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ブラックホールの向こうは400年前の沖縄でした〜現代の道具と知識で始める琉球王国改革〜  作者: gere


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第12話 1600年1月18日 その2

そろそろ昼になる。


釣り竿はそのままにして、俺はいったん塩を煮ている場所へ向かった。


ロケットストーブに火を入れてから、もう4時間近く経っている。


大鍋を覗くと、最初に入れた海水は半分よりかなり少なくなっていた。


表面の様子も朝とは違う。


鍋の縁や底の近くには、少しずつ白いものが見え始めている。


「カナさん、調子はどうですか?」


「水もだいぶ減って、段々塩が見えてきました」


「おお、いい感じですね」


俺は鍋を覗き込みながら頷いた。


「あと少ししたら、もっと一気に塩が出てくると思います。あとは焦がさないようお願いしますね」


「はい」


朝からずっとここにいるように見えたので、俺は少し気になった。


「そろそろ他の人と交代した方がいいんじゃない?」


するとカナさんは首を横に振った。


「大丈夫です。交互にやっているので」


「それならよかったです」


俺はそのままカナさんに任せ、テントへ戻った。


そろそろ昼飯にする。


「今日はもう面倒だから、カップ麺でいいか」


鍋に水を入れて火にかける。


湯が沸くのを待ちながら、俺は今日1600年へ持ち込んだ現代製品を頭の中で整理した。


20キロまで量れるアナログ式のはかり。


金属製のザル3個。


塩を乾かすためのブルーシート。


出来上がった塩を入れる透明のプラスチックボックス。


それから化成肥料20キロ入りを5袋。


合計100キロ。


「いくら使ったんだ?」


俺は値段を一つずつ思い出す。


はかりが9,800円。


ザル3個で330円。


ブルーシートが1,100円。


プラスチックボックスが1,980円。


肥料は20キロ2,717円が5袋だから13,585円。


全部合わせて――。


「2万6,795円か」


思ったより使っている。


俺はこれまでの残金を思い出した。


3,478,513円。


そこから今日持ち込んだ分を引く。


「3,478,513円から26,795円引いて……」


残りは――。


「3,451,718円か」


まだ十分余裕はある。


ただ、この先は畑も広げたいし、農具や種、交易用の品も必要になってくる。


「まあ、必要経費だな」


そんなことを考えているうちに、お湯が沸いた。


俺はカップ麺の蓋を開け、熱湯を注いだ。


カップ麺を食べ終わると、ルアー用の竿を持って海岸へ向かった。


打ち込みは待っている時間が長い。


「結構暇なんだよな……」


どうせなら、打ち込みをしながらルアーもやることにする。


海岸へ着くと、まず打ち込みの竿を一度上げてみた。


「やっぱり無いか」


ヤドカリの餌は綺麗になくなっている。


俺はもう一度岩場を探し、ヤドカリを捕まえて針につけた。


仕掛けを投げ込み、糸を張る。


竿を固定し、鈴を付け直した。


「よし」


今度は少し離れた場所でルアー竿を準備する。


狙いはミーバイだ。


「一投目」


ルアーを投げる。


巻き始めてすぐだった。


ガツン!


「うおっ、いきなり来た!」


竿が大きくしなる。


「やっぱ安定のルアーだわ」


思ったより引きが強い。


何度か突っ込まれながらも、少しずつ寄せていく。


水面に魚影が見えた。


「ミーバイだ」


そのまま引き上げる。


見た感じ1キロくらいある。


「いいサイズじゃん」


俺は針を外し、ミーバイをバケツへ入れた。


「もう一匹欲しいな」


二投目を投げようとした、その瞬間だった。


チリン。


「ん?」


打ち込み竿の鈴が鳴った。


俺はすぐに竿のところへ戻る。


まだ餌をつついているだけかもしれない。


竿を持ち、糸の張り具合を見ながら当たりを探る。


少し待つ。


チリン!


次の瞬間、竿先が大きく入った。


「来た!」


俺は竿を大きくしならせ、針を食い込ませる。


完全に掛かっている。


「うわ、強っ!」


リールを巻くが、かなりの力で引っ張られる。


ドラグが出る。


少し巻いては引かれ、また巻く。


「これはデカいぞ」


3分、4分と格闘した。


ようやく魚影が見えてくる。


「タマンだ!」


しかもかなり大きい。


波打ち際まで寄せ、そのまま一気に引き上げた。


「でかっ」


立派なタマンだ。


「4キロくらいあるんじゃないか?」


持ち上げるとずっしり重い。


バケツにはとても入らない。


仕方なく近くにあった、潮が引いてできた海水だまりへ入れておく。


「これだけでも十分だけど……」


さっき釣ったミーバイを見る。


「できればもう一匹ミーバイ欲しいな」


タマンだけでもかなりの量だ。


でも、もう一匹ミーバイがあれば、44人で魚汁を食べるにはかなり余裕が出る。


俺はもう一度ルアー竿を持った。


二投目。


反応なし。


三投目。


四投目。


「さすがに連続では来ないか」


そのまま投げ続ける。


そして十投目。


ガツン!


