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悪役令嬢カレンのシナリオ改変、あれ?他にも転生者がいる??  作者: BIRD


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33/37

ep33:エトワール王国へ

 12年ぶりのエトワール王国。

 ソレイユ王国の第二王子の訪問に、王都ではあちこちに花飾りが付けられ、歓迎ムードになっていた。


「はじめまして。ようこそ、アストル殿下」

「はじめまして、レグルス殿下。しばらくお世話になります」


 港で出迎えてくれたのは、エトワール王太子のレグルス殿下。

 ゲームで見慣れた彼とは、何か雰囲気が違うような?

 それに、何故かバニラエッセンスの香りがする。


「ミシオン嬢とも、会うのは初めてだね」

「はい。私は社交デビュー前に留学しましたので」


 レグルスは穏やかな笑みを浮かべて、私にも話しかけてくる。

 その微笑みも、ゲームとは違う。

 シナリオ通りであれば、彼は冷ややかな目を向けて婚約破棄を言い渡していた筈。


 ゲームではレグルスとカレンが初めて会うのは幼少期で、王家主催のお茶会の場という設定だった。

 私はエトワールでの全ての茶会やパーティを欠席していたので、彼に会ったことは無い。


「では、そろそろ行きましょうか」


 レグルスに促されて、私たちはエトワール王家の紋章つき馬車に乗り込む。

 私は、エトワール城へ行くのも今回が初めてだった。



 ◇◆◇◆◇



 歓迎パーティが始まった。

 テーブルに並べられたビュッフェスタイルの料理を見たとき、私はハッとした。

 陽太くんも同じことに気づいたのか、驚いた顔で料理を見つめている。


「菊花かぶ……」


 陽太くんが呟く声が聞こえたのは、隣にいた私だけかな。

 小鉢に入れられてテーブルに並ぶのは、菊の花の形に飾り切りされた白い根菜。

 花の中央には、小口切りされた唐辛子が一つまみ乗っていた。


(この切り方、美月ちゃんだ)


 私も陽太くんも、すぐに分かった。

 美月ちゃんの菊花かぶは、一番外側をちょっと幅広にして、広げるように仕上げる。

 テーブルにあるのは、それと同じ切り方だった。


「ルナという料理人が手掛ける【キッカカブ】ですよ」


 私たちが菊花かぶをじっと見つめていることに気づいて、レグルスが歩み寄ってくる。


 ちょっと待って。

 今、「ルナ」って言った?


「美しいでしょう? 私も練習しているのだけど、なかなかこうはいきません」


 愛でるように菊花かぶを見つめて、レグルスは語る。


 切り方が美しいのは、分かる。

 それを王太子が練習する意味が分からない。


「レグルス殿下は、料理を嗜まれるのですか?」


 陽太くんが訊く。

 彼も私と同じ疑問を抱いたのね。


「ええ、私が作るのはスイーツが主ですが」


 そう答えるレグルスに、護衛騎士の青年がクッキーを盛った皿をそっと手渡す。

 レグルスは受け取った皿をこちらに見せて微笑む。

 それはまるで、事前に打ち合わせていたかのような連携だった。


「どうぞ、召し上がってみて下さい。私とアルデバランが作った菓子です」


 なんとなくドヤ顔っぽい笑みを浮かべて、レグルスは私たちに菓子を盛った皿を差し出す。


 レグルスってスイーツ男子だった?

 ゲームでは、お菓子を作るエピソードなんて無かったけど……。


「ありがとう。いただきます」


 困惑しながら、陽太くんが丸い形のクッキーを皿から取って口に運ぶ。

 私も四角い形のクッキーをつまんでみた。


 それは、バターをたっぷり使った、サクサクで口に入るとほろりとほどける食感のクッキーだった。

 砂糖の量がちょうどよく、甘じょっばい風味を出す塩気もいい。


 そのクッキーを再現することは、私なら可能だけれど。

 驚くところは、そこじゃない。

 これを「王族」と「騎士」が作ったというのが、驚きだった。

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