表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
WABE ~すべてを失った少年が終末世界に抗い続ける物語~  作者: terakoya-8
訓練生編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/11

Fourth 特訓

 入江渓人はエレベーターに乗りこむ。

 目的地は…地下3階。

 

 ボタンを押す。

 銀色の鉄の扉が閉まる。


 次の瞬間、

 床が沈み始める。

 みるみる加速していく。


 臓物が浮き上がるような感覚。


 窓から見える景色。


 突然、

 時の流れが遅くなる。

  

 そして、止まる。

 空中にとどまる。


 __自分の影だけが、遅れて動いた。

 窓に近づく。


 次の瞬間、

 動き出す時間。


(なんだこれは......)



 窓から地面を見る。

 地面が迫ってくる。


 ”速い”。


 その時、窓から差す光が消える。

 人工的な光と入れ替わる。

 減速し、静止する。

 この間僅か数十秒、たったこれだけ。



 扉が開く。

 広がるのは無機質な空間。

 冷たい空気と人工的な照明。


 彼は無言で歩き出す。

 足音だけが廊下にこだまする。


 目的地は分かっている。

 黒い扉の前で足を止める。


 そして、

 迷わず手をかざす。



「認証完了」



 無機質な機械音声が廊下をこだまする。

 ロックは外れ、扉は開く。



「入江君、お帰り」

 風間俊介の声がする。



「食堂の飯は美味かったかい?」



「......美味しかったです」


 彼は短く答える。

 それは本音であった。

 あの空間だけはどこか”安心感”があった。




「まだまだ時間もあるし、試してみる?」

 西野愛梨が端末を持って来る。



「いきなりはきついんじゃないかな?」

 風間俊介はそう言う。



 入江渓人は無言で頷いた。


 ホログラムに自分の情報が表示される。

 装備品登録画面、防具:未登録、武器:未登録。


 防武器には剣型と銃型。

 防具は三種類、種類は豊富。


  

 彼は不思議と手が止まる。

 画面を見つめる。



 __ブレード。

 金色の回路が走る刃。

 これはただの武器じゃない。

 見た目がそう訴えかけてくる。



 訓練室に移動する。


 広い空間。

 無機質な床。

 人工的な照明。


 愛理が操作盤を動かす。

 ダミーがせりあがる。



「いつでもいけるよ」



 部活で何度も聞いたあの声。


 だが、安心はできない。むしろ空気は張りつめている。




 防具を試す


 軽量タイプ


 __軽い。

 何もつけていないみたいだ。



 通常タイプ


 __少し重たい。

 だが、安心感がある。



 重量タイプ


 __重い、動けない。

 地面に押し付けられる感覚を覚える。



「あっ!」



 バランスを崩す。

 すかさず俊英が支えに入る。

 防具を外した。




 武器を選ぶ 


 端末には適性診断の表示。

 少し間を置く。

 ボタンを押す。


 戦い方

 求める性能

 普段の行動


 質問が次々と降ってくる。直感で答え、さばいていく。

 時間はさほどかからなかった。



「結果」



 画面が切り替わる。



「あなたのおすすめ武器は軽量ブレード武器+遠距離武器」


 渓人はゆっくりと息を吐く。


「やっぱり......」


 どこか思い当たる節があった。




 ブレードを試す。


 サーベルを手に取る。

 軽い、楽に振れる。



 しかし…


 ダミーに斬りかかる。

 手ごたえが浅い。

 刃がうまく入っていかない。



「......違う」



 突きの構えをとる。

 ダミーに飛びかかる。


 __貫通


 悪くはなかった。


 でも、これじゃない。

 



 次に、チェイサー。

 少し重い。


 だが、

 しっくり来る。

 持っただけで分かった。


 「…これだ」



 振る。



 _ズンッ!

