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WABE ~すべてを失った少年が終末世界に抗い続ける物語~  作者: terakoya-8
特別編入試験

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15/18

Fourteenth 力闘

 試験のフィールドには2人の候補生。

 一人は身の丈を越えるブレードを盾のように構える。

 一人は片手に小型のブレードを握る。


 両者、眉間にしわを寄せて相手を見つめる。

 どちらも踏み出さない。


 その時、

 高見澤がブレードを肩へとのせる。


 そして、両者、同時に踏み出す。


 高見澤の肩には、身の丈を越える巨大なブレード。

 華奢で細い両腕、ブレードに隠れるほどの小柄な体型。


 なのに、

 風のように素早く駆け抜け、戦鎚のような一撃を繰り出す。


 高見澤は音もなく飛び上がる。

 

 (......来る)


 渓人の足元に大きな影が落ちる。

 頭上には重厚な防具と巨大なブレード。


 (ここで、決めないと......)


 地面めがけて加速していく。

 ブレードが渓人めがけて落ちてくる。


 渓人は左足を横に出し、踏み込む。

 右足を引き付け、素早く横へ動いた。


 __ドガシャァンッ!

 大きな音を立て、地面が大きくえぐれる。

 床が砕け、粉塵が巻き上がる。


 (......今だ)


 武器をシャークDMRへと持ち替える。

 ストックを肩に押し付ける。

 わきで挟み、照準を安定させる。


 狙うは、粉塵の舞う落下地点。



 __バシュン!

 弾丸が放たれ、加速していく。

 舞い上がる粉塵を貫き、穴をあける。


 だが、

 手ごたえはない。 


 弾丸が跳ね返ってこない。


 (......まさか)


 弾丸をリコンに切り替え、天井に打ち込む。

 

 その時だった、

 背後に、大きな影が落ちる。


 その瞬間、

 視界の端に、"目標検知"の表示が光る。

 距離は後方3メートル。

 

 渓人は身体を捻り、素早く振り返る。

 右腕を軽く曲げたまま、ブレードを前に出す。

 左手を軽く添える。


 __ガシン!

 曲げた腕をバネのように使い、衝撃をいなす。

 今度は飛ばされない。


 だが、

 衝突の瞬間、高見澤のブレードが光る。

 手首を使い、ブレードの刃を180度回す。

 刃を渓人のほうに向ける。


 次の瞬間、

 光るブレードが振り上げられる。

 

 渓人は右足を後ろに下げる。

 左足を引き寄せ、距離をとる。


 だが、

 まだ間合いの中。

 高見澤のブレードが防具をえぐる。


 ”残り耐久値、30%”

 

 視界の端に表示がちらつく。

 

 (......一体何が起こった)


 重いはずのブレードを2連続で。

 しかも逆方向に。


 反動でうまく振れないはずだ。

 あの体格で反動を無理やり抑えたとは考えにくい。



 渓人はふと、前の試合を思い出す。

 弾丸が当たるたび、高見澤のブレードが光る。

 弾丸の衝撃が彼女には伝わっていないように見えた。


 そして、

 ブレードが光り、推進力で飛び上がる。


 (......分かったぞ)

 


 高見澤は次の構えに入る。


 渓人は武器をシャークDMRに持ち替える。

 高見澤のブレードを狙い、引き金を引く。

 乾いた銃声がこだまする。

 

 __シュゥゥゥゥ......

 彼女のブレードに受け止められ、刃が光る。

 ブレードを肩に担ぎ、一歩踏み出す。


 渓人は避けない。 

 さっきと同じ受け止める構えを作る。


 __ガシン!

 腕を縮ませ、衝撃をいなす。


 (......今だ)


 「テーザー!」


 ブレードを伝い、高見澤へと電流が走る。

 しびれで彼女の動きを鈍らせる。


 狙うは、ブレードの側面。

 グリップを少し、短く持つ。


 __カキン!

 狙いを定め、コンパクトに振り切る。

 巨大なブレードが発光する。

 

 「なんでブレードを?」


 「防具を直接ねらわないのか?」


 観客席に憶測が飛び交っている。



 高見澤が痺れから立ち直る。

 刃を180度回し、上へ向ける。


 来る。


 誰もが確信したその時だった。

 

 __ブォン!

 鈍い風切り音と共に、ブレードが回る。

 高見澤はブレードのコントロールを失う。


 勢いそのまま、ブレードは飛び上がる。

 身体が引っ張られる。


 "止まれない"


 (......このままじゃ、天井に当たっちゃう)


 心臓の鼓動は激しく、息は忙しくなる。


 __ドッ!

 天井に当たり、跳ね返る。

 そのまま、地面へ落ちていく。


 (早く、バランスを)


 ブレードを下に向け、構えを作ろうとする。

 

 だが、

 何か、反射光が見えた。


 その瞬間、


 __キーン!

 防具に弾丸が当たる。


 __カン!

 ブレードの側面に当たる。

 左右にブレが生じる。


 (......空中なら、防具でしか防げない)


 渓人は、引き金を引き続ける。

 右足、左足、右腕、左腕。


 各部位を撃ち、バランスを取らせない。


 (......体勢が整わない)


 

 __ガシャァァァァン!

 高見澤は全身を地面に打ちつけらる。

 

 ”残り耐久値、45%”

 視界の端に、表示がちらつく。

 巨大なブレードを地面に突き刺し、立ち上がる。


 肩に担いで、構えを作る。

 渓人は深く息を吸う。

 意識を、彼女へと集中させる。


 時間の流れが停滞する。

 勝利への最短経路が浮かび上がる。


 (......行ける)


 両者、ブレードを構えて前に踏み出す。

 お互いに譲らない。


 その時だった。

 渓人はブレードを投げる。


 「テーザー!」


 高見澤の動きが鈍る。

 だが、完全には止まらない。


 渓人は前に進み、チェイサーを掴む。


 

 両者はそのまま、腕を振り下げる。

 無駄のない軌道で最短経路をなぞる。


 そして、

 お互いの防具が砕け散った。


 「......勝者、判別不能」


 「リプレイ検証を行う」


 審判の声とともに、最後の一撃が映し出される。

 観客、審判、渓人、高見澤。


 全員が息をのんで見守る。


 互いのブレードが互いの防具へと近づいて行く。


 そして、

 数センチの差、渓人のブレードが先に届いた。


 「......勝った、のか」


 突然、

 渓人の頭に痛みが走る。


 (......まただ)


 ブレードを地面に突き刺し、耐える。


 だが、

 そのまま崩れ落ちてしまった。


 一方、

 地下4階、実験区画。

 大型の装置が鎮座する。

 

 映画館のような幅のあるスクリーン。

 人間の背丈ほどの直径を持つ巨大なレンズ。

 レンズの中には、戦争遺構"神風刀"。


 「試料、セット完了です」

 

 「いつでもいけます」

 研究員の声が響く。


 「これより、結晶投影実験を開始する」

 指揮を執るのは風間俊英。 

 その手を装置起動ボタンに近づける。


 「装置を起動したら、私以外は速やかに退出せよ」

 

 "必ず、成功させる。"


 覚悟を決め、ボタンに触れた。



 特別編入試験編、完。

 

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