Twenty-Fourth 異常
「なんだあれは」
渓人は目の前に立つ見知らぬ機体を見つめる。
”HOPPER V1”の刻印が光る。
地面を蹴って、こちらに飛んでくる。
”来る”
咄嗟に地面を滑り、側面に照準を合わせる。
__バン!パチン!
銃声が響き、遅れてばねのはじける音が鳴り、右腕が落ちる。
そして、
__バシュン!
大きな銃声とともに、左腕も落ちる。
弾道の主は、川崎だ。
淡々とほかの機体にも照準を合わせ、撃ち抜いていく。
渓人は両腕の落ちた機体に飛び掛かり、腕を振る。
機体に刃が入った瞬間だった。
機体脚部のバネが伸び、機体ごと空へ飛ぶ。
後頭部のエンジンが火を噴いた。
(......こいつ)
渓人は機体に刃を通し、切り落とした。
機体は爆炎とともにはじけ、背後を炎で包む。
地面がだんだんと大きくなっていく。
「入江!これにつかまれ」
どこからともなく、チェーンのついたサーベルが飛んできた。
そのまま近くのビルに刺さり、チェーンが垂れ下がる。
手を伸ばして、チェーンを掴み、ジップラインのように下る。
両足で挟み込み、抑えてながら勢いを殺す。
摩擦とともに焦げ臭いにおいが鼻を刺した。
__ストン。
そんな軽い音とともに地面に降り立った。
「ありがとう」
それを聞いた川崎は再び照準器を覗き込んだ。
二本の斬撃が音速に達しドロイドを切り取っていく。
神風と風間は刀を振り続け、残骸を積み上げていく。
そんな時だった。
”HOPPER V1”の刻印が見える。
「見慣れない機体だ」
神風がつぶやく。
「私が見たのとは違う」
疑いの目が出来上がる。
「本当に私の求めている奴はわかってるんだな」
眉間にしわを寄せ、風間を見つめた。
「この機体は間違いなく”銀腕”が関わってる」
その回答に迷いはなかった。
「ドロイドを全部やれば、しびれを切らして現れるはずだ」
二人は再び刀を握り、構えを作った。
鋼鉄の機体が地面を蹴って飛んでくる。
二人は左右に散らばり、機体に刃をかざす。
刀が鞘に納まるとともに、左右の腕が同時に落ちる。
即座に刀を抜いて腕を振り、後頭部と脚部を落した。
「これで動けないな」
風間は機体に端末をかざし、ホログラムに触れる。
青白い光とともに粒子状になり、視界から消えた。
「生け捕りにした機体を送りました」
本部に連絡を取る。
「よくやった」
返事はそれだけだった。
「本部で解析させてください」
そう言って無線を切った。
「これが新型か」
一人のエンジニアが機体を見つめる。
短く、波打った茶色い頭髪、腰に工具ベルトを巻いている。
安全靴を履き、作業服を身にまとう。
「さて、どんな武器に使えるかな」
ドライバーを握り、作業台に手をついた。
作業台の上にはチェイサーとシャークDMRが置かれていた。
渓人は目の前の機体に刃を立て、腕を振る。
(......訓練より感触が軽い)
そのまま左右に機体を割った。
もう一体、またもう一体。
旧型の機体が倒れていく。
その時、遠くから青い光が見えた。
反射的に横に滑ると、赤い光が道を覆い、頬を照らした。
「砲撃型か」
照準器を覗き込み、引き金を引く。
一筋の軌跡が赤い目を貫き、機体がよろけ、後ろに倒れた。
巻き上がる粉塵の中に、光が見える。
赤く、禍々しく、重苦しい空気を生み出す光。
次の瞬間、粉塵を突き破り、光が迫ってきた。
根本付近でX字に交差し、くびれ、末広がりなブレード。
「......お前、あの時の」
目を見開き、コークスを視線で突き刺す。
「今回は本気で行かせてもらうぜ」
そう言って円形のユニットを思いっきり回した。
ブレードに棘がまとわりつき、辺りが黒い霧に包まれる。
「さあ、始めようぜ」
円形のユニットを回し、ブレードを地面に突き刺した。
地面を踏みこみ、ブレードの刃を相手に垂直に向け、飛びかかる。
コークスの目の前に迫った瞬間、黒いとげに阻まれた。
__バキッ
側面にぶつかり、棘が砕ける。
渓人は一瞬地面に目をやる。
(......割れていない)
コークスはすかさずブレードを振る。
渓人は瞬時に横へと滑り、避ける。
切り返し、再びコークスに斬りかかる。
__ドン!
地面から壁が生え、身体を打ち付けてしまった。
黒い刀身が目の前まで迫る。
「さあ言え、飛翔はどこにある」
声を張り上げ、問いただす。
「......言わない」
震えた声で返事をする。
「なんだってぇ!?」
円形のユニットが高速で回り、辺りの霧が一段と濃くなる。
渦を作り、ブレードを包み込む。
霧が晴れると、禍々しい赤に染まったブレードが見えた。
赤い刃が目前まで迫る。
渓人はチェイサーを横に寝かせ、僅かに傾ける。
__パリン!
そんな乾いた音と共に、チェイサーが散った。
”Error 武器データ破損 チェイサー”
視界の端に表示が走り、点滅する。
すかさずDMRに持ち替え、引き金を引き続ける。
だが、銃声は鳴り響かない。
”Error 武器データ破損 シャークDMR”
渓人は膝から崩れ落ちた。
「さあ、聞かせてもらおうか」
点滅とともに、一歩また一歩と迫る。
足音だけが、時を刻んだ。




