↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三毛猫ミャアの物語旅ー「正解のシナリオを破り捨てたら」から、ホームズ未来からの依頼人(略称)までー  作者: 村松希美


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/18

9 星は昴ーそれでも僕は彼女を守りたかったーの旅




淡い朝の光が差し込む病室。激しい夜の終わりを噛み締め、静かに同じ方向を見つめる鈴(りん)と昴(すばる)。


その穏やかで温かい沈黙の隙間へ、ふわりと小さな足音が忍び寄ってきた。

「……みゃあ」

透き通った小さな鈴(すず)のような鳴き声。


「……ん?」

窓の外を眺めていた昴が視線を落とすと、病室のカーテンの陰から一匹の三毛猫が姿を現した。

白地に黒と鮮やかな茶色の斑模様。鍵型に曲がった短い尻尾をパタパタと振り、黄金色の大きな瞳でふたりを交互に見つめている。


「猫……? どこから入ってきたんだ。ここは4階だぞ」

昴が驚いて目を丸くすると、包帯の巻かれた手を窓枠に置いていた鈴が、ふふっと小さく微笑んだ。


「大丈夫だよ、昴。この子、怪しい猫じゃないよ」

「知ってるのか?」

「ううん、うっすら噂で聞いたことがあるの。事件を起こして心を閉ざした人たちの前に、どこからともなく現れる不思議な『旅する三毛猫』がいるって」


三毛猫はトコトコと二人の足元へ歩み寄ると、まず昴のジーンズの裾(すそ)に「ごん」と頭を押し当ててきた。


「うおっ……急になんだよ」

昴が戸惑いながらも屈(かが)み込むと、三毛猫はそのまま鈴の足元へすり寄り、手元の包帯を愛おしそうに前足でちょんちょんと触れた。


「あたたかい……」

鈴がゆっくり腰を落とし、小さな手を伸ばすと、三毛猫は待っていましたとばかりに指先に頭を摺り寄せてきた。


「ゴロゴロ……ゴロゴロ……」

深くて心地よい喉鳴りが、朝の静かな病室に響きわたる。


「君、お名前はなんていうの?」

鈴が優しく問いかけると、三毛猫は胸を張り、誇らしげに鳴いた。


「ミャア」

「ミャアちゃん……って言うの? 可愛いお名前」

「自分で言ったのか……? 変わった猫だな」

昴もおそるおそる手を伸ばし、ミャアの背中を撫でてやる。ミャアは目を細め、二人の手の中で気持ちよさそうに身を委(ゆだ)ねた。


昨夜までの命がけの戦い、極限の緊張、そして互いを守り抜いた胸の熱さ。

重苦しかった出来事の余韻が、ミャアの柔らかい毛並みと体温を通して、すーっと穏やかな日常の温度へと溶けていく。


「ねえ、昴」

「ん?」

「ミャアちゃんもね、星と音の仲間かもしれないよ」

鈴がミャアの鍵しっぽを撫(な)でながら微笑む。


「どういう意味だ?」

「だって、星みたいにどこからか現れて、鈴みたいな綺麗な声で鳴くでしょ? 引き合って、ここにやってきたんだよ」

昴は少し照れたように視線を逸らした。


「……そうかもな。変なタイミングで現れるやつだけど、なんだか心が落ち着く」

「ふふ、でしょ? 私ね、ずっと一人で抱え込んで『使う側』でいなきゃって思ってたの。でも、助けられて、守られて……こうしてミャアちゃんを撫でてる今、本当に生きてて良かったなって思う」

鈴の瞳に小さな涙が浮かぶ。


「……これからは、一人で抱え込むなよ。俺も……守る怖さを知りながら、お前の隣にいるから」

昴がまっすぐな瞳で伝えると、鈴は涙を拭い、今日一番の笑顔を見せた。


「うん。約束ね、昴」

「にゃあ」

ふたりの会話に同意するように、ミャアが短く力強く鳴いた。


ふたりの絆が深まり、新しい日常への一歩を踏み出したことを確かめると、ミャアはスッと立ち上がり、窓辺へと跳び乗った。


「あ……ミャアちゃん、行っちゃうの?」

鈴が声をかけると、ミャアは振り返り、鍵型の尻尾をフリフリと揺らした。


「そっか。お前も次の場所へ行くんだな」

昴が静かに頷く。


「ミャアちゃん、助けてくれてありがとう。気をつけてね」

鈴が手を振ると、ミャアは「ミャー」と優しく一声残し、開いていた窓の隙間から、朝日が眩しく輝く外の世界へとしなやかに飛び出していった。



風がふっと吹き抜け、カーテンが柔らかく揺れる。


「……行ったな」

「うん。でも、きっとどこかで誰かを救ってるね」

窓辺に並んで立つふたり。

遠くで鳥の声が聞こえ、街が完全に目を覚ましていく。


星は昴で、音(おと)は鈴。

そして、ふたりを結びつけた一瞬の風のような三毛猫ミャア。


形を変えた新しい日常の中で、ふたりはしっかりと手を重ね合い、まばゆい朝の光の中へと歩み出していくのだった。



病院の屋根を飛び越え、朝の街を滑るように走る三毛猫ミャア。


公園のベンチでWEB小説を書く中学生から始まり、時空を超えた名探偵の街角、潮風そよぐ美浜村、ストリートピアノの響くモール、シロツメクサのグラウンド、そして傷つきながらも守り合ったふたりの病室へ。



幾つもの物語を旅してきたミャアは、一軒の子ども食堂の前で足を止めた。


次は、女子中学生の思い違いで、素敵なクラスの男子の良さが中々分からなかったという物語

ーキライの向こう側…での旅です。









星は昴ーそれでも僕は彼女を守りたかったーもストーカーに鈴が狙われる物語です。

そのストーカーは見るからに悪者ならまだ分かりやすいですが、周囲を味方につけるストーカーなのですよ

だから、厄介なのです

鈴も生活に追われて幼い双子の弟たちもいるので、時間が自由になる安直な稼ぎ方を選んだためにストーカーに目をつけられるというとんでもない目に遭います。


まあ、これはフィクションですが。


一見平和そうに見える社会でも、どこに落とし穴があるか分からないです。


日常的な学校や職場でもです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。