様子を見ていた女の子たちも、思わず笑みをこぼしていた。


昨日まで不安そうに身を寄せ合っていた6人が、今は同じ広場で朝食を囲んでいる。


俺はそんな子供たちの様子を眺めながら、自分の雑炊をゆっくり食べ始めた。


村人たちが朝食を食べ終え、それぞれ仕事へ戻ろうとしていたところで、俺は村の子供たちを広場に集めることにした。


昨日新しく加わった6人もいることだし、この機会に子供たちの仕事をきちんと決めておこうと思ったのだ。


まずは6歳から10歳までの子供たちを集めた。昨日来たチラー、クマ、マナ、チヨもその中にいる。


みんな俺の前に並び、何を言われるのかと少し緊張した様子でこちらを見ていた。


「今日からみんなにも仕事をしてもらおうと思う。といっても、そんなに難しいことじゃないから安心してくれ」


俺がそう言うと、子供たちは互いに顔を見合わせた。特に昨日来た4人は、自分たちにも仕事があると聞いて、少し驚いているようだった。


「まず、午前中は砂浜で貝殻を集めてもらう。集めた貝殻は細かく砕いて、鶏の餌に混ぜるんだ。


貝殻には鶏に必要な栄養が含まれているからな。ただし、尖った破片が残らないように、しっかり細かくするんだぞ」


子供たちは真剣な表情でうなずいている。俺は続けて、鶏小屋の雛の世話とヤギの世話も任せることにした。


「それから、雛に餌と水をやること。ヤギにも餌と水をやって、元気にしているか見ておいてくれ。


生き物の世話だから、忘れたり適当にやったりするのは駄目だぞ」


「はい!」


子供たちから元気な返事が返ってきた。さっきまで少し緊張していた顔が、いつの間にか生き生きとした表情に変わっている。


特に昨日来た子供たちは、自分たちにも仕事を任せてもらえたことが嬉しいようだった。


真剣な眼差しで俺の話を聞きながら、目を輝かせている。


知らない村に来たばかりで不安もあるだろうが、こうして役割ができれば、少しずつ村の一員だという実感も湧いてくるだろう。


「ただし、仕事は午前中だけだ。午後は好きに遊んでいいぞ。砂浜で遊んでもいいし、友達と何をしても構わない。


ただ、危ないことはするなよ」


そう言うと、子供たちの顔が一斉に明るくなった。午前中は仕事をして、午後は自由に遊べる。


それがよほど嬉しかったらしく、早くも隣の子と何やら楽しそうに話している。


「よし、それじゃあ頼んだぞ」


子供たちは元気よく返事をすると、さっそく仕事に取りかかろうと動き始めた。


次は11歳以上の子供たちだ。こちらには昨日来たサンルーとウミも含まれている。


年齢も少し上なので、畑仕事などを手伝ってもらうことにした。


「11歳以上のみんなは、これからシンガの指示に従ってくれ。畑の仕事が中心になると思うけど、何をするかはシンガが決めてくれるからな」


子供たちは真剣な顔でうなずいた。シンガは普段から畑仕事を取りまとめているし、どこに人手が必要なのかもよく分かっている。


細かい仕事の割り振りまで俺が決める必要はないだろう。


あとはシンガに任せておけば、うまく考えてくれるはずだ。


こうして子供たちにも、それぞれの年齢に応じた仕事ができた。


小さい子供たちは鶏やヤギの世話をし、大きい子供たちは畑仕事を手伝う。大人たちも自分の仕事に集中できるようになるだろう。


俺は仕事へ向かっていく子供たちの後ろ姿を眺めていた。


昨日まで食べることにも困っていた孤児たちが、今日は塩屋村の一員として仕事を始めようとしている。


こうして少しずつ役割を分担していけば、村はこれからもどんどん発展していくだろう。


食事が終わり、俺は部屋に戻って一服していた。煙草を吸いながら午後の予定を考えていると、外から慌ただしい足音が聞こえてきた。


「ユウマー! ユウマー!」


何事かと思って入口を見ると、クマが息を切らしながら飛び込んできた。朝から子供たちと一緒に貝殻を集め、鶏の世話をしていたはずだ。


「どうした、クマ?」


「雛が! 鶏の雛が生まれてる!」


「おっ、本当か!」


俺は煙草を消すと、クマと一緒に鶏小屋へ向かった。クマはよほど嬉しかったのか、俺の少し前を走りながら何度も振り返っている。


抱卵小屋に着くと、すでに何人かの子供たちが集まっていた。中を覗くと、小さな雛が親鶏の周りでぴよぴよと鳴きながら動き回っている。


「おお、結構生まれてるな」


俺は卵の殻を踏まないよう気をつけながら、一羽ずつ数えていった。全部で十二羽。


今回も三十個の卵を抱卵させているので、今のところ四割が孵った計算になる。


