ep37:孤児院訪問
エトワール国立孤児院。
ゲームのシナリオとは異なり、今もルナが暮らしている場所。
ルナは今も聖女の力を隠しながら、普通の女の子のふりを続けている。
侯爵家の馬車は孤児院の門前で停まり、私はアストルにエスコートしてもらいながら外に出た。
「ようこそ、アストル様。お久しぶりです、カレン様」
孤児院の院長やスタッフだけでなく、子供たちも一緒に正門前で出迎えてくれた。
私が前回ここに来たのは6歳の子供の頃だけど、院長たちはコロッケを差し入れた貴族の少女として覚えてくれていたの。
コロッケはこの世界には今もまだ広まってないから、私のオリジナル料理だと誤解されてるみたい。
あの頃の子供たちはもう成人して働きに出ていて、もうここにはいなかった。
「アストル様、カレン様、訪問ありがとうございます」
「どうぞごゆっくり見学していって下さいね」
ルナとアランが、微笑んで言う。
二人は今も孤児院に住んでいる。
十八歳になっている二人は、冒険者として活動する一方で、スタッフとして孤児院に居住しているらしい。
ルナは王城の調理場手伝いもしているみたいだし、ちょっと働き過ぎじゃない?
でも顔色は良いし、楽しそうな笑顔だから平気なのかもしれないね。
「手土産にサンドイッチを作ってきましたの。どうぞみなさんでお召し上がりになって」
私が侍女に目配せすると、彼女は頷いて抱えていたバスケットを院長に差し出した。
バスケットの中には、タマゴサンド、ハムサンド、カツサンド、コロッケサンドがたくさん入っている。
「ありがとうございます!」
院長とスタッフたちが、嬉しそうに頭を下げる。
子供たちは興味津々で、バスケットに視線が集まった。
「アストル様とカレン様に感謝して、みんなで頂きましょう」
「アストル様、カレン様、ありがとうございます!」
みんなで孤児院の食堂に移動した後、清潔なハンカチで包んだサンドイッチが配られた。
年下から順に並ぶ子供たちは、元気な声でお礼を言って受け取る。
それぞれの席に着くと、子供たちは目を輝かせながら包みを開けた。
「ハンカチもプレゼントだから、食べた後は洗濯して使うといいよ」
「取り合いにならないように、四種類を人数分揃えておいたわ。あとは好みで取りかえっこしてね」
「「「はぁい!」」」
アストルと私の言葉に、元気な返事が返ってくる。
ルナが自分の分の包みを大切そうに両手で持ち、コッソリ涙目でこちらに微笑みかけてきた。
私とアストルも、孤児院スタッフや子供たちがサンドイッチに夢中になっている間に微笑み返した。
ルナも私たちも、お互いに相手の正体には気づいている。
けれど、孤児院スタッフや子供たちがいる場で前世の話をするわけにはいかない。
無難な話題だけで訪問を済ませて、帰ろうとしたところでルナが手紙を忍ばせてきた。
「今日はありがとうございました。またお会いできたら嬉しいです」
「はい、是非また」
そう言って、彼女は私と握手する際に手の中に折りたたんだ手紙を握らせたの。
私も彼女に合わせて笑顔で握手しながら、しっかりと手紙を握り込んだ。




