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森の守護者  作者: 紫桜
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第6話 魔女様は微笑む


第6話 魔女様は微笑む


朝の森は静かだ。


家の前で、セレンは籠の中を確認している。


束ねた薬草がいくつも入っていた。


さくらはその様子を覗き込む。


「今日はたくさんですね」


「ええ」


セレンは頷いた。


「今日は街に行くわよ」


「街!」


さくらの顔がぱっと明るくなる。


セレンは籠を持ち上げた。


「薬草を売って、必要な物を買ってくるの」


そして振り返る。


「さあ、さくらも準備して」


セレンは微笑む。


「はい!」


さくらは嬉しそうに上着を羽織るとセレンに駆け寄った。




森を抜けると、小さな石の道に出た。


そしてしばらく歩くと、色んな建物が見えてくる。


木の看板。


煙突から上がる煙。


さくらは思わず声を上げた。


「わぁ……」


人。

店。

馬車。


久しぶりに見る「街」だった。


さくらは行き交う人々の活気に自身も高揚している。


しかしさっきから二人が通りを歩くと、人々が振り返ることに気付く。


「魔女様だ」

「森の…」

「今日は街にいらしてたのか」


さくらは少し驚いた。


二人が、というよりは皆セレンを見ているのだ。


ヒソヒソ声の中に"森"や"魔女"というワードが聞こえる。


「セレン、もしかして有名人なんですか?」


セレンは肩をすくめる。


「定期的に薬草を売りに来ているだけよ、だからきっと物珍しいんじゃない?」


だが人々は、軽く頭を下げたり、笑顔で挨拶してくる。


「魔女様、今日はいい天気ですね」


「ええ、そうね」


話しかけられたセレンも穏やかに返す。


店に入ると、店主がすぐ気づいた。


「おお、魔女様!」


籠の中を見る。


「今回もこんなにたくさん、良い薬草ですね」


セレンは束を差し出した。


「いつもの分よ」


店主は目を細める。


「これは上物だ」


すぐに銀貨を数える。


「少し多めにしておきます」


さくらは目を丸くした。


「そんなに……?」


店主は笑った。


「森の魔女様の薬草はよく効くんですよ」


買い物を済ませて店を出る。


袋にはパンや布、塩などが入っていた。


さくらは中を覗く。


「……多くないですか?」


「おまけしてくれたみたいね」


セレンは小さく笑う。


店主に挨拶を済ませ店を出る。


そのあとも同じように


「この前言ってたものですが良ければ貰ってください」

「魔女様、良かったらこれもどうぞ」

「魔女様、この前頂いた薬がよく効いて本当に助かりました。これお礼です!」


皆セレンに嬉しそうに話しかけている。


その度にセレンも丁寧にお礼を伝えたり身体の調子を尋ねてはオススメの薬や薬草の煎じ方を説明している。


だいたいの予定も済ませてそろそろ帰ろうと通りを歩いていると前の方で小さな騒ぎが起きていた。


「大丈夫か!」

「誰か水を!」


人の輪ができている。


「どうしたんだろう」


さくらは思わず近づく。


その中心で、小さな男の子が泣いていた。


どうやら膝を擦りむいたようで血が出ている。


さくらはしゃがみ込む。


「大丈夫?」


「石に躓いて転んだの……」


男の子は泣きやむ気配がない。


深く切れたのか血が滴っている。


その横にセレンもしゃがんだ。


傷を見る。


「少し深いわね」


周囲の人が言う。


「医者を呼ぶか?」


しかしセレンは首を振った。


「大丈夫よ」


手をそっと傷の上にかざす。


すると淡い光がセレンの手に集まりかざした傷回りに広がる。


すると血が止まり、傷がゆっくり閉じていく。


男の子は目を丸くした。


「あれ?」


痛みが消えているようだ。


周囲から声が上がる。


「さすが魔女様だ」

「ありがたい……」


男の子の母親が頭を下げた。


「ありがとうございます」


セレンは静かに微笑む。


「次から走るときはちゃんと足元を見なさいね」


男の子は元気よく頷いた。


「うん!ありがとう魔女様!」


さくらはその様子を見ていた。


今日出会った街の人たちの言葉や子供の笑顔。


セレンは優しい人なんだ。


森で出会った時よりも、少しだけセレンの人柄が分かった気がした。


セレンは立ち上がる。


「さあ、帰りましょうか」


「はい!」


さくらも頷いた。


二人は大きな荷物を持って街を後にする。



だがその頃――

森の奥で。

黒い影が、静かに動いていた。


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