Seventeenth 襲来
カプセルが放物線を描き、落ちていく。
外には、侵攻で荒廃した東京の街並み。
少し前まで人が暮らしを営んでいた場所は、
今や瓦礫の山が積み上がった荒地と化している。
生きた土地ではなくなっていた。
川に架かった橋を渡る。
左手に赤鉄骨、右手に白鉄骨の塔が見える。
赤鉄骨の塔は折れ、曲がりくねって建っている。
白鉄骨の塔は柱が壊れ、微かに振れる。
「変わっちまった」
川崎が口をこぼす。
「ですね」
そう言って入江は首をゆっくりと縦に振る。
橋の向こうには、見覚えのある赤い光。
「さあ、初仕事だ」
そう言って、渓人がシャークDMRを構える。
川崎も狙撃銃ウィザードを持ち上げ、渓人に視線を送る。
「どっち撃つ?」
「じゃあ右を」
渓人はすかさず答える。
__ガッ。
アントニーと高見澤が地面を踏みきる。
ロボットとの距離が急激に縮む。
左右のブレードを構え、防御の構えを作る。
__バシュン!
二発の弾丸がロボットアームを貫き、火花を散らす。
左右のアームから、赤い光が蛍のように舞う。
力が抜けたように、構えが崩れる。
__パン!
乾いたと共に、ロボットの頭部正面のガラスに亀裂ができる。
ロボットが左右にせわしなく首を振る。
__ガン!
鈍い金属音とともに、地面が揺れる。
ロボットが割れ、左右の統制が崩れる。
そのまま、地面に倒れこんだ。
荒廃したビルの上に、二人の人影。
光を放つ赤い糸で縫られた、黒い外套。
「手際、いいですね......」
コークスが目を凝らして橋を見つめる。
「武器も、なんだかね」
ウィングがそう言って、ブレードを指差す。
「まともな結晶エネルギー回路が走ってる」
「後発の割には、技術は進んでるよ」
「でも、勝てないことはない」
コークスが肩を回す。
「隊服が新しいし、新入りだ」
「ちょっと、遊んでやろうぜ」
2人は外套の影から武器を取り出す。
赤く、禍々しい色の回路が走っている。
ウィングは電極のような棒を持つ二丁拳銃。
円形のユニットから黒い棒が二本伸びる。
コークスは左右対称の黒いブレード。
円形のユニットから伸びている。
根本付近でX字に交差し、くびれて末広がりに広がる。
円形のユニット中央部。
コアのようなものが赤く発光し始める。
「始めよう」
二人は荒廃したビルの外壁を蹴り、橋のほうへと向かった。
外壁が削れ、パラパラと音を立てる。
「あれはなんダ?」
アントニーが眉間にしわを寄せ、目を凝らす。
黒い何かが近づいてくる。
「待て、武器を構えてる」
「それも、プロジェクトWABEのものではない」
川崎がそう言って、照準を合わせる。
照準器を覗いた瞬間、赤い光が目を刺す。
「目標が見えねえ」
電極のような棒の間に、赤い球が見える。
それだけだった。
「渓人、避けて!」
高見澤がそう言って、前に出る。
大きなブレードを地面に突き刺し、前に構える。
__ドゴォォォン!
粉塵が舞い、視界が濁る。
渓人はチェイサーを構え、粉塵の中を突き進む。
赤い光の発生源に足を踏み出す。
粉塵が晴れ、二人の人影が姿を現す。
武器についた円形のユニットが赤く発光している。
一緒にいた3人も粉塵を抜ける。
高見澤は、腕で口元を抑えている。
__ゴホンゴホン。
少し遅れて、口元を抑えていた腕をどかす。
両手でしっかりとブレードを握る。
「訓練生上がりにしてはいい出来してるな」
コークスはそう言って、ブレードを構える。
「さて、やりますか」
ウィングは武器を渓人たちに向け、引き金に触れた。
両手に持った武器が赤く光る。
「コークス、”WABEの卵”は任せた」
「あいよ」
そう返事をし、渓人を見つめた。
戦闘開始だ。
川崎は小型ブレード、サーベルに持ち替える。
「チェーン」
持ち手から六角形の連続した構造体が生成される。
鎖のように繋がり、手首に固定される。
彼はサーベルを投げ、ビルの外壁へと突き刺した。
「リール、スピン!」
構造体が川崎の身体を引っ張り、ビルへ飛ばす。
そのまま、屋上に飛び乗った。
渓人は左足を前に出す。
間合いを詰め、コークスに近づく。
ブレードを振り上げ、斬りかかる構え。
「遅い」
その言葉とともに、ブレードを突き刺した
地面が禍々しく光り、割れる。
咄嗟に飛び上がり、地面を確認する。
赤い結晶の棘が生えてきた。
「さすが、反応速度はいいな」
こいつらが、侵攻の首謀者なのか?
渓人はブレードを強く握り、コークスに向けた。
少し離れた橋の上。
__ドン!
赤い光とともに、地面が砕けた。
高見澤のブレードが光り、推進力を得る。
そのまま、ウィングに斬りかかる。
ウィングが片足を後ろに引き、もう片足を引き付ける。
ブレードが腹部前方を横切り、外套を揺らした。
「甘いね」
ウィングが右腕を後ろに引き、電極を前に向ける。
(......来る)
だが、
__バシュン!
そんな音とともに、風が頬を撫でる。
ウィングの武器が弾丸に触れる。
(......なっ)
一定だったウィングの表情が崩れる。
風上には誰もいない。
__プッ。
空気の抜けたような銃声とともに、外套が揺れた。
音をたどっても姿はない。
(思ったよりも厄介だ)
(こんな奴らが、後発組の軍隊なのか)
ウィングは大きく息を吐く。
円形のユニットを手で勢いよく回した。
赤い光が禍々しさを増し、辺りの空気が一変する。
押しつぶされそうなほど重苦しい空気。
全員が武器を相手に向け、構えなおす。
戦いはまだ、終わらない。




