↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラックホールの向こうは400年前の沖縄でした〜現代の道具と知識で始める琉球王国改革〜  作者: gere


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/66

第21話 1600年2月1日

那覇から戻ってきた翌朝。


昨日の夕方、俺たちはようやく塩屋まで戻ってきた。さすがに疲れていたので、帰ってからはほとんど何もせず、そのまま寝てしまった。


朝、聞き慣れない鳴き声で目を覚ます。


「コケコッコー!」


……うるさい。


一羽だけじゃない。何羽もいるから、結構な騒音だ。


そういえば昨日、那覇から連れてきた鶏を籠に入れたままだった。


外へ出ると、村の人たちも同じ鳴き声で起きたらしく、家から次々と顔を出している。特に子供たちは興味津々で、鶏の入った籠の周りに集まり、中を覗き込んでいた。


俺はいつものように湯を沸かし、コーヒーを入れて煙草に火をつける。一口飲んで煙を吐きながら、今日やることを考えた。


まず、この鶏だな。


いつまでも籠に入れておくわけにはいかない。とりあえず畑に放して、虫でも食べてもらおう。その間に鶏小屋を作ればいい。


それと、そろそろ第二畑も作りたい。シンガに頼んで、村のみんなで開墾してもらうか。


今日は鶏小屋と第二畑。朝からやることは多そうだ。


俺はシルーたちを呼び、那覇へ行く前に借りていたナタと弓を返した。俺たちが留守にしていた間、猪は来なかったらしい。


シルーは、出発前に仕込んでいた猪の燻製を半バケツ分ほど持ってきた。俺は少し千切って口に入れる。かなり塩気は強いが、ちゃんと食べられる燻製に仕上がっていた。保存食として考えれば十分だ。


これからも蒸発池の海水を使いたいとのことだったので、そのまま使っていいと伝えた。肉の保存に役立つなら、むしろ使ってもらった方がいい。


そのあと俺は、ブルーシートの上に積み上がっている塩をカナさんたちに片付けてもらうことにした。もちろんそのままではなく、金ザルで一度振って細かいゴミや混ざり物を落としてから、プラスチックボックスへ入れていく。


俺はタルガニと一緒に鶏の籠を持ち、畑へ向かった。


畑を覆っている防鳥シートの端をめくり、籠を開ける。


鶏たちは一斉に外へ飛び出した。


最初こそ周囲を警戒するように歩き回っていたが、すぐに土をつつき始める。土の中にいる虫や、小さな害虫を見つけては次々と食べていく。


思っていた以上に働く。


これなら畑の虫対策にもなる。


鶏小屋ができるまでは、昼間はこうして畑に放しておけばよさそうだ。


鶏を畑に放したあと、俺は長老の家へ向かった。


那覇でのことも含めて一度報告しておきたかったし、これから村をどうしていくかも話しておきたい。


長老に事情を話し、村のみんなを集めて話をしたいと伝える。広場に集合をかけてもいいか確認すると、長老はすぐに了承した。


その話を聞いたタルガニは、すぐに村中へ声をかけに動き出した。


あの海での事件以来、タルガニの俺を見る目は少し変わっている。前から信用はしてくれていたが、今はそれに畏れのようなものまで混じっている気がする。


俺としては、そこまで構えられると少しやりづらい。


とはいえ、村のみんなを集める役目を任せるには頼りになる。


俺は長老と一緒に広場へ向かい、二人で皆が集まってくるのを待つことにした。


しばらくすると、村の人たちが次々と広場へ集まってきた。大人だけでなく、子供たちも少し離れたところからこちらを見ている。


全員が揃ったところで、俺は那覇での取引について簡単に報告した。


この前持っていった塩五十斤が、最終的に鶏十六羽になったことを伝える。グラスや鏡、ライター、胡椒を売ったことについては話さなかった。あれは村の交易ではなく、俺個人の商売で得た収入だからだ。


そして、これからこの鶏をどうするかを説明した。


まずは繁殖させて、雌だけで百羽を目標にする。卵は村で自家消費し、それでも余る分は市場へ持っていき、米や布、道具など足りない物と交換する。雄は繁殖用に必要な分だけ残し、余った雄は若鶏のうちに食肉へ回して村のみんなで食べる。


肉を食べられると聞いた瞬間、広場の空気が少し変わった。


普段から魚は食べていても、肉をいつでも食べられるわけじゃない。鶏が順調に増えれば、これからは村の食卓に肉が出る機会も増える。


皆の顔が明らかに明るくなった。


次に畑の話をする。


これまで通り、それぞれの家の畑は自分たちで管理する。そのうえで、村全体で使う畑についても皆で手を入れて管理してもらう。


村の畑から取れた作物は、まず村の中で必要な分を消費する。それでも余った分は市場へ持っていき、村に不足している物資と交換する。交換して手に入れた物は、必要に応じて村のみんなへ分配する。


以前決めた方針を改めて確認する形だったが、反対する者はいなかった。


塩が鶏十六羽になったばかりだ。今まで作った物を自分たちで食べるだけだった村でも、余った物を外へ持っていけば別の物に変えられることを、皆も少しずつ実感し始めている。


