13 不法行為につき、即座に駆逐いたします〜突撃!いじめバスターズ〜 での旅
ーー三毛猫は、日本では昔から庶民に親しまれてきたおなじみの猫だ。
だが実は、世界的に見れば非常に珍しく、時に幸運をもたらす招き猫として珍重される存在でもある。
これは、そんな一匹の三毛猫「ミャア」が、とあるWEB小説家(作者)の生み出す物語の世界を気ままに旅していく、少し不思議な物語。
ときに悩める高校生たちの公園に現れ、
ときに時空を超えた名探偵の街角に佇み、
ときに潮風かおる港町で子どもたちと戯れ、
ときに法律の六法全書を胸に戦う少し変わった少年たちの前に颯爽と降臨する——。
なにしろ、この三毛猫ミャアの旅はとどまることを知らないのだから——。
放課後の2年B組の教室。
夕日が差し込む窓際で、陣内蓮は右手に握った通学用スニーカーからピンセットで画鋲を抜き終え、コンコンと床に叩きつけていた。
「よし、器物損壊罪および不法行為に基づく損害賠償請求の証拠保全は完了した。Q.E.D.だ!」
「いや、Q.E.D.じゃなくて足を痛そうにするなよ……」
隣でポテトチップスを齧る親友の佐藤翼が呆れ顔でツッコミを入れた、まさにその時だった。
「……にゃあ」
教卓の下の影から、静かで誇り高い鳴き声が響いた。
「むっ!? なんだこの侵入者は! 『建造物侵入罪(刑法第130条)』の疑い……いや、待て!」
蓮がメガネのブリッジをくいっと上げて見下ろすと、そこには鮮やかな白地に黒と茶色の斑模様を持った一匹の三毛猫が座っていた。鍵型に曲がった短い尻尾をパタパタと揺らしている。
「うわ、可愛い! どこから入ってきたんだよ、この猫!」
翼が膝をついて手を伸ばすと、三毛猫は警戒する素振りもなくトコトコと歩み寄ってきた。そして、画鋲の穴だらけになった蓮の右足のスニーカーに、自分の頭を「ごん」と深く押し当ててきた。
「ぬおっ……! 私の『被害を受けた財物』に直接的コンタクトを……!?」
「硬いこと言うなって、蓮。お前の足を心配してくれてんだろ」
三毛猫はそのまま蓮の制服の裾にすりりと体を寄せると、「ゴロゴロ……」と重低音の喉鳴りを教室中に響かせた。
「ふむ……触感が非常によろしい。毛並みの整備状態から推測するに、野良にしては高いQOL(生活の質)を維持しているな」
蓮がおそるおそる手を伸ばし、三毛猫の背中を優しく撫でる。
「お名前、なんていうのかな?」
翼が優しく問いかけると、三毛猫は胸を張り、教室全体に響き渡る声ではっきりと主張した。
「ミャア」
「……は?」
蓮と翼が同時にフリーズした。
「いま……『ミャア』って言わなかったか?」
翼が目を丸くする。
「ミャア」
もう一度、自信満々に鳴いて見せる三毛猫。
「……面白い! 自己のアイデンティティを明確な言語表現(に近い発声)で提示するとは! 『氏名権』の主張と受け取ったぞ、ミャア君!」
蓮が不敵な笑みを浮かべると、ミャアは「やれやれ、理屈っぽい奴だな」と言いたげに短く鳴き、机の上に散らばった蓮のボイスレコーダーや六法全書メモの横へひらりと飛び乗った。
「なあ蓮、お前さ……こうしてミャアみたいな猫が懐いてくれるってことは、お前のやってる『いじめバスターズ』も捨てたもんじゃないってことだろ」
翼が笑いながらポテトチップスを差し出す(ミャアはふいと無視した)。
「フッ、当然だ。私は転校してしまった白雪紬さんの無念を晴らし、この学校からあらゆる不法行為を駆逐すると誓った男だからな!」
蓮は夕日に向かってポーズを決め、遠い空を見つめた。
「こうやっていじめバスターしてたらさ……また、どこかで転校したあの子に会えるような気がするんだ」
ぽつりと漏らされた蓮の本音。恋愛に関してはウルトラチキンな彼のピュアで切ない横顔を、ミャアは黄金色の大きな瞳でじっと見つめていた。
そして、ミャアはそっと前足を伸ばすと、蓮が握りしめていたボイスレコーダーの上にちょんと足を重ねた。
「……ミャア君?」
「にゃあ」
まるで「お前のその頑固な正義感も、不器用な想いも、ちゃんと届いてるぞ」と励ますかのような温かな感触。
「……くっ! 法律の条文にも記載されていない、この胸の奥が熱くなる感覚……! これが俗に言う『癒やし』という名の不可抗力か……!」
蓮は真っ赤になりながらメガネを拭き直し、照れ隠しに叫んだ。
「よし、翼! 赤木たちの改心状況のモニタリング調査を再開するぞ! ミャア君、君も『いじめバスターズ名誉顧問』として同行を許可する!」
「はいはい、名誉顧問ね。マックのポテト奢ってくれたら俺も頑張るよ」
「ポテトのSまでなら認める!」
二人の賑やかなやり取りを、ミャアは満足そうに目を細めて見守っていた。
放課後の校門を出たところで、ミャアは二人に向かって最後にもう一度「ミャア」と愛らしく鳴き、夕暮れの路地裏へと軽やかに走り去っていった。
「行っちゃったな……」
「ああ。だが、またどこかで法廷の……いや、どこかの街角で会える気がするよ」
夕日の中、足を並べて歩く蓮と翼。
法律という武器と、心の中に抱いた切ない初恋の約束。
そして、一瞬だけ舞い降りた不思議な三毛猫ミャアの温もりを胸に、いじめバスターズの戦いは、これからも高らかに続いていくのだった。
この物語は、日本のいじめ社会を観ていて情けないと思って作ってみました。
まあ、いじめ現場では中々助けられないのが現状ですが。
1番情けなく思ったのは、腰抜け男どもが意地悪女性たちにあごで使われていることです。
だから、蓮と翼、ふたりの男子高校生バディーをいじめバスターズにして、学校や地域のいじめに挑むことにさせました。