 衝撃が手に伝わり、全身へと広がっていく。



 ダミーは真っ二つに割れる。


 感触がいい。刃が入っていく。


 感覚は、確信へと変わった。



 「これにします。」

 即答した。迷いはなかった。




 銃を試す。 


 まずはウィザード。

 __重い。

 保持するどころか、持ち上げることもできない。


 論外だった。




 次にシャークDMR。

 __軽い。


 ストックを肩に当てる。

 頬をしっかりと乗せる。

 照準を合わせる。

 

 脇を絞め、体でしっかりと銃を抑える。



 引き金を引く。


 

 _バッ!

 レーザーが放たれる。

 反動を体で受け止める。


 ダミーに穴が開く。


 焦げたにおい。

 音が少しづつ消えていく。



「これなら…いける!」

 そう呟く。



「近距離と中遠距離のバランス型か、今後が楽しみだ。」

 風間が笑う。

 装備品が登録された。




 その後も渓人は武器を試し続ける。


 斬る。

 撃つ。

 動く。

 

 何度も何度も繰り返す。

 体に動きが染みついてくる



 だが、風間は彼を呼び止める。

「今の、もう一度見せてほしい」




 それに応じて斬りかかる。

 ダミーが割れる。



 すると…


 __パキン!

 硝子が砕けるような乾いた音。

 ブレードか砕ける。


 地面には


 ”結晶”。


 幸い、ケガはなかった。



「原因はわかるか?」

 風間の声



「…分からない。」

 渓人は首を横に振る



「斬ってない、叩きつけている。」

 鋭い指摘が刺さる。



「いいか」



 風間は鞘からブレードを抜く。

 刀身が黒く光る。


 __あの時の武器。



「刃を垂直に入れる。そして、”通す”んだ」



 渓人は意識を集中させる。

 観察する。

 

 息をゆっくりと吸う。

 同様に吐く。

 ブレードを振り上げる。


 動きに無駄がない。

 音を置き去りにする。


 黒い閃光が見える。



 ダミーは、滑るように切断されていた。



「…もう一度」



 渓人はブレードを構える。


 集中に入る。

 力を抜く。

 振る。


 

 __スッ。

 衝撃が消えた。


 その瞬間、

 遅くなる時間の流れ。


 周りの物が遅れてついてくる。


 

 「できた......」

 小さく呟く。



 繰り返す。

 何度も、

 何度も。


 何十回、

 何百回と。


 正しい動作を体に覚えさせる。


 だが、

 さっきの感覚。


 時が止まるようなあの感覚。

 それだけは再現できない。


 再現できれば、

 もっと速くなる。



 そんな確信があった。


 気づけば日はくれていた。



「良くなった。」



 風間は頷く。

 


「見違えた」



 肩を軽くたたかれる。

 その言葉は重くのしかかる。



「君に課題を出す。」



 風間の声。

 空気が変わる。



「ロボット型ダミーと戦ってもらう。」

 昨日の惨劇が頭をよぎる。



「どうやって“隙を作るか”考えてこい。」


 

 渓人は黙って頷く。




 部屋を出る。

 背後で扉が閉まる。



 その瞬間。



 中から、かすかに声が漏れた。


「......例の遺品は」

 西野の声。

 

 渓人の頭。

 痛みが走る。

 耳鳴りがする。



「どう扱いますか」

 言葉を選ぶような、わずかな躊躇。



「まだだ」

 風間の声は低い。



「今は、触れさせるべきじゃない」



 沈黙。

 短いはずなのに、妙に長く感じる。


「......彼には」

 再び、風間の声。



「__同じ道は歩ませない」

 それ以上は、聞こえなかった。



 時刻は18時、

 腹が減っていることに気づく

 しかし、頭の中はそれどころではない。


 ロボットと戦う動きをイメージする。

 斬る、避ける、入る、崩す。


 いや......


 斬る、避ける、離れる、狙い撃つ

 これでもいいかもしれない。


 無数の行動パターン。

 頭の中を駆け巡る。


 何度も何度も、

 シュミレーションをかさねていく。


 体は食堂へと向かっていた。


 しかし、彼の頭の中は既に戦場であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブクマ・ポイント評価お願いしまします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