11 イギリスーさすらいのロザリーーでの旅
ーー三毛猫は、日本では昔から庶民に親しまれてきたおなじみの猫だ。
だが実は、世界的に見れば非常に珍しく、時に幸運をもたらす招き猫として珍重される存在でもある。
これは、そんな一匹の三毛猫「ミャア」が、とあるWEB小説家(作者)の生み出す物語の世界を気ままに旅していく、少し不思議な物語。
ときに悩める中学生たちの公園に現れ、
ときに時空を超えた名探偵の街角に佇み、
ときに潮風かおる港町で子どもたちと戯れ、
ときに夕暮れのストリートピアノで未来への希望の音色に耳を傾け、
ときにシロツメクサ咲くグラウンドや夕暮れの渡り廊下で甘酸っぱい絆を見届け——
なにしろ、この三毛猫ミャアの旅はとどまることを知らない。
国も時代も飛び出し、時空さえも超えて——遥か異国の雪深き下町の路地裏にまで至ってしまうのだから——。
雪の舞い散る下町の片隅。
煤煙と魚の生臭さ、そして人々の逞しい生活の熱気が交差する路地裏で、ロザリー、ジム、サムの3人は身を寄せ合って強く抱きしめ合っていた。
「……遅くなって、ごめんなさい。……ただいま、ジム。ただいま、サム」
「……ロザリー! あんた、馬鹿かよ……! どこ行ってたんだよ!」
「お姉ちゃん! お姉ちゃん、おかえりなさい!」
溢れ出る涙と温かな熱気。屋敷の豪華な部屋よりもずっと満ち足りた「帰る場所」を取り戻したその瞬間、木箱の陰から「ふわり」と小さな影が舞い降りた。
「……にゃあ」
冷たく湿った潮風をすり抜けて響く、低くも透き通った愛らしい鳴き声。
「……ん? なんだ……?」
ジムが涙で濡れた袖でゴシゴシと目を拭い、声を上げた。
そこにいたのは、真っ白な降雪の中に浮き立つような、鮮やかな白地に黒と茶色の斑模様を持った一匹の猫だった。鍵型に曲がった短い尾をパタパタと振り、黄金色の大きな瞳で3人をじっと見つめている。
「猫……? こんな寒い雪の路地裏に……?」
ロザリーが目を丸くして身をかがめると、三毛猫は積もった雪をしゃりしゃりと踏みしめながらトコトコと歩み寄ってきた。そして、ロザリーのスカートの裾をすり抜けて、泣じゃくっている幼いサムの凍えた足元へと向かった。
「……あたたかい……」
サムが驚いて小さな手を伸ばすと、三毛猫はその手元に自分の頭を「ごん」と深く押し当てた。温かな毛並みの感触が、凍え切っていたサムの指先に伝わる。
「ゴロゴロ……ゴロゴロ……」
凍てつく下町の冷気を溶かすような、深い喉鳴り。
「お姉ちゃん、この猫ちゃん、僕たちのところに来てくれたの……?」
「ええ、サム。すごく不思議で……とっても綺麗な毛並みの猫ちゃんね」
ロザリーが優しい眼差しで微笑むと、ジムはおそるおそる膝をつき、ぶっきらぼうに猫の頭へ手を伸ばした。
「おい、お前……どっから入ってきたんだよ。こんな汚い下町、お前みたいな綺麗な猫が来るような場所じゃねえぞ」
「にゃあ」
三毛猫はジムの言葉を「なに言ってるんだ」と笑うように短く否定すると、そのままジムの手に鼻先をちょんと押し当てた。その触感に、ジムの頑なだった心がフッと緩む。
「お名前、なんていうの?」
ロザリーが目線を合わせて尋ねると、三毛猫は寒さを吹き飛ばすように誇らしげに胸を張り、はっきりと鳴いた。
「ミャア」
「えっ……? 今、『ミャア』って……?」
ジムが驚いて顔を覗き込む。
「ミャア」
もう一度、自分の名前を主張するようにしっかりと鳴く三毛猫。
「あはは! ミャアちゃんだ! お姉ちゃん、ミャアちゃんだよ!」
