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WABE ~すべてを失った少年が終末世界に抗い続ける物語~  作者: terakoya-8
特別編入試験

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14/18

thirteenth 違和感

 __ドン!

 強い踏み込み。

 えぐれる地面。


 先に動いたのは、

 高見澤。


 重量級。 


 だが、 

 速い。

 

 重さを感じさせない動き。


 加速する。

 距離が縮む。


 巨大なブレード。 

 振り上げられる。


 圧を感じる。


 まだ届かない。

  

 だが、

 確実にわかる。


 "受けてはいけない"。

 ブレードを強く握る。


 だが、

 渓人は屈しない。

 下がらない。


 ブレードが振ってくる。


 __ズガァン!!

 砕ける地面。

 揺れるフィールド。

 舞い上がる破片。


 渓人は、

 直撃を免れる。

 わずかに右へ。


「避けた!?」


「ありえない......」


 どよめく観客席。

 


 渓人のすぐ横には、 

 刃。


 左数センチ。

 紙一重。


 渓人は、

 そのまま前へ。


 チェイサーを構える。

 前に踏み込む。

 腕を振り上げる。


 真っ直ぐな視線。

 迷いのない動き。


 間合いを詰める。

 最短経路で。


 腕を振る。


 __ザシン!

 金属音。

 

 手応えは浅い。


 だが、 

 耐久値を削る。



 「削ったぞ!」 

 

 「あんなに近くで......」

 

 観客席の空気が変わる。

 


 高見澤のブレード。

 まだ上がっていない。


 もう一撃。

 背後から。

 

 しっかりと踏み込む。 

 足を引きつける。

 

 

 たが、

 高見澤が振り返る。


 次の瞬間、

 目の前にはブレード。


 常識外れの速度。

 薙ぎ払う動き。

 

 __ゴォォッ!!

 暴風。

 

 渓人はブレードを前へ出す。 

 左手を添える。


 両腕を曲げ、

 傾ける。

 

 咄嗟に。

 素早く。


 流す構え。



 だが、


 __ガァン!!

 走る衝撃。

 痺れる身体。


 いなしきれない。

 吹き飛ばされる。


 後ろへ滑る。

 

 視界の端。 

 耐久値の表示。


 “88%”


 たった一撃。 

 

 だが、 

 威力が違う。


 (......重い)


 根本が違う。


 一撃の重み。

 そして、

 圧。


 藤原とも。

 アントニーとも。


 高見澤はブレていない。

 小柄な体型。

 

 だが、

 振り回されない。


 コントロールしている。

 全身で。

 


 高見澤は、追ってこない。

 

 ブレードを前に出す。

 下に向ける。


 ずっしりとした構え。

 来るのを待っている。

  


 前の試合、 

 ブレードに当たる弾丸。 

 吸い込まれる。 


 そして、 

 光る。



 同じ構え。


 “壁”。

 突破不能の、巨大な壁。


 だが、

 渓人は、動じない。

 

 呼吸を整える。

 意識を集中させる。


 

 見える。


 重心。

 踏み込み。


 筋肉の動き。

 ブレードの軌道。

 

 そして、

 気づく。

 誰よりも先に。


 彼女はまだ、”本気”じゃない。


 思い出す。

 風間の指導を。


(......違う)

 教わった姿勢と比べる。


 本来なら、

 もっと床を踏み抜ける。


 もっと前へ重心を流せる。


 なのに、

 そうしていない。


 さっきの試合も......


 振り切っていない。

 直前で止めていた。

 

 だから、床が壊れていない。

 だから、防具が砕けていない。


 もし、本当に全力なら。


(......今ので、終わる)

 

 そじて、


 高見沢の呼吸。

 乱れていない。


 肩も上がっていない。

 筋肉の硬直もない。


 “消耗”が見えない。


 まるで。

 準備運動。


(まだ、上がある)


 観客席は気づいていない。


 圧倒的な威力。

 凄まじい衝撃。


 それだけで、“本気”だと思わされる。


 高見沢は、“制御している”。


 しかし、

 その理由がわからない。



 本当は、

 一撃で終わらせるタイプじゃないのか?


 それとも、

 相手を見るための手加減?


 はたまた、

 最高出力を出すためのお膳立て?

 

 

 頭をめぐる考え。


 だが、

 どれも違う。


 高見澤の様子が語る。


 まっすぐな視線。

 落ち着いた呼吸。


 集中している。

 

 油断した様子ではない。

 気を抜いているわけでもない。

 

 でも、

 本気じゃない。


 まるで。

 “何か”を警戒している。


 その瞬間。


 高見沢が、わずかにブレードを傾ける。

 ほんの数センチ。



 だが。

 空気が、変わる。


 __ゾワッ。

 本能が、粟立つ。


 感じる危険。


 さっきまでとは、比較にならない。


 観客席も気づく。


 ざわめきが、止まる。

 誰も喋らない。


 何が変わったのか、説明できない。


 だが。


 “触れてはいけない何か”。

 今そこにある。


 高見沢は、動かない。


 ただ。


 こちらを見ている。


 静かに。

 試すように。

 見極めるように。


 その視線を受けた瞬間。

 渓人は、理解する。


(......違う)


 高見沢は、手加減しているんじゃない。


 “調整している”


 崩れないように。

 壊れないように。


 このフィールドを。

 この防具を。



 __そして

 彼女自身を。

 

  


 

  

 一方、

 地下四階。


 振り切れるメーター。

 


 __ビーーッ!

 鳴り響く警告音。


「まずいな......」

 風間俊英。

 モニターを眺める。


 眉間にしわが寄る。

 

 画面には、

 適合率の表示。


 ”20%”


 __ガチャン。

 後ろから、解錠音。


「風間隊員、私だ」


桜井孝義さくらいたかよしだ」


 プロジェクトWABE、総司令官。

 この組織の、”司令塔”。


 銀色の髪。

 太い眉。

 高い背丈。


 落ち着い佇まい。


 積んできた経験、

 見た目にも表れる。

 


「入江渓人の件できた」

 真剣な表情。

 風間は覚悟を決める。


「彼には、まだ早い」

 立ち向かう。

 強く握られた拳。


「風間隊員、落ち着きたまえ」

 落ち着いた声。

 そのまま続ける。


「いま、プロジェクトWABEに必要なもの」


「君が、一番わかっているはずだ」

 


「でも、あの隊員は......」

 風間は思い出す。

 一人の隊員を。


 構造化した臓器。

 欠けた人間性。

 

 我を忘れて、戦う姿。

 苦しみながら、戦う姿。


 人間とは、

 かけ離れた何か。

 

 そして、

 最後には......



「だからこそだ」

 桜井の声。

 力強い。


「誰かが、受け入れなければならない」

 桜井は語る。


 そして、

 部屋を後にする。


 最近の出来事。

 不可解な現象。 

 

 思い出す。


 時間が止まる。

 停滞する。

 滞留する。


 異常現象。

 戦争遺構由来の。


 誰かが受け入れれば、

 収まる。


 しかし、

 誰かが受け入れれば、


 もう、

 後戻りはできない。


 (また、繰り返すのか......)



 風間は、

 モニターへ視線を戻す。


 “20%”


 その数字を、

 睨みつける。

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