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WABE ~すべてを失った少年が終末世界に抗い続ける物語~  作者: terakoya-8
WABE編

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16/18

Fifteenth 予兆

 目覚めた時、目の前にはガラス板が塞いでいた。

 カプセルの中であった。


 次の瞬間、

 板が、横へとずれる。

 


 __プシュー!

 音を立て、勢いよく空気が噴き出す。


 渓人はカプセルから身を乗り出し、地面を踏む。

 

「......良かった」

 西野の声だった。

 その声を聴いて、思わず息を吐いた。

 

「......何度もこうなっちゃって、すみません」

 渓人の目線は、下を向いていた。

 口角がうまく上がらない。

 

 目覚めてすぐ、廊下でくらついた時。

 藤原との決闘後、頭痛で倒れた時。

 

 そして、今回も。


 (......助けられっぱなしだ)

 

 その時、

 突然、西野が渓人の頬を両手で挟む。

 そして、顔を正面へと向ける。


「はいはい、そんな顔しないの」


 渓人の口角を無理やり持ち上げる。

 

「やめてくださいよ!」

 そう言って、西野の腕を掴み、歯を食いしばる。


「分かった、やめるから」

 そういって、頬から手を放す。

 渓人も、力を緩める。

 


「風間さんも心配してたよ」

 しかし、風間の姿は見当たらない。


「風間さんは?」

 

「今、実験で忙しいみたい」

 どうやら、数日実験区画で寝泊まりするらしい。

 

(......どんな実験なんだ)

 

 数日もかけて行う実験。

 想像もつかなかった。


 「あと、合格おめでとう」 

 西野は口角を上げ、微笑む。


 「ありがとうございます」 

 渓人は軽く頭を下げた。


 「今日は、休んだら?」

 彼女はそう言って、彼を送り出した。



 廊下は相変わらずの様子だった。

 踏み入った瞬間、冷たい空気に飲み込まれる。

 この感覚にも慣れてきた。


 エレベーター目指して廊下を進む。


 廊下の反対側に、見覚えのある人影。

 一歩ずつ、近づいてくる。  


 後ろで長く結ばれた髪。 

 小柄な体型。

 華奢で細い両腕。

 

 試験中の威圧感は感じられなかった。

 偶然、目が合う。


 高見澤は目を細め、渓人を睨みつける。

 

「......」


「......」


 お互いの足音だけが、廊下にこだまする。

 段々と遠くなっていく。


 気づけば、彼女の姿は遠くへ消えていた。


 渓人はエレベーターのボタンに触れる。

 目的地は地上2階。


 扉が開く。

 中には、誰もいない。


 彼は乗り込み、2階のボタンを押す。

 エレベーターが動き出す。

  

 その時だった。

 何か、語りかけてくる声が聞こえる。


「誰かが受け入れなければならない」


 それと同時に、 

 激しい頭痛が走る。


「......うっ」

 ぼんやりと何かが見える。

 水平線が見える、広い空間。

 水が張った地面が延々と続いている。


 目の前には、"日時計"。

 空には、昇っている。


 日時計からは、青白い線が走る。

 終わりが見えないほど、長い。

 ”この空間を二分”するような線。

 一定周期で脈打ち、光を放つ。

  

 日時計に隣に、誰かが立っている。

 濃紺色の破れた外套が左右に揺れる。

 

 空中を舞う無数の青い剣が背後に見える。

 金属製の防具から、蒼白い結晶が顔を出す。

 

 防具からだけではない。

 体の各部からも顔を出している。


 目は青白く光っていた。

 

 人間とはかけ離れた姿がそこにある。

 

 ”其れ”は渓人に指を向けた。

 

 __シュバッ!

 一本の剣が渓人の腹部を貫く。

 

 「ハッ!」

 エレベーターの中だった。

 周りには、誰もいない。

 

 気づけば、エレベーターの扉が開いていた。

 渓人は、歩き出す。

 

 (......何なんだ、今のは)


 先ほどの光景が、頭に焼き付く。


 指先に冷気が走り、青白い光を放った。

 一瞬のことだった。


 __だが、

 どこか、他人事ではないような気がした。



 一方、

 地下四階、実験区画。


 巨大なスクリーンに映像が映し出される。

 

 緑色に発行する目が相手を照らす。

 頬を緑色の結晶が突き破る。


 手には、刀のようなものが握られている。

 結晶を直接削り出したような刃が付いている。


 黒い外套を身に纏う。

 

 対峙するは、二本のブレードを持ったロボット。

 

 関節部には、潤滑油の塗られたむき出しの歯車。

 歯車が回り、前へと歩き出す。

 

 卵型の頭部から、針金のようなアンテナが伸びる。

 頭部の窓から赤い結晶が見える。

 赤い光が正面を照らす。

 

 両者、同時に前に出る。


 次の瞬間、

 勇人の刃、頬の結晶、目が緑色に発光する。

 

 横へ薙ぎ払うと同時に、斬撃が飛ぶ。

 

 __スッ。

 ロボットの頭部が滑り落ちる。


 __ドーン!

 大きな音が空気を揺らす。


 辺りには、同じロボット。

 一体が背後へ回り、彼の刃を狙う。

 ロボットのブレードが落ちてくる。


 __バキッ!

 彼の刃が割れる。


 だが、

 彼の刃、頬の結晶、目が緑色に発光する。

 同時に、新たな刀身が生えてくる。

 応えるように頬の結晶が伸びる。


 もう一度、薙ぎ払う。

 素早く、コンパクトに、最短経路をなぞる。


 __ドドドドドドドドドン!

 爆発音が四方八方から鳴り響く。

 ロボットの数が減っていく。

 

「これが......神風勇人か」

 スクリーンを見つめるは、風間俊英。

 同じ、黒い外套を身に纏う。


「......圧倒的だ」 

 今、”プロジェクトWABE”に必要なもの。


 絶対的な戦う司令塔。

 前線で士気を高め、敵を蹴散らす。


 それが、彼なりの答えだった。


「私はWABEにはなれない」

 

「だが、」


「やれることは、ある」

 彼は、武器を握りしめる。


「思いついたなら、やるまでだ」


 

 渓人は自室へと戻り、ベットに倒れ込んだ。


 そのとき、

 時計型の端末に一件の通知。


 「明日の朝8時、新規入隊した隊員は最上階、大訓練室へ集まること」


 (明日は、早起きしないとな)


 試験で疲れたに鞭を打ち、身支度を始めた。

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