Twentieth 戦争遺構の主
「さあ、来るがよい」
神風の鞘から放たれる光と回路の拍動が同期する。
「戦うつもりはない」
だが、風間は上げた刀を下ろさずに続ける。
「だだし、そちらから仕掛けなければの話だ」
神風の目を視線で突き刺した。
「君は何がしたい」
風間の目をにらみ返し、刀を抜く。
画面で見た緑色の結晶を削り出した刀身が姿を現した。
「"勝利のWABE"、君の力を借りたいんだ」
風間の言葉の後、二人の間に沈黙が流れた。
神風が刀を強く握る音が沈黙を破り、実験区画が緑色の光で覆われる。
風が吹き荒れ、実験機材が音を立てて揺れた。
「何を企んでいるのだ?」
風間を睨みつけ、刀を振り上げる。
「あの金属腕に、復讐したくないか?」
風間はそのまま続ける。
「君を"WABE"にした野郎に」
それを聞いて、神風の表情は一変した。
「......知ってるのか」
落ち着いたトーンで風間に問いかける。
「君をこのようにした連中は......」
「我々と敵対関係にある」
神風は刀を鞘に納め、肩を僅かに落とした。
「どこにいるんだ」
風間に問いかける。
「戦場に行けばわかる」
帰ってきたのは組織への勧誘であった。
「協力してやろう」
神風は風間に近寄り手を前に伸ばした。
しかし、
風間が手を握ろうとした瞬間、神風は腕を引く。
「だが、用が済んだら知らぬぞ」
復讐心と闘志に満ちた戦士の姿がそこにあった。
一方、その頃
「戦争遺構の使用を検知」
ウィングは船内のモニターを表情一つ崩さす見つめる。
「場所は?」
クレフは鋭い眼光がウィングを刺す。
「信号がジャミングされており、特定できません」
ウィングが必死にキーをたたく。
画面の表示される地図に変化はない。
「場所が割れないなら」
クレフは地図上で更地となった地区を指差す。
「使用者をおびき出せばいい」
彼の口角がわずかに上がった。
木犀の扉の向こう側で二人の隊員が目を見合わせていた。
「さっきの光って何だったんだろう」
高見澤はそう言って窓の外を眺める。
青白い光を放ちながら、一定周期で拍動していた。
さっきまで、強い緑色の光を放っていたとは到底思えない。
「この都市、本当に大丈夫なのか」
高見澤の黒目が小刻みに振動する。
「わからない」
渓人は首を横に振った。
「でも」
目線を上げ、テーブルに両手を叩きつける。
「なんかわかった気がする」
そう言って立ち上がり、店を飛び出した。
「ちょっと待ってよ!」
高見澤が振り返った時、渓人は消えていた。
「会計してないじゃん」
そういって息を吐き、端末をレジにかざした。
そして、店を飛び出した。
渓人は基地の正面玄関に立ち、扉に端末をかざす。
そのまま扉の中に飛び込み、エレベーターで足を止め、ボタンを押した。
扉が開き、エレベーターに乗り込んだ時だった。
玄関の扉の先に、長い髪を揺らしながら高見澤が走ってきた。
「金払え!」
扉に端末をかざし、玄関に飛び込む。
渓人はエレベーターのB5ボタンを押す。
「認証キーが必要です」
機械音声が冷徹に語りかける。
「今だ」
脳にフラッシュメモリが語り掛けてきた。
「私を端末に差し込め」
渓人に使用を促す。
「挿せばいけるんだな」
高見澤はもうすぐそこだ。
そのまま端末にフラッシュメモリーを差し込み、ボタンを押した。
「認証完了」
機械音声とともに扉が閉じ、床が落ち始める。
高見澤はエレベーターのボタンを押すも、扉は開かなかった。
渓人はエレベーターの中で深呼吸をし、肩を落とした。
「これ、認証キーだったのか」
端末に挿したフラッシュメモリに語り掛ける。
「そうだ」
その言葉とともに、渓人は脳内に語り掛けてくる感覚に襲われた。
地下四階を通過するとき、見覚えのある鞘を持った隊員を見つけた。
「地下五階には認証なしでは行けないはず」
風間はエレベーターのボタンを押した。
「待っていてほしい」
風間は神風の目を見つめて言った。
「すぐ戻る」
そう言ってエレベーターの前に立ち、到着を待った。
地下五階の扉の前に一人の少年が立っている。
認証用端末に吸い寄せられるように向かい、端末をかざす。
「ロックを解除します」
ガコンという音とともに大きな錠前が外れ、扉が開いた。
中に入ると二つのショーケースがあった。
右側のタイルがせりあがっていたのである。
緑色の拍動は収まっている。
右側のショーケースを見ると、”異質な武器”があった。
青白い結晶を削り出したような武器で、持ち手には金色の回路が走っている。
本数は二本あり、交差するように置かれていた。
横に長く伸びた鍔からは、銀色の翼が生えている。
渓人は吸い寄せられるようにショーケースに足を運んだ。
「誰かが引き受けなければならない」
再び脳内に語り掛けてくる感覚に襲われた。
「それは」
間を置く。
「”君以外の誰でもない”」
それを聞いた瞬間、渓人はショーケースのカバーを取り払った
そのまま武器の持ち手を掴んだ。
渓人に頭が割れそうなほどの痛みが襲う。
「やるしかねえ」
渓人は喉から声をひねり出した。
部屋中に張り巡らされた回路は青白く発光し、あたりを包んだ。
その時だった。
青白い光に向かって、一人の隊員が飛び込む。
__ドカッ!
渓人の横腹に強い衝撃が走るとともに、地面にたたきつけられた。
はっきりとしない視界の中、見覚えのある鞘とそれに刺さった刀が映る。
「......風間さん」
渓人は弱々しい声で問いかけた。
「.......なん......で......」
そのまま意識を失った。
「渓人」
風間が固く閉ざした口を開く。
「君のためだ」




