ep38:ルナの手紙
ルナがコッソリ手渡してきた手紙には、いろいろ意外なことが書いてあった。
『私たち以外にも転生者がいるよ。アルリシャ嬢って覚えてる? 彼女も転生者で、レイカと呼んでって言われたから、そう呼んでるの。魔法をしっかり鍛えているからスペック高いよ』
……アルリシャ嬢、ゲームのシナリオでは悪役令嬢カレンのとりまきの一人だったわね。
私がこの国で幼少期に社交デビューしていれば、知り合っていた筈。
水色のストレートロングヘアで、ちょっと気の強そうな顔立ちだったような。
ゲームの記憶はあるものの、私は王家や貴族家のお茶会を拒み続けていたから、会ったことはなかった。
『私、学園に通ってないし聖女の力は隠しているんだけど、何故か攻略対象全員と知り合っちゃった。そうそう、アルデバランはレイカと婚約しているんだよ』
……それは主人公故のシナリオ強制力かしら?
でも王太子レグルスや騎士団長の息子アルデバランとは、恋愛の兆しは感じられなかった。
転生者のレイカはアルデバラン推しかしら? それなら、そのまま結ばれて幸せになってほしいね。
『レグルスがセアンヴレを好き過ぎて、未だに婚約者が決まってないの。レグルスでエトワール王家が終わらないか心配になってきちゃった』
……セアンヴレって男性の料理人よね?
レグルスは彼から料理を習っているとは言っていたけど、そこまで?
『攻略対象たちが全然育たないから、私とレイカとアランで頑張るしかないなって思って、殴りの道に進んだわ』
……殴りルナね。
プレイヤーの間ではネタ扱いだったけど、美月ちゃんなら強くなりそうな気もするわ。
美月ちゃんはシナリオに逆らいつつも、自分が住む王都を守る準備はしていたのね。
『アランが予想以上にスペック高い。なんでゲームでは攻略対象じゃないの?』
……それはゲームの開発スタッフに聞いてね。
っていうか、ルナとの親密度が高いキャラに強化補正がかかる仕様が効いてるんじゃないの?
『華蓮ちゃんと陽太なら、魔族の襲来時期が近いことを知っていて王都に来てくれたんだよね? もしもそうなら、私たちに協力してもらってもいい?』
……勿論そのつもりで来たわ。
私も陽太くんも、美月ちゃんを手伝うことに躊躇なんかしないから。
ルナの手紙の最後は、転生者レイカも私たちに会いたがっているから、アルリシャ家のお茶会に来てほしいという誘いの言葉で締めくくられていた。
いろいろツッコミどころはあるけれど、今はそれどころじゃないものね。
私の次に手紙を読んだアストルも、ツッコミたそうな顔をしながら読み終えて、真面目な顔になった。
「お茶会は明日か。ちょうど予定が空いているな」
「私たちのスケジュールは王家と貴族家に伝えられているから、空いてる日を選んだのね」
「行くか」
「うん」
アルリシャ家の場所は、ミシオン家の御者なら知ってる筈。
私はお父様とお母様に行き先を告げて、馬車を出してもらうことにした。




