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悪役令嬢カレンのシナリオ改変、あれ?他にも転生者がいる??  作者: BIRD


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24/38

ep24:アストル7歳の誕生日

 庭園の白い丸テーブルに、並べられた料理の数々。

 私が作ったホワイトグラタンパイも、そこに並べられた。

 料理を全て並べ終えて準備が整ったところで、本日の主役アストルが侍女の報せを受けてパーティ会場に現れる。


「アストル、誕生日おめでとう。今日まで病気も無く健やかに育ってくれて嬉しいわ」

「ありがとうございます」


 会場に着いたアストルに、最初に話しかけるのは王妃様。

 アストルが応えると、みんな一斉に拍手した。

 私はドキドキしながら拍手に加わり、アストルがホワイトグラタンパイを見る時を待った。


 アストルが、花で飾られた白い椅子に座る。

 彼はテーブルに目を向けた途端、何かに驚いたように目を丸くした。


「アストル、誕生日おめでとう。カレンが珍しい料理を作ってくれたぞ」


 陛下が声をかける。

 アストルはテーブルを見つめて呆然としているみたい。

 彼の視線の先にあるのは、私が作ったホワイトグラタンパイだった。


(……驚いてる……よね? ホワイトグラタンパイが珍しいから? ……それとも……)


 私はエプロンドレス姿で料理人たちの列に並び、アストルに微笑みを向ける。

 エプロンの前で組んだ両手に、思わず力がこもった。


「味はこの者たちが保証しますわ。どうぞ安心してお召し上がりになって」

「ありがとう。いただくよ」


 動揺を隠して、私はカレンらしく言う。

 アストルが笑顔で応えてくれた。


 王族の皆さんと共に、私も自分の席に着く。

 テーブルの料理に食べる順番は無い。

 好きな物を好きな順番で食べられる。

 アストルが最初に食べたのは、ホワイトグラタンパイだった。


 スプーンを手に取り、サクサクのパイ生地をつついて穴を開ける。

 下から現れたのは、とろけるチーズに覆われたグラタン。

 アストルは崩したパイ生地ごとスプーンで掬って口に運び、味わいながら飲み込む。

 その直後、彼の感情が溢れ出た。


「アストル? どうしたの?」


 隣の席から、アレクサンドル様が問いかける。

 それに答える余裕は無い様子で、アストルは泣きながらホワイトグラタンパイを食べている。

 彼は、スプーンで掬った星型ニンジンを見つめて涙を流しながら微笑むと、美味しそうにパクッと一口で食べた。


(……ニンジン、食べてる……!)


 映画のアストルはニンジン嫌いだったけど、この世界の彼は違う。

 大事に味わうように、ニンジンを噛みしめている。

 泣きながらも、一口一口しっかりと味わって食べている。

 私はエプロンの裾を握りしめながら、必死に冷静さを保っていた。

 パイ生地もグラタンも残さず綺麗に食べ切ると、アストルは私を見つめて涙を零しながら微笑んだ。


「ありがとう、華蓮ちゃん」


 アストルの言葉が、私の心の防波堤を決壊させた。

 私の名前の呼び方が、昨日までの彼と違う。

 前世の幼馴染が私を呼ぶ声が、心の中で蘇る。

 感情を抑えきれなくなり、私の両目から次々に涙が溢れ出した。


(……陽太くんだ……!)


 ずっと逢いたかった。

 一緒に生きて、同じ時を過ごしたかった。

 想いを告げる前に逝ってしまった、私の大切な人。


(……ここにいたのね……)


 私も頬を伝う涙を拭きもせず、流したままアストルに微笑み返す。

 もう、周囲の目を気にする余裕は無かった。


「え? え? 二人ともどうしたの?!」


 アレクサンドル様がおろおろして聞く。

 私まで泣き出してしまったから、周囲の人々がビックリしている。

 けれど、私もアストルも答えられなかった。

 泉のように湧き出る涙を、止められない。



 映画とは異なる未来へ進み続けるソレイユ王国。

 私は、そこに転生者がいる予感がしていた。


 今からちょうど2年前、アストルの誕生日に起きる筈だったソレイユの悲劇。

 小さな島国全域を光の防壁で覆い、滅亡の危機から救ったのは、王妃様とアレクサンドル様。

 私は、二人のどちらか或いは両方が転生者かもしれないと思ってたの。


 ……でも、違ったのね。


 多分、王妃様とアレクサンドル様は、アストルの指示で防壁を張ったんだわ。


「ほ、ほら見てアストル、リンゴがウサギの形をしているわ」

「凄いねカレン、こんな切り方は初めて見たよ」


 なんとか泣き止ませようとして、王妃様がフルーツ盛りのリンゴを小皿に取って差し出す。

 アレクサンドル様も小皿に取ったリンゴを手に微笑んで言う。


 王妃様もアレクサンドル様も、ウサギリンゴを知らなかった。

 日本人なら、大体の人は知っている初歩の飾り切りなのに。

 私は、二人が少なくとも日本人ではないことに気づいた。


「うん、華蓮ちゃんの飾り切りは綺麗でかわいいね」


 アストルが泣き笑いを浮かべて私を見る。

 その口調は普段の彼とは違って、陽太くんそっくりだった。


「褒めても、もう何も出ないよ」


 応える私の口調も、懐かしいあの頃に還っていく。

 私たちはやっと、互いを見つけることができた。 

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