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三毛猫ミャアの物語旅ー「正解のシナリオを破り捨てたら」から、ホームズ未来からの依頼人(略称)までー  作者: 村松希美


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14 きみの笑顔が見たいからーふたりの恋の証人のミャア




ーー三毛猫は、日本では昔から庶民に親しまれてきたおなじみの猫だ。

だが実は、世界的に見れば非常に珍しく、時に幸運をもたらす招き猫として珍重される存在でもある。


これは、そんな一匹の三毛猫「ミャア」が、とあるWEB小説家(作者)の生み出す物語の世界を気ままに旅していく、少し不思議な物語。


ときに悩める中学生たちの公園に現れ、

ときに時空を超えた名探偵の街角に佇み、

ときに潮風かおる港町で子どもたちと戯れ、

ときに「笑顔の仮面」を脱ぎ捨てて本当の自分を取り戻した少女と不器用な少年の前にそっと姿を現す——。


なにしろ、この三毛猫ミャアの旅はとどまることを知らないのだから——。



放課後の夕暮れ。部活終わりの静まり返った男子部室の前。


夕陽の光を背負う小川美緒と、顔を真っ赤にして慌てふためく佐伯拓人が、照れくさそうに笑い合っていた。


「……私の本当の笑顔を見つけてくれて、ありがとう、佐伯くん」

「っ……! あれは、その、だな……!」

旧校舎の裏での不器用すぎる「告白」を経て、二人の間に流れる温かな空気。


そのとき、部室の物陰から「ふわり」と小さな影が足元に忍び寄ってきた。


「……にゃあ」

低くも透き通った、鈴のような鳴き声。


「……ん? なんだ……?」

拓人が驚いて視線を落とすと、そこには見事な白地に黒と鮮やかな茶色の模様を持った一匹の三毛猫が座っていた。鍵型に曲がった短い尻尾をパタパタと振り、黄金色の大きな瞳でふたりを見上げている。


「あ……可愛い猫ちゃん! 部室の近くにいたんだ」

美緒が優しく目を細めて膝をつくと、三毛猫はトコトコと歩み寄り、美緒の小さな手に自分の頭を「ごん」と愛おしそうに押し当ててきた。


「ふふっ、すごく温かい……。全然怖がらないね」

「おいおい、小川。野良猫かもしれないぞ……って、うわっ!?」


拓人が注意しようと屈み込んだ瞬間、三毛猫はすっと移動し、拓人のユニフォームの裾(すそ)に体をすり寄せると、「ゴロゴロ……」と重低音の喉鳴りを響かせた。


「な、なんだよお前……! 俺は今、色々とパニックで忙しいんだぞ!」

拓人が真っ赤になりながら頭をかくと、三毛猫は「慌てるなよ」と言いたげに短く鳴いた。


「お名前、なんていうのかな?」

美緒が微笑みながら尋ねると、三毛猫は胸を張り、はっきりと答えた。


「ミャア」

「えっ……? 今、『ミャア』って……?」

拓人が目を丸くして顔を覗き込む。


「ミャア」

もう一度、誇らしげに主張するように鳴く三毛猫。


「あはは! ミャアちゃんっていうんだ! すごいね、自分で名前が言えるんだね!」

美緒が嬉しそうに声を上げて笑った。その笑い声は、あの日までの「作られた笑顔」ではなく、せせらぎのように透明で温かな、本当の笑顔だった。

拓人はその笑顔に見とれながら、ボソッと呟(つぶや)いた。


「……ミャア、か。変わった猫だな。……でも、小川がちゃんと笑えてて、よかったよ」


「……え?」

「いや……あの日の校庭の隅で、お前が一人で泣いてるの見たらさ、もう放っておけなくて……。でも、こうして笑ってくれてるなら、俺のあのダサい告白も無駄じゃなかったのかなって」


拓人が照れ隠しに視線を逸らすと、美緒は胸の奥が甘く熱くなるのを感じながら、拓人の腕をそっと突いた。


「ダサくなんてなかったよ。……すっごく嬉しかったんだから」

「うぐっ……! お前、急にそういうこと言うなよな!」

二人の甘酸っぱいやり取りを、ミャアは満足そうに目を細めて見つめていた。


ミャアはそっと前足を伸ばすと、拓人の靴の上と、美緒の靴の上に交互にちょんと足を乗せた。まるで、二人の結ばれた距離感を確かめて祝福するように。


「ふふ、ミャアちゃんも応援してくれてるみたい」

「よーし……! じゃあ今度の日曜、映画行くぞ! デートだ!」


「えっ、急に強気……! でも、うん! 佐伯くんにだけ、私の笑顔、見せてあげる」

幸せそうに微笑み合う二人を見届けると、ミャアはスッと立ち上がり、夕日に染まる校庭の方へと歩き出した。


「あ……ミャアちゃん、行っちゃうの?」

美緒が手を振ると、ミャアは振り返り、鍵型の尻尾をフリフリと揺らしてみせた。


「そっか。お前も次の場所へ行くんだな」

拓人が優しく微笑む。


「ミャアちゃん、ありがとう!」

ミャアは「にゃーん」と一声残し、茜色の夕空の中へと消えていった。



校門を飛び出したミャアは、春の風が吹き抜ける新しい街へと走り抜けた。


仮面を脱ぎ捨てて本当の笑顔を取り戻した少年少女の温もりを胸に、ミャアの足は、大きなアニメ化ポスターが揺れる劇場のエントランスへと引き寄せられていく。


そこには、小説家と声優というお互いの「虹」に向かって走り続け、幼い頃の約束を果たした文美と天馬の物語が待っていた——。








きみの笑顔がみたいからもマイ推し作品ですが。


思春期の気持ちを描くのは楽しいです。完成された大人ではなく、未熟で何を言い出し、どんな行動をするのか?予測不可能なので。

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