鶏が増えれば卵が取れる。余った卵や野菜を売れば、米や布、道具が手に入る。猪が取れれば燻製にして保存もできる。


一つずつだが、村の暮らしが確実に変わり始めている。


広場に集まった皆の表情を見れば、それは俺だけが感じていることじゃない。


これから村が少しずつ豊かになっていく。


皆もそんな未来を思い描いているのか、どこか楽しそうな顔をしていた。


話が一段落したところで、俺は次にシンガへ声をかけた。


今ある畑だけでは、この先作物を増やしていくには足りない。そこで第二畑と第三畑の開墾をお願いすることにした。


以前にも説明した三圃式のやり方を、改めて皆に簡単に説明する。畑を三つに分け、同じ場所ばかり使い続けず、順番に作物を植えたり休ませたりしながら使っていく。


次に準備したいのは夏野菜だ。


春になってから慌てて畑を作るより、今のうちに開墾して土を整えておいた方がいい。第二畑は二月いっぱい、第三畑は三月いっぱいを目安に使える状態まで持っていってほしいとシンガに頼んだ。


シンガも内容を理解すると、そのまま引き受けてくれた。


次にシルーたちには、今日一日で鶏小屋を作ってもらうことにした。材料は村にある木や竹を使えば何とかなるだろう。夜になれば鶏を安全に入れられる場所が必要だ。


一方、ウミトゥ、サブロウ、タルーの漁師三人については、昨日まで那覇へ行って帰ってきたばかりだ。今日は特に仕事を頼まず、好きに過ごしてもらうことにした。


タルガニも含め、今回那覇まで一緒に行ってくれた四人には、あとで約束していた対価を渡す。


一人につき米六合。


タルガニ、ウミトゥ、サブロウ、タルーの四人で、合計二十四合だ。


これで那覇行きの報酬もきちんと精算できる。


村での話が終わったあと、俺はテントへ戻った。


中へ入り、周囲に誰もいないことを確認してから現在に戻りたいと念じる。


目の前にブラックホールが現れ、そのまま中へ入ると、次の瞬間にはアパートへ戻っていた。


部屋の中には、前回買いだめしておいた物資がまだ大量に積まれている。米や道具、日用品、それに今後1600年へ持っていく予定の物までかなりの量だ。


これは必要になった時に少しずつ向こうへ持っていけばいい。


俺はラップトップを開いた。


まず調べるのは、昨日の商売で手に入れた金だ。


沖縄県内で金の分析買取をしている店を検索する。調べてみると、刻印がない金でも純度を調べて、その日の相場を基準に買い取ってくれる店があるらしい。


次に現在の金相場を調べ、それから昨日受け取った金九十三匁をグラムへ換算した。


一匁は約3.75グラム。


93×3.75。


348.75グラム。


約349グラムだ。


現在の買取相場で計算すると、八百万円を軽く超える。


「……マジか」


那覇へ持っていったのは、現代では大した値段でもないグラスや鏡、ライター、それに瓶入りの胡椒だ。それが一度の取引で、現在では八百万円以上の金になった。


俺は画面に表示された数字を見ながら、しばらく考えた。


そして、この時点で自衛隊を辞めることを決めた。


これならやっていける。


向こうにはまだ商売の種がいくらでもあるし、今回だけでもこれだけの金になった。自衛隊の給料がなくなっても、すぐに生活に困ることはなさそうだ。


俺は金を机の上に置いた。


これで現在側で少しくらい時間を使っても、前ほど気にする必要はない。


まずは溜まっていた洗濯物を片付けた。かなりの量だったので、洗濯を済ませたあと乾燥機へ持っていく。


それから風呂に湯を張り、久しぶりにゆっくり湯船へ浸かった。


やっぱり風呂はいい。


1600年では簡単にできないことだから、余計にありがたく感じる。


洗濯物を乾燥機から回収したあと、そのままドンキへ寄って日用品や消耗品を買い足し、アパートへ戻って物資のストックへ加えた。


部屋には、前回の買い出しで用意しておいたアメリカ産の米五十キロ、大量の個包装チョコレート、それにカレールーも残っている。


これも次に向こうへ持っていけばいい。


ただ、今の時間のまま1600年へ戻ってもまだ早い。


ホームセンターが開く十時になってから戻れば、向こうで必要な物が出た時に現在へ戻ってすぐ買いに行ける。


今日は久しぶりにアパートのベッドでゆっくり眠ることにした。


翌朝。


目を覚まして時計を見ると午前九時だった。


缶コーヒーを開け、煙草に火をつける。


あと一時間。


俺はコーヒーを飲みながら時間を潰し、時計が十時になるのを待った。


十時。


ホームセンターが開いた時間だ。


これなら向こうで何か必要になっても、すぐ現在へ戻って買い出しに行ける。


俺は前回買っておいたアメリカ産米五十キロ、大量の個包装チョコレート、それにカレールーを十パックほどまとめた。


かなりの荷物になったが、向こうへ持っていけるなら問題ない。


荷物を持ち、1600年2月1日の戻り先を選ぶ。


次の瞬間、俺は再び塩屋のテントへ戻っていた。


読んでいただきありがとうございます。

続きが気になったらブックマークや評価をして頂けると励みになります

面白くなくても評価をして下さい今後の参考にしたいです。よろしくお願いいたします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。