ep22:思い出のホワイトグラタンパイ
アストルのおまじないが効いたのかもしれない。
私は、前世で幸せだった頃の夢を見た。
◇◆◇◆◇
私は、日向食堂の料理が好きだった。
洋食も和食もどちらも美味しくて、大好きだった。
好き過ぎて、いつもその味を再現したいと思っていたの。
だから、日向のおじさんやおばさんが作るのを眺めたり、調理補助をさせてもらったりして料理を学んでいたわ。
おじさんもおばさんも丁寧に教えてくれて、私の料理の腕は確実に上がっていった。
「陽太くん、これ食べてみて」
「ありがとう! ちょうど腹減ってたんだ」
私の試作料理を最初に食べてくれるのは、いつも陽太くんだった。
おじさんやおばさんが、「腹ペコ陽太に食べさせてやりな」と言ってたから。
上手にできたら、まず陽太くんにあげた。
陽太くんはいつも気持ちいい食べっぷりで、試作料理を完食してくれた。
彼も好き嫌いなく何でも食べられる子で、日向食堂の料理が大好きだと言っていたわ。
その味を覚えようと練習を続ける私のことも、応援してくれた。
そんな彼が特に喜んで食べてくれた料理を、私は今でも覚えている。
ベーコンとチーズたっぷりの、ホワイトグラタンパイ。
深めのグラタン皿に角切りベーコンと玉葱とホワイトソースを入れて、とろけるチーズとコーンをパラパラと散らして、上からパイ生地を被せて蓋をする。
バターと小麦粉と牛乳から作るホワイトソースは、仕上げに生クリームを加えて濃厚に仕上げた。
それをオーブンで焼けば、サクッとしたパイ生地の下に、トローリとろけるチーズと、ベーコンやコーンが隠れたグラタンパイが出来上がる。
「これ美味い! サクサクでトローッとして最高!」
一口食べた途端、陽太くんは最高の笑顔を見せてくれた。
普段から明るくて笑顔が多いけど、そのときは特に嬉しそうに笑った。
その後はもう夢中でパクパク食べていたわ。
「なんかいい匂いがする~、あ! 陽太ずるい! 1人で全部食べた!」
陽太くんが満面の笑みで完食したところに美月ちゃんが来て、大騒ぎになったのはいい思い出。
以来、双子の誕生日に私はホワイトグラタンパイを作ってあげていた。
飾り切りを覚えてからは、花や星の形に切った人参を入れたりしていたわ。
二人とも楽しみにしていてくれて、食卓にグラタンパイを置くと拍手するくらいだった。
◇◆◇◆◇
翌朝、目を覚ました私は、また陽太くんを想って泣きそうになった。
楽しい夢も、二度と戻れない過去だと分かると悲しくなる。
陽太くんの笑顔がもう見られないことが辛い。
(ホワイトグラタンパイ、久しぶりに作ってみようかな……)
起き上がった私は、ベッドの上で少しボーッとしながら、そんなことを考えていた。




