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森の守護者  作者: 紫桜
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第7話 静寂のひび


第7話 静寂のひび


今朝も森は、いつもと同じように静かだった。


木々の隙間から漏れる光。


囀る鳥の声。


穏やかな1日。


小さな家の前で、さくらは洗った布を干している。


風が吹き、白い布がふわりと揺れた。


「いい天気〜」


思わず独り言がこぼれる。


森の生活にも、少しずつ慣れてきた。


水を汲み、簡単な掃除をして、セレンの薬草栽培を手伝う。


街に行った日から、もう数日が経っていた。


その時だった。


カサッ。


森の奥で、小さな音がした。


さくらは振り返る。


木々の間で、何かが動いた気がした。


「また鹿?」


そう思ったが、姿は見えない。


首をかしげていると、家の扉が開いた。


「さくら」


セレンが外に出てくる。


いつもの落ち着いた表情だ。


「どうしたの?」


さくらは少し困った顔をする。


「今、あっちで音がして……」


森の奥を指差す。


「何かいるみたいで」


セレンは視線を向けた。


森の奥。


風が木々を揺らしているだけのように見える。


だが、セレンの目がわずかに細くなる。


(……変ね)


ほんのかすかだが、嫌な気配を感じる。


だが、すぐに消えた。


さくらは不安そうに言った。


「動物ですか?」


セレンは少し考えてから答える。


「たぶん」


そう言いながらも、森の奥を見つめる。


(今のは……)


魔物の気配に似ていた。


だがこの森は、守護の結界が張られている。


普通の魔物は近づけない。


セレンは小さく息をついた。


「大丈夫よ」


さくらに微笑む。


「この森は安全だから」


さくらはほっとしたように頷いた。


「よかった」


その時。


森の中から、小さな影が飛び出してきた。


ふわり。


さくらの足元に降りる。


「わっ」


小さな白い兎だった。


丸い目でこちらを見ている。


さくらは思わずしゃがみこんだ。


「こんにちは、さっきの音はあなただったの?」


兎は逃げないでぴょん、と一歩近づく。


さくらは驚いた。


「可愛い、人懐っこいですね」


セレンはその様子を見ていた。


(やっぱり)


森の動物は本来、人間を警戒する。


だがこの兎はまるで


さくらを知っているかのようだった。


さくらは嬉しそうに笑っている。


兎はしばらく足元をくるくる回っていたが、やがて森へ帰っていった。


さくらは立ち上がる。


「森って、不思議ですね」


セレンは小さく頷いた。


「ええ」


少し遠くを見る。


「この森は、普通の森とは少し違うの」


「そうなんですか?」


さくらが首を傾げる。


セレンはすぐに微笑んだ。


「昔から色々なものが集まる場所なの」


それ以上は言わなかった。


さくらは深く考えずに頷いた。


その時、風が強く吹いた。


森の奥で、木々がざわめく。


セレンの視線が再び奥へ向く。


(……また)


ほんの一瞬、確かに感じた。


淀んだ魔力。


セレンの表情が少しだけ変わる。


だが、すぐにいつもの顔に戻った。


さくらはそれに気づいていない。


布を取り込みながら言う。


「今日は薬草を採りに行きますか?」


セレンは少し考えてから答える。


今日は、奥には行かない方がいい。


そう判断した。


「今日は家で薬を作りましょう」


「はい!」


さくらは元気に頷いた。


二人は籠を持って歩き出す。


穏やかな森の朝。




だが――


その頃。


森の遥か奥で。


黒い影が、静かに蠢いていた。


そして低い声が響く。


「……見つけた」


森の奥、封印の眠る場所を見つめながら。


影はゆっくり笑った。


「神の気配だ」


静かな森の奥で、


何かが、確かに動き始めていた。




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