Fourteenth 力闘
試験のフィールドには2人の候補生。
一人は身の丈を越えるブレードを盾のように構える。
一人は片手に小型のブレードを握る。
両者、眉間にしわを寄せて相手を見つめる。
どちらも踏み出さない。
その時、
高見澤がブレードを肩へとのせる。
そして、両者、同時に踏み出す。
高見澤の肩には、身の丈を越える巨大なブレード。
華奢で細い両腕、ブレードに隠れるほどの小柄な体型。
なのに、
風のように素早く駆け抜け、戦鎚のような一撃を繰り出す。
高見澤は音もなく飛び上がる。
(......来る)
渓人の足元に大きな影が落ちる。
頭上には重厚な防具と巨大なブレード。
(ここで、決めないと......)
地面めがけて加速していく。
ブレードが渓人めがけて落ちてくる。
渓人は左足を横に出し、踏み込む。
右足を引き付け、素早く横へ動いた。
__ドガシャァンッ!
大きな音を立て、地面が大きくえぐれる。
床が砕け、粉塵が巻き上がる。
(......今だ)
武器をシャークDMRへと持ち替える。
ストックを肩に押し付ける。
わきで挟み、照準を安定させる。
狙うは、粉塵の舞う落下地点。
__バシュン!
弾丸が放たれ、加速していく。
舞い上がる粉塵を貫き、穴をあける。
だが、
手ごたえはない。
弾丸が跳ね返ってこない。
(......まさか)
弾丸をリコンに切り替え、天井に打ち込む。
その時だった、
背後に、大きな影が落ちる。
その瞬間、
視界の端に、"目標検知"の表示が光る。
距離は後方3メートル。
渓人は身体を捻り、素早く振り返る。
右腕を軽く曲げたまま、ブレードを前に出す。
左手を軽く添える。
__ガシン!
曲げた腕をバネのように使い、衝撃をいなす。
今度は飛ばされない。
だが、
衝突の瞬間、高見澤のブレードが光る。
手首を使い、ブレードの刃を180度回す。
刃を渓人のほうに向ける。
次の瞬間、
光るブレードが振り上げられる。
渓人は右足を後ろに下げる。
左足を引き寄せ、距離をとる。
だが、
まだ間合いの中。
高見澤のブレードが防具をえぐる。
”残り耐久値、30%”
視界の端に表示がちらつく。
(......一体何が起こった)
重いはずのブレードを2連続で。
しかも逆方向に。
反動でうまく振れないはずだ。
あの体格で反動を無理やり抑えたとは考えにくい。
渓人はふと、前の試合を思い出す。
弾丸が当たるたび、高見澤のブレードが光る。
弾丸の衝撃が彼女には伝わっていないように見えた。
そして、
ブレードが光り、推進力で飛び上がる。
(......分かったぞ)
高見澤は次の構えに入る。
渓人は武器をシャークDMRに持ち替える。
高見澤のブレードを狙い、引き金を引く。
乾いた銃声がこだまする。
__シュゥゥゥゥ......
彼女のブレードに受け止められ、刃が光る。
ブレードを肩に担ぎ、一歩踏み出す。
渓人は避けない。
さっきと同じ受け止める構えを作る。
__ガシン!
腕を縮ませ、衝撃をいなす。
(......今だ)
「テーザー!」
ブレードを伝い、高見澤へと電流が走る。
しびれで彼女の動きを鈍らせる。
狙うは、ブレードの側面。
グリップを少し、短く持つ。
__カキン!
狙いを定め、コンパクトに振り切る。
巨大なブレードが発光する。
「なんでブレードを?」
「防具を直接ねらわないのか?」
観客席に憶測が飛び交っている。
高見澤が痺れから立ち直る。
刃を180度回し、上へ向ける。
来る。
誰もが確信したその時だった。
__ブォン!
鈍い風切り音と共に、ブレードが回る。
高見澤はブレードのコントロールを失う。
勢いそのまま、ブレードは飛び上がる。
身体が引っ張られる。
"止まれない"
(......このままじゃ、天井に当たっちゃう)
心臓の鼓動は激しく、息は忙しくなる。
__ドッ!
天井に当たり、跳ね返る。
そのまま、地面へ落ちていく。
(早く、バランスを)
ブレードを下に向け、構えを作ろうとする。
だが、
何か、反射光が見えた。
その瞬間、
__キーン!
防具に弾丸が当たる。
__カン!
ブレードの側面に当たる。
左右にブレが生じる。
(......空中なら、防具でしか防げない)
渓人は、引き金を引き続ける。
右足、左足、右腕、左腕。
各部位を撃ち、バランスを取らせない。
(......体勢が整わない)
__ガシャァァァァン!
高見澤は全身を地面に打ちつけらる。
”残り耐久値、45%”
視界の端に、表示がちらつく。
巨大なブレードを地面に突き刺し、立ち上がる。
肩に担いで、構えを作る。
渓人は深く息を吸う。
意識を、彼女へと集中させる。
時間の流れが停滞する。
勝利への最短経路が浮かび上がる。
(......行ける)
両者、ブレードを構えて前に踏み出す。
お互いに譲らない。
その時だった。
渓人はブレードを投げる。
「テーザー!」
高見澤の動きが鈍る。
だが、完全には止まらない。
渓人は前に進み、チェイサーを掴む。
両者はそのまま、腕を振り下げる。
無駄のない軌道で最短経路をなぞる。
そして、
お互いの防具が砕け散った。
「......勝者、判別不能」
「リプレイ検証を行う」
審判の声とともに、最後の一撃が映し出される。
観客、審判、渓人、高見澤。
全員が息をのんで見守る。
互いのブレードが互いの防具へと近づいて行く。
そして、
数センチの差、渓人のブレードが先に届いた。
「......勝った、のか」
突然、
渓人の頭に痛みが走る。
(......まただ)
ブレードを地面に突き刺し、耐える。
だが、
そのまま崩れ落ちてしまった。
一方、
地下4階、実験区画。
大型の装置が鎮座する。
映画館のような幅のあるスクリーン。
人間の背丈ほどの直径を持つ巨大なレンズ。
レンズの中には、戦争遺構"神風刀"。
「試料、セット完了です」
「いつでもいけます」
研究員の声が響く。
「これより、結晶投影実験を開始する」
指揮を執るのは風間俊英。
その手を装置起動ボタンに近づける。
「装置を起動したら、私以外は速やかに退出せよ」
"必ず、成功させる。"
覚悟を決め、ボタンに触れた。
特別編入試験編、完。




