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WABE ~すべてを失った少年が終末世界に抗い続ける物語~  作者: terakoya-8
WABE編

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Eighteenth 弾幕

 渓人はコークスを視線で刺す。


 (......見たことのない武器)


 禍々しさを感じさせる赤と青の配色が不安を煽る。


「さあ”飛晶”はどこだ!」

 コークスは黒光りする刀身を向け、言い放った。

 

「知るかよ!」

 渓人はチェイサーを前に突き出す。

 そのまま、地面を踏みこんで振りかぶる。


 __カーン!

 __ガシン!


 二本の剣交差し、甲高い金属音が空気を揺さぶる。

 火花が散り、焦げたようなにおいが辺りを満たす。

 

「スパイク!」

 コークスは剣を勢いよく地面に突き刺す。

 地面に亀裂が入り、渓人に向かって迫っていく


(......まただ)


 渓人は地面を蹴り、飛び上がる。

 武器をシャークDMRに持ち替え、ストックを肩に当てる。

 

 グリップを握りしめて照準器を覗き、狙いを定める。

 照準器には、地面を突き破った黒い棘が映っていた。


__バシュン!

__パキン!


 耳を突き刺すような乾いた音とともに、棘が砕け散る。

 渓人は武器をチェイサーに持ち替え、コークスの懐へ飛び込んだ。


「......馬鹿め」

 コークスは円形のユニットに手をかけ、勢いよく回した。

 赤く禍々しい光が辺りを照らし、雰囲気を一転させる。


 だが、渓人は止まらない。

「うおおおおおおお!」 

 刃をコークスに向ける。

 

「無駄なんだよォ!」

 コークスは剣で振り払い、渓人をチェイサーごと弾き飛ばす。

 同時に、地面を飛び上がる。


「さあ、さっさと基地に帰りな」

 再び円形のユニットに手をかけ、勢いよく回す。

 赤い光が刀身を包むと同時に、黒い棘に覆わて肥大化していく。

 

 その時だった。

 __ババババババッ!


 重厚な銃声が連続して響き、空気を揺らす。

 どこからともなく弾丸が現れて視界を覆い、弧を描いて飛んで行く。


 コークスの剣が持つ円形のユニットを連続で打ち抜く。

 すると、肥大化した剣が少しずつ小さくなっていく。


「クソっ、誰だ」

 コークスは弾丸の軌跡を追って銃撃の主を探す。

 渓人とコークスは軌跡の始点を見つめる。


 そこには、ジェットパックを背負って飛行する一人の隊員の姿があった。

 バイザーを装着し、無骨な箱型の弾倉を持った軽機関銃型の武器を二丁持つ。


 軽量タイプの装甲に身を包み、戦闘機のごとく空を飛び回り、弾丸をばらまく。

 立派な上腕で反動を押さえつけている。

 

「ウィング、撤退だ こいつは歩が悪い」

 そう言って円形のユニットを手で押すと同時に、赤い光に包まれる。


 コークスの姿は光の中に消えた。 

 ウィングも同様に姿を消した。

 

「さあ、基地に戻るぞ」

 空飛ぶ隊員はそう言って時計型の端末を操作した。

 すると、身体が細かい粒子と化して消えた。

 

 渓人も時計型の端末を立ち上げた。

 ホログラムに浮かぶ"帰還"という文字を見つめ、まばたきをした。


 気づいた時には、基地の最上階であった。


 (......?)


 ホログラムに映された帰還の文字。

 粒子状に分解される隊員。

 瞬きと同時に変わる景色。

 

 なぜこうなったか、仕組みは理解できない。


 渓人はゆっくりと息を吐き、肩の力を抜いた。

 だが、武装解除は行わずにそのまま辺りを見渡した。


「やあ」

 声の主は立派な腕を振ってこちらに歩いてきた。

 戦場で見たバイザーは下がっていない。

 

 ”ここは戦場じゃない”

 その考えが確信へと変わった。


「WABE精鋭級 松本修吾《まつもとしゅうご》だ」


 渓人は松本の顔を見上げ、目を合わせる。

 その眼光は差すように鋭かった。


「そういえば君、大成《たいせい》さんの息子さんじゃないか?」

 彼はそう言って隊服のポケットに手を突っ込んだ。


「最後に渓人を頼むって言われてな、これを預かった」

 その手にはフラッシュメモリ型のガジェットが握られていた。

 

 渓人はガジェットを受け取り、端子を見つめる。

 

(......もしかして)

 

 そのまま時計型の端末に差し込もうとした。

 その時だった。


__ガシッ!

 腕が締め付けられ、痛みが走る。

 

「何するんですか!」

 そう言い放ち、松本をにらみつける。


「今ではない」

 そのまま握りを緩める。

 

「その時が来れば、こいつが教えてくれる」

 松本はそのままガジェットを見つめた。


「......最後に」

 渓人の目を見つめる。


「このことは風間には言うな」

「そして、これは絶対に風間に見せるな」


 そう言って立ち去ってしまった。

 

 渓人はガジェットを見つめ、端子に触れる。

 その時だった。

 

「まだ、その時ではない」

 渓人が辺りを見渡すと、人影は見当たらない。


 (脳に誰かが語り掛けてくる)

 

「その時が来たら、教えてやろう」

 その言葉と同時に、ガジェットをポケットにしまった。

 

 渓人はエレベーターに向かい、ボタンを押そうとした時だった。

 後ろから靴が床をたたく音が近づいてきた。

 

「お疲れ様」

 渓人は聞きなじみのある声に振り返る。

 高見澤だった。

 

「この後、食堂行かない?高見澤はそう言って、食堂入り口を指さした。

 

 渓人は首を縦に振り、高見澤を見つめた。

 高見澤は僅かに視線を外した。


 渓人は不思議に思いつつ、食堂に向かって歩き出した。



 一方その頃、

「ウィング、コークス、帰還しました」


「ご苦労だ」

 

「クレフ隊長、”飛晶”適合者はまだ当該武器を使用していないようです」

 コークスが冷静に報告する。


「観測データから、戦争遺構の使用が検出されたときに狙うのが最適かと」

 そのまま続ける。


「適合者が不慣れなうちに回収するというプランを提案します」

 ウィングはそう言って資料を渡した。


「わかった、このまま観測を続けよう」

 クレフは資料を読み終えたのち、そういった。


「何か動きがあったときの準備を怠るな」

 そう言って隊員の目を見つめる。


「了解」

 各自が各自の持ち場に戻った。


 次なる戦いは目前に迫っているのかもしれない。

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