まだ孵っていない卵も残っているが、前回の経験からすると、明日までにはほとんどが孵るだろう。第一陣は三十個中二十五個が孵った。


今回もそれくらい生まれてくれれば嬉しい。


「ユウマ、もっと生まれる?」


クマが期待に満ちた顔で聞いてきた。


「ああ、まだまだ生まれると思うぞ。明日が楽しみだな」


「やったー!」


クマが飛び跳ねると、周りの子供たちも嬉しそうに笑った。


さて、問題は雛の置き場所だ。第一陣の二十五羽は、もう生後三週間ほどになる。体もひと回り大きくなり、翼には羽が生え始めている。


生まれたばかりの雛と一緒にしたら、踏まれたり、つつかれたりする危険がある。


幸い、成長した雛を移すための育成用鶏小屋は、以前から用意してある。


「よし、みんな。今までの雛を育成用の小屋に移そうか」


「全部?」


「ああ、二十五羽全部だ。逃がさないように気をつけろよ」


子供たちは元気よく返事をすると、さっそく雛小屋へ向かった。


「そっち行った!」


「待って、待って!」


「捕まえたー!」


小屋の中は大騒ぎになった。雛といっても、もう結構な大きさだ。


捕まえようとすると素早く逃げ回るので、子供たちは右へ左へ追いかけている。


ようやく一羽捕まえたと思ったら、別の子が抱えていた雛が逃げそうになり、また大騒ぎになる。


俺は小屋の入口に立ち、逃げ出さないよう見張りながら、その様子を眺めていた。


「おいおい、そんなに追い回すなよ。ゆっくり捕まえればいいから」


「だって逃げるんだもん!」


「そりゃ逃げるだろ」


思わず笑ってしまった。


それでも子供たちは協力しながら、一羽ずつ育成用の小屋へ運んでいった。最後の一羽を移し終えると、俺は数を確認した。


「一、二、三……よし、二十五羽いるな」


全羽無事に移動できたようだ。


新しい小屋に入った鶏たちは、最初こそ落ち着かない様子だったが、しばらくすると地面をつついたり、あちこち歩き回ったりし始めた。


「よし、次は生まれたばかりの雛だ」


俺がそう言うと、子供たちは再び抱卵小屋へ集まった。


今度はさっきまでとは勝手が違う。生まれたばかりの雛は小さく、体も柔らかい。


子供たちもそれが分かるのか、先ほどの騒ぎが嘘のように慎重になっている。


「ユウマ、どうやって持つの?」


「両手で優しく包むように持つんだ。強く握ったら駄目だぞ」


俺が一羽をそっと持ち上げて見せると、子供たちは真剣な顔で頷いた。


クマも小さな手を差し出し、恐る恐る雛を持ち上げた。


「うわ……ちっちゃい」


「落とさないようにな」


「うん……」


さっきまで元気いっぱいに走り回っていたクマが、今は一歩ずつ慎重に歩いている。


その後ろをほかの子供たちも、両手で雛を包みながらゆっくりついていく。


「見て、かわいい!」


「ぴよぴよ鳴いてる!」


「そっと置いてあげてな」


子供たちは新しく生まれた雛を、一羽ずつ生まれたばかりの雛用の小屋へ移していった。


小さな命を傷つけないよう、みんなが一生懸命になっている。


その様子を見ていると、なんとも微笑ましい気持ちになった。


十二羽を移し終えたところで、俺はもう一度数を確認した。全羽無事だ。残りの卵は、明日まで様子を見ることにした。


それにしても、鶏が増えるのは嬉しいことだ。第一陣の二十五羽に、今回の十二羽。まだこれから孵る雛もいる。


順調に育ってくれれば、いずれ卵も肉も村で十分に賄えるようになるだろう。


そんなことを考えていると、ふと次の抱卵のことを思い出した。


そうだ。また明日から卵を三十個、孵化用に取っておかないといけないな。


今はまだ卵の数に余裕があるわけじゃない。三十個集めるとなると、食事に使う分はしばらく我慢する必要がある。


「二日ほど卵なしの雑炊か……」


俺は小さく呟いた。


まあ、しょうがない。今食べる卵を少し我慢すれば、将来はもっとたくさんの卵が手に入るようになる。


そう考えると、二日くらい卵なしの雑炊でも悪くないか。


俺は楽しそうに雛を眺めている子供たちを見ながら、これから増えていく鶏のことを考えていた。


読んでいただきありがとうございます。

続きが気になったらブックマークや評価をして頂けると励みになります

面白くなくても評価をして下さい今後の参考にしたいです。よろしくお願いいたします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。