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悪役令嬢カレンのシナリオ改変、あれ?他にも転生者がいる??  作者: BIRD


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ep21:美少年の笑顔は心臓によろしくない

「魔法が飛んでいくところが、全然見えなかったわ」


 私は驚きながら感想を述べた。

 アストルは一体どうやってこんな魔法を開発したの?


「速度はいいところまできてるんだけど、威力はまだ足りないなぁ」


 魔法が当たった岩は焦げ目がついているものの、穴は開いていない。

 アストルは、あの岩を貫通するくらいの威力が欲しいと言った。


「速度だけじゃなく、圧力も意識してみたらどうかしら?」

「圧力?」

「魔法の弾を、小さく強く押し出すイメージで」

「やってみよう」


 私はなんとなくの思いつきで言ってみた。

 この世界の魔法は、属性と魔力とイメージがなければ発動しない。

 アストルは指先に魔力を集め、圧縮した魔法の弾丸を発射した。

 今までは風を纏わせて高速で飛ばすイメージだったけど、私が言ったことを参考に、風を細く渦巻かせて、魔弾を後ろから押してみたらしい。

 魔弾はグンッと加速して、回転しながら岩を突き抜けた。

 岩には弾丸とほぼ同じサイズの穴が開いている。


「おぉ! 貫通した!」

「おめでとう!」

「ありがとう! カレンのアドバイスのおかげだ」

「?! や、役に立ててよかったわ」


 アストルは目標達成が嬉しかったんでしょうね。

 私の両手を握って、彼は最高の笑顔を見せた。

 私は自分の頬が熱くなるのを感じる。

 生アストルは、ゲームのスチル絵よりも百倍魅力的だったわ。


「……」

「あああアストル、ななな何か?」


 アストルが私の顔をじっと見つめてくる。

 だめよ。近い。近過ぎるわ。

 私は赤面して狼狽えてしまった。

 そんな私を見て、アストルはまた笑みを浮かべる。


「カレンって、かわいいね」

「そ、そんな笑顔で言われても……なにも……」


 その顔で、そんなこと言う?

 私にはアストルの方が美形で可愛く見えるんだけど。


(私、アストル推しじゃないのに……)


 心の中の呟きは、もしかしたら声に出しちゃってたかもしれない。

 幸いアストルには聞き取れなかったのか、キョトンとしていた。


 私は、美少年の笑顔は心臓によろしくないことを知ってしまった。

 アストルに凄く嬉しそうな笑顔を向けられて、あまりの尊さに心肺停止するところだったわ。

 異常な熱感が頭や顔に起きて、強烈な眩暈によって私は立っていられなくなった。


「カレン? 大丈夫か?」


 アストルはそう言って、私を横抱きにしたまま隠密と飛翔の魔法を使う。

 具合が悪いわけじゃないの。

 でも、何が原因かなんて恥ずかしくて言えない。

 アストルが私を抱えて部屋のテラスまで飛んでくると、手を触れていないのにガラス扉が静かに開いた。

 その現象を少し不思議に思いつつも、冷静な思考の状態ではない私にはどうして扉が開いたのか分からない。


「とりあえず、ベッドで横になった方がいいぞ」


 アストルが心配してくれるのが、申し訳ない。

 なんて言えばいいか、やっぱり思いつかない。

 ベッドに寝かされた私は、かけてもらった布団を両手で引っ張って顔半分隠れつつアストルを見つめた。

 お姫様抱っこで運ばれている間に、眩暈は治まっている。


「一応、状態異常解除の魔法は使ってみたんだが。兄上に治してもらった方がいいかも……」

「だ、大丈夫、もうなんともないわ」


 アレクサンドル様を呼ばれたら困るので、私は慌ててアストルの手を掴んで引き留めた。

 アストルは闇属性の【隠密】、風属性の【飛翔】を使いつつ、光属性の【状態異常解除】も使っていたみたい。

 顔の火照りや強い眩暈が移動中に治まったのは、所謂キュン死状態を解除されたってことね。

 なんの状態異常か分からないまま解除できるってことは、上位の【全異常解除】かしら。


「良かった」


 ホッとして微笑むアストルの顔に、また陽太くんの微笑みが重なる。

 どうしてこんなにも、彼と陽太くんが被るの?

 もしかして……でも、聞いてみる勇気はまだ無い。


「あとは眠れば元気になるから。アストルも寝た方がいいわ」

「分かった。おやすみカレン、良い夢を(フェドゥボーレーヴ)


 アストルは私の頭をそっと撫でて、おまじないの言葉を囁くと、部屋から出ていった。


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