8/10
第八話 上司
俺の名前は石川池早九
埼玉県警刑事部の刑事だ。
通称、自称、せっかち刑事。
とにかく、早く帰りたい。
なのに、今日も事件が俺を呼ぶ。
「石川くん。」
「え?え、えっ?」
俺は周りをキョロキョロと見渡す。
「どうしたんだ?」
「いや、ここはいつも『先輩こっちです。』から始まるので、そこまではテンプレだと思っていたはず。」
「何の話だ?」
「いえ、こっちの話です。」
「今夜、久しぶりに飲みに行かないか?」
「お断りします。今日は5:20を狙ってるんです。」
「何の話だ?」
「1分ずつしか減らないと、思われてるはず。」
「だから何の話だ?」
「今日は早く帰るんです。」
「何か、大事な用があるのか?」
「妻が実家に帰ってしまったからと思われてるはず。」
「何の話だ?」
「せっかちだから、その話はもう終わって家にいる設定のはず。」
「だから何の話だって?」
「よし!帰るぞ!」
俺はさっさと帰宅する。
5:20
「ただいま」
妻はおかえりも言わずにキスしてくれる。
俺はゆっくり風呂に浸かった。
「くそぉぉぉ、気持ちぃぃぃ、自宅って最高かよぉぉぉ……」
明日は、もっと早く帰りたい。




