Twelfth 重圧
入江渓人はフィールドに目をやる。
観客席は静まりかえる。
二つの影、
退治する。
片方は高見澤光。
小柄な体型。
大型のブレード。
肩に担ぐ。
__ガシン。ガシン。
重い足音。
重量タイプの防具。
圧を感じる。
もう一人。
川崎隆二。
細身。
高い身長。
手には短剣。
"サーベル"。
背中には狙撃銃。
"ウィザード"。
「......始め」
合図。
動き出しは、同時。
次の瞬間。
__ドン!
空気を揺さぶる。
重い一撃。
床をえぐる。
だが、
当たらない。
川崎が、消える。
(......速い)
背後を取る。
斬りかかる。
素早い動き。
ブレない視線。
ズレないブレード。
だが、
__ガン!
振り返りざまの一撃。
川崎を襲う。
ブレードで受ける。
しかし、
吹き飛ばされる。
(......読んでいる?)
速い。
力強い。
それだけではない。
噛み合っている。
どちらも強者。
これまでとは違う。
だが、
(関係ない)
静かに息を吐く。
「だからこそ、受かってこい」
藤原の言葉。
頭をよぎる。
(絶対、超える)
フィールドの端。
川崎。
ウィザードを構える。
引き金を引く。
__バシュン!
銃声。
弾丸は、
高見澤へ一直線。
だが、
__カン!
ブレードで弾く。
火花を散らす。
刀身。
わずかに光る。
__バシュン!
もう一発。
再び弾かれる。
いや、
"吸収"している。
刀身の光が増す。
__バシュン!
3発目。
刀身が強く光る。
次の瞬間、
踏み込む。
「チャージ」
凄まじい推進力。
飛び上がる。
防具の重さ。
武器の重量。
それらが”感じられない”。
川崎へ一直線。
構える。
体をねじる。
ブレードを振り抜く。
全身で。
__ガッ。
床が割れる。
川崎がいない。
側面。
突きの構え。
飛びかかる。
防具へ届いた。
耐久値が減る。
だが、
__ブン!
空気が揺れる。
大型のブレード。
川崎の腹部へ。
__ガシン!
防具が歪む。
吹き飛ばされる。
そのまま、壁へ。
叩きつけられる。
防具が割れた。
「防具......破壊」
間合いに入れば、
”一撃”。
観衆が、言葉を失う。
高見澤に目をやる。
息一つ乱していない。
ブレードを肩に担ぐ。
それだけ。
一瞬だけ、目が合う。
ほんのわずか。
だが、確かに伝わる