↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三毛猫ミャアの物語旅ー「正解のシナリオを破り捨てたら」から、ホームズ未来からの依頼人(略称)までー  作者: 村松希美


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/14

3 美浜村ー青い海のナギ 潮のゆりかごーへの旅 1




ゴトン、と大きな揺れとともにトラックのエンジン音が止まった。


ガタガタと遠く離れた都会の街並みを抜け、幾(いく)つもの山を越え、トンネルをくぐり——段ボール箱の隙間で丸くなっていた三毛猫のミャアは、ゆっくりと目を覚ました。


パカッと大きな音を立てて荷台の後ろの扉が開くと、眩(まぶ)しい陽光と、どこか懐かしい湿り気を帯びた風が一気に流れ込んでくる。



潮の香り。そして、豊かに繁る緑と土の匂い。


「ふいーっ、美浜村(みはまむら)に到着だ! 途中の山道、揺れたな〜!」

「さあ、作業チャッチャと終わらせて、浜の食堂で美味しい魚でも食おうぜ!」


作業員たちの威勢の良い声を聞きながら、ミャアは隙間(すきま)から身を乗り出し、軽やかな身のこなしで荷台から地面へと飛び降りた。


パシッ、と降り立った場所は、柔らかいアスファルトの上。

目の前に広がるのは、都会の喧騒とはまるで違う景色だった。


どこまでも青い空と、雄大に広がる美浜村の海。波が寄せては返す「ザザー……」という穏やかな音。海沿いに並ぶ小さな家屋と、緑豊かな山々のコントラスト。


(にゃあ……)

ミャアは黄金色の瞳を輝かせ、鍵型(かぎがた)の短い尻尾をパタパタと揺らした。


都会の公園で出会った、自分のシナリオに思い悩んでいた少年と少女。


駅前のテラス席で出会った、時空を超える冒険を経て新しい顔になった少年と少女。


たくさんの人の想いや秘密を見届けてきたミャアにとって、この美浜村の空気はとても優しく、どこか温かい「お母さん」の抱擁(ほうよう)のように感じられた。


「おや……? 引っ越しトラックから猫が降りてきたぞ?」

ふいに、あたたかな声が頭上から降ってきた。


振り返ると、そこには麦わら帽子をかぶり、肌を健康的な小麦色に焼いた二人の小さな男の子——航太(こうた)と櫂(かい)が立っていた。


「にぃに、見て! おっきい三毛猫ちゃん!」

「ほんとだ! 尻尾の先がクルッて曲がってる! カギしっぽだ!」

二人は目を輝かせながらミャアの前に屈み込んだ。

ミャアはいつものように警戒する様子もなく、トコトコと二人に歩み寄ると、航太の膝に「ごん」と自分の頭を優しく押し付けた。


「うわぁっ、すごく人懐っこい! どっから来たんだろう……引っ越しトラックに乗ってきたのかな?」


「にゃあ」

ミャアが短く鳴くと、少し離れたところから「航太ー! 櫂ー! あんまりお邪魔しちゃダメだぞー!」と頼もしい声が聞こえてきた。


青(あお)という青年の隣で、白いワンピースを着た美しい女性——ナギが、優しく微笑みながら歩いてくる。


「まあ、綺麗な三毛猫ちゃん。旅をしてきたのかな?」

ナギが腰を落として優しく背中を撫でてやると、ミャアは心地よさそうに目を細め、「ゴロゴロ……」と喉を鳴らした。


「お名前、なんていうのかなあ?」

櫂が顔を覗き込んで尋ねると、ミャアは二人の小さな兄弟と、温かく見守る青とナギを見上げ、誇らしげに答えた。


「ミャア」

「えっ! いま『ミャア』って言った!?」

「あはは! ミャアちゃんっていうんだ! 可愛い〜!」

子どもたちの弾けるような笑顔と笑い声が、澄み切った美浜村の空に響き渡る。

青がミャアの顔をじっと見つめ、ふっと柔らかく笑った。


「この村にはな、どこまでも続く綺麗な海と、世界中に繋がってる冒険の海があるんだ。ミャアも、どこか遠い冒険の途中でこの村にやってきたのかもな」


「うん……! 青くん、この子、なんだか素敵な出会いをたくさん運んできてくれそうね」

ナギが微笑むと、ミャアは嬉しそうに「にゃーん」と答え、青い海に向かってすっと一歩踏み出した。


東京の公園から始まり、ロンドンの面影を残す街角を通り、引っ越しトラックに揺られて辿り着いた、ここ美浜村。

誰かの心に寄り添い、次の運命へと背中を押す「旅する三毛猫ミャア」。


潮風が心地よく毛並みを撫(な)でる中、ミャアは美浜村の温かな人々に見守られながら、また新しい物語のページをそっと開き始めるのだった。









三毛猫ミャアが美浜村に降り立ちましたね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。