「来た!」


再び竿がしなる。


今度も根に潜られないように強引に寄せる。


「よしよし」


上がってきたのは、さっきと同じくらいのミーバイだった。


「十分だな」


俺は針を外し、バケツへ入れた。


これ以上は必要ない。


俺はタマンとミーバイ2匹を持ってテントへ戻った。


「さて、どれくらいあるかな」


今日持ってきた20キロまで量れるはかりを出す。


まずミーバイ2匹。


「2.3キロ」


次にタマンを乗せる。


針が大きく動いた。


「3.8キロ……」


思わず笑う。


「やっぱデカかったな」


魚だけで合計6.1キロ。


これなら魚汁にすれば、村のみんなにも十分行き渡るだろう。


俺は包丁を出し、魚を捌き始めた。


鱗を落とし、内臓を取り、頭やカマも分けていく。


タマンもミーバイも、魚汁に使いやすい大きさに切った。


骨や頭も捨てない。


「ここが一番いい出汁出るからな」


全部切り終えると、魚汁用にした魚をバケツへ戻した。


「これだけあれば十分だろ」


俺は釣り竿を片付けると、塩を煮ている場所へ向かった。


鍋を覗くと、かなり水分が飛んでいる。


朝に比べれば、もうほとんど別物だ。


「カナさん、もうこれ以上は薪を入れなくて大丈夫です」


「もういいんですか?」


「はい。今くらいの火で十分です。あと1時間くらい煮れば、いい感じになると思います」


火は強くしすぎず、そのまま中火くらいで煮詰める。


俺はその間にブルーシートを広げ、塩を天日干しする準備を始めた。


そして約1時間後。


鍋の中の水分はほとんどなくなっていた。


底に少し水が残っている程度だ。


「よし、これくらいでいいな」


俺は鍋を火から下ろし、そのまましばらく冷ます。


熱が落ち着いたところで、広げておいたブルーシートの上へ鍋をひっくり返した。


ザザッ。


白い塩が大量に落ちる。


俺はそれを手早く広げ、均等になるようにならしていった。


カナさんがその様子を見ながら目を丸くする。


「私、こんなにたくさんの塩、初めて見ました」


「そこまで?」


少し大げさじゃないかと思ったが、今までの作り方を考えれば本当にそうなのかもしれない。


塩はまだ温かい。


ところどころから湯気が上がっている。


「これは明日まで天日干しだな」


鍋の縁や底に残った塩もしっかり掬い取り、全部ブルーシートの上へ広げた。


鍋を洗おうかと思ったが、ふと魚のことを思い出した。


「……このまま使えばいいか」


俺は鍋に水を入れる。


そこへ、さっき捌いたタマンとミーバイを一気に入れた。


鍋にはまだ塩分が少し残っている。


「塩入れなくても済むかもな」


もう一度ロケットストーブに火を入れる。


ゴォォォッ。


火が勢いよく燃え始め、やがて鍋が沸騰してきた。


ちょうどその頃、海の方から漁師3人が戻ってきた。


今日の漁は、まあまあだったらしい。


籠や網の中には魚が何匹も入っている。


そのうちの一人が、俺の鍋を覗き込んだ。


魚汁を作っているのが分かったようだ。


しばらくすると、売り物にならないような小魚を5匹ほど置いていった。


「くれるの?」


漁師は笑いながら頷く。


「じゃあ、ありがたくもらうよ」


俺はすぐに小魚を捌き、そのまま魚汁の鍋へ入れた。


これでさらに出汁が出る。


「カナさん、今日は魚汁だから、みんなに分けてあげて」


「みんなにですか?」


「うん。44人分あると思う」


カナさんは嬉しそうに笑った。


「分かりました。みんなに言ってきます」


そう言うと、そのまま村の方へ歩いていった。


俺は鍋の前にしゃがみ、魚汁を少し味見する。


「んー……」


まだ少し薄い。


「塩が足りないな」


俺はさっき出来たばかりの塩を一握り取った。


そのまま鍋へ投入する。


サッ。


指先に少し塩が残った。


何となく舐めてみる。


「しょっぱ!」


思わず笑った。


「いい出来だな」


ちゃんと塩になっている。


何だかんだしているうちに、もう夕方になっていた。


村の方から次々と人が集まってくる。


みんな手には椀を持っている。


子供たちまで嬉しそうだ。


俺はカナさんによそおい係を任せた。


「お願いします」


「はい」


カナさんが鍋の前に立ち、みんなの椀へ魚汁をよそい始める。


俺は少し離れたところに腰を下ろした。


タバコを一本取り出し、火をつける。


「ふぅ……」


煙を吐きながら、魚汁をもらうために並んでいる村人たちを眺めた。



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