第2話 奪うモノ
気がつくと、私は真っ白な空間の片隅に倒れていた。
周囲は、もこもことした雲のようなものに埋め尽くされている。
どうやら、その隙間にすっぽりと挟まってしまったらしい。
……蓮斗様!
弾かれたように顔を上げる。
いた。
少し離れた場所に、蓮斗様が立っている。
その目の前には、キラキラと眩く輝く何か。
人のようにも見えない。
形すら曖昧な光の塊。
どうやら蓮斗様と話をしているようだった。
声は聞こえない。
蓮斗様も、雲の隙間に埋もれている私には気付いていない。
どうしよう。
早く行かなきゃ。
そう焦った、その時だった。
蓮斗様の身体が淡く光り始める。
え……?
嘘。
やめて。
待って。
光は次第に強さを増し、その姿を少しずつ飲み込んでいく。
「嫌っ……!」
次の瞬間。
蓮斗様は、跡形もなく消えてしまった。
頭が真っ白になる。
気付けば私は雲をかき分け、夢中で駆け出していた。
「返してッ!!」
考えるより先に身体が動く。
私は光る何かへ飛びつき、そのまま思い切り掴みかかった。
「蓮斗様をどこへやったの!」
光は激しく明滅した。
まるで――
『捕まえられた』こと自体が、予想外だったとでもいうように。
『ぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
耳をつんざくような悲鳴が、真っ白な空間に響き渡る。
「うるさい!」
私は逃がすものかと両腕に力を込めた。
「質問に答えなさい! 蓮斗様をどこへやったの!」
答えを聞くまでは絶対に離さない。
たとえ、この腕がもげようとも。
『い、嫌だ! あり得ぬ! なぜ人の子がここにいる!? しかも、なぜ我に干渉できるのだ!?』
「そんなことどうでもいい!」
私はさらに締め上げる。
「蓮斗様を返せーーーーーーっ!!」
その瞬間。
ビシィッ!
私の怒声に弾かれるように、光の身体がバンッ、バンッと小さく爆ぜた。
『ぎゃあっ!? 痛い! 痛い痛い痛いっ!!』
光が激しく明滅する。
『なんだ、この人の子は! 精神力が異常すぎるだろう!!』
「知るか!」
『離せぇぇぇ!!』
「嫌!」
『離せと言っておろう!!』
「蓮斗様を返せ!」
『だから、まず離せぇぇぇぇ!!』
光る存在は必死にもがき、身体をくねらせ、私を振りほどこうと暴れ回る。
けれど、私はますます腕に力を込めた。
ようやく見つけた唯一の手掛かりだ。
ここで離すなんて、あり得ない。