サムが久々に弾けるような笑顔を見せ、ミャアをぎゅっと抱きしめた。ミャアも嫌がることなく、サムの腕の中で心地よさそうに身を委ねている。
ロザリーは胸の奥がキュッと熱くなるのを感じた。
「ジム……見て。ミャアちゃんもね、私たちの『帰る場所』を祝福しに来てくれたのよ」
「……そうかもな。ロザリーがいなくなってから、ずっとこの路地は暗くて寒かったけど……ロザリーが戻ってきて、こんな不思議な猫までやってきてさ。なんだか一気にあったかくなった気がするよ」
ジムは恥ずかしそうに鼻をかみ、そっぽを向いたが、その目元には確かな温もりが宿っていた。
かつてロザリーが教え、ジムが哀しみの中で土になぞっていた「A」の文字。
その土の上の文字の隣に、ミャアはちょこんと前足を置き、まるで「よく頑張ったね」と褒めるように足跡を残した。
「ふふ、ミャアちゃんも文字のお勉強に参加する?」
ロザリーがそっとミャアの背中を撫でると、ミャアは「ゴロゴロ……」と喉を鳴らし、3人の顔を愛おしそうに見つめた。
黄金も真珠もないけれど、ここには何ものにも代えがたい「愛」という名の光がある。
数々の物語で傷ついた人々の心に寄り添ってきたミャアにとっても、この寒空の下町の路地裏は、何よりも温かく尊い場所に見えた。
「にゃあ」
ひとしきり3人と温もりを分かち合うと、ミャアはスッと立ち上がり、積み上がった木箱の上へとひらりと飛び乗った。
「あれ……? ミャアちゃん、行っちゃうの?」
サムが寂しそうに手を伸ばすと、ミャアは木箱の上から振り返り、鍵型の尻尾をフリフリと振りかえしてみせた。
「そっか。お前も『さすらいの旅人』なんだな」
ジムが悟ったように優しく微笑む。
「ミャアちゃん、ありがとう。素敵な出会いをくれたこと、忘れないわ」
ロザリーが感謝を込めて微笑むと、ミャアは最後にもう一度「ミャア」と短く愛らしく鳴き、雪の舞う屋根の上へと静かに跳び移っていった。
「……行っちゃったね、お姉ちゃん」
「ええ。でもね、サム、ジム。私たちはもう一人じゃないわ」
ロザリーはふたりの手を強く握りしめた。
降り積もる雪の中、3人の胸には消えることのない黄金のぬくもりと、一匹の三毛猫が残していった小さな愛の足跡が、しっかりと刻まれていた。
雪降る街の屋根を渡り、風とともに走り抜ける三毛猫ミャア。
WEB小説の作者が紡ぎ出す幾つもの世界を巡り、数え切れないほどの絆や愛おしい瞬間を見届けてきた旅。
ビル街の公園、時空を超えたロンドン、潮風の美浜村、夕暮れのストリートピアノ、南米アンデスの山並み、シロツメクサのグラウンド、朝の病室、夕焼けの渡り廊下、そして雪の下町——。
ミャアは世界の境界をひらりと飛び越え、また新しい物語のページが開かれるのを待っている。
「にゃーん」
鍵型の尻尾をゆらゆらと揺らしながら、旅する三毛猫ミャアの大冒険は、これからも作者の生み出す無限の世界とともに、どこまでも続いていくのだった。
さすらいのロザリーは、高校生の時に私が初めて原稿用紙100枚以上書いた小説です。未完成なのですが、高校生の当時は100枚以上も書けただけで満足でした。
まあ、後から読み返してみたら、状況描写ばかりで心理描写がなっていなかったのですが…
未完成のまま42年間放置して、AIを使うようになったので完成させた作品です。
AIが小説を書く時代ってすごいですよね。
さすらいのロザリーは、初めての小説なので、宝島や名作アニメの寄せ集めのような小説です。
でも、名作アニメの世界観は出せていると思います。




