表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Guilty 〜たとえ世界が私を有罪だと言っても私は私の神を崇め奉る〜  作者: 小兎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/17

第12話 従者の仕事

「おはようございます! 蓮斗様、朝ですよ〜」


 今日も元気よく扉を開ける。


 実は、蓮斗様のお世話は私一人でするようになっていた。


 あの日、蓮斗様のお部屋へ結界を張ってメイドたちを部屋へ入れなくしたのだ。


 最初は結界を解除しようとしていたみたいだけど、びくともしなかったらしい。


 なので、


「では私がやります!」


 と名乗り出たら、そのまま任されることになった。


 うん。


 蓮斗様のお役に立てるなら、それがいい。



実は、蓮斗様は朝が弱い。


 天蓋のカーテンを開け、部屋の窓のカーテンも開く。


 朝日が部屋いっぱいに差し込んだ。


 その光を浴びた蓮斗様のご尊顔は、もう神々しくて尊い。


 はぁ……。


 これだけで三年は寿命が延びます。


 眩しさに気付いた蓮斗様は、お布団の中へもぞもぞと潜り込んでいかれる。


 頭のてっぺんだけが、ちょこん。


 ……最上級に愛らしい。


 はぁ〜、幸せ〜。


 しばらくすると、蓮斗様はちゃんとご自分で起きられる。


 ただ、まだ眠いのか、お目目の焦点が合っていない。


 ぼーっとしたままベッドの上に座っていらっしゃる。


 尊い。


 私は寝ぼけた蓮斗様を、じっくり、しっかり堪能させていただく。


 ありがとうございます。


蓮斗様は小さくあくびをひとつ。


 ようやく目が覚めたのか、私を見て柔らかく微笑まれた。


「おはよう」


 ……。


 …………。


 蓮斗様の朝一番の「おはよう」をGETしました。


 最高です。


 どこにお布施をお支払いしたらいいのでしょう。


 私が初めて朝のお世話をした日は、それはもう大騒ぎだった。


「え!? なんで君が!?」


 と、蓮斗様は慌てふためいていらっしゃった。


 でも、それも三日ほど。


 今ではすっかり慣れてしまわれたようだ。


 私があまりにも堂々と従者をしているからでしょうか?


蓮斗様がお目覚めになると、バスルームへ向かわれる。


 私はお着替えをご用意して後をついて行く。


 そして追い出される。


 ここまでが朝のデフォルトである。


 蓮斗様は「一人で大丈夫だから」と毎朝おっしゃるのだけど、私は従者なので。


 ちゃんとお部屋の前で待機する。


 しばらくすると、湯気をまとった蓮斗様がお戻りになる。


 私はタオルを受け取り、御髪を乾かして整えさせていただく。


 こちらも最初は抵抗されていた。


 でも、この世界にはドライヤーなんて便利な物はない。


 濡れたままでは風邪を召されるかもしれない。


 なので、私が僭越ながら魔法でお手伝いさせていただいている。


 そして、ブラシを通した後は一本も残さず回収し保管させていただいております。


 この世界には【呪い】という術がある。


 その触媒として最も使われるのが、髪の毛だ。


 メイドたちをお部屋へ入れたくない理由も、それだ。


もっとも。


 以前、蓮斗様へ【呪い】を送ってきた者がいたけれど。


 あれは【十倍返し呪詛返し】で丁重にお返しした。


 それ以来は静かなものである。



その後は朝食である。


 朝食は、既に私が厨房でお作りしたものをお部屋へご用意させていただいております。


 こちらへ来た当初は酷いものだった。


 塩っぱい。


 脂がギトギト。


 旨味がない。


 肉は固い。


 とても蓮斗様のお口にお入れできるようなものではなかった。


 それでも蓮斗様は、


「瘴気で食べ物が育たなくなっているって王様が言っていたから、贅沢言っちゃダメだよね」


 と、おっしゃっていた。


 なんてお優しいのだろう。


 でも私は、同じ食材を使うのなら、もう少し何とかなるだろうと思って厨房へ向かった。


 そこで見たものに、思わず目を疑った。


 あろうことか、厨房の人間がとても豪勢な賄いを食ってやがった。


 「勇者様予算」を使い込んでやがったのだ。


 言語道断である。


 蓮斗様がおいでくださるだけで、本来ならお布施を納めなければならない立場にありながら、そのお食事を横取りするなど万死に値する。


 厨房の人間には、それが理解できるまで教育的指導を行った。


 何度か心臓が止まったようだったけれど、ちゃんと蘇生させたので問題ない。


 その後、私が蓮斗様のお食事をお作りする栄誉を賜った。


 あちらの世界で、蓮斗様の祭壇へ朝な夕なにお食事をお供えしていたことが、まさかこんなところで役に立つとは思わなかった。



私が従者服を着て蓮斗様のお世話を始めた頃のことだ。

『勇者宮』を取り仕切る侍女頭に呼び止められた。


「いくら同じ勇者様とはいえ、女性が男性勇者様のお世話をするなど前代未聞でございます。礼節がどうの、体面がどうの……」


 なんだか色々と言っていた。


 ガタガタうるさい。


 要するに、見た目が女だから文句を言われるのだろう。


「なら、これでいいですね」


 私は腰の短剣を抜き、その場で長かった髪をばっさりと切り落とした。


 床へ落ちる黒髪。


 侍女頭は口を開けたまま固まっていた。


「これで文句はありませんよね?」


 それでも細かいことを言われるのは面倒だった。


 なので、その時切り落とした髪を触媒として使った。エコである。リサイクルである。


 勇者宮に仕える人間全員へ、【隷属】。


 これで余計な口出しをする者はいなくなった。


 以後、皆とても仕事熱心で協力的である。


 実に良いことだ。


ただし。私の髪が短くなった事で、蓮斗様に多大なご心配をお掛けしてしまった。


 これは深く反省した。


 猛省する次第であった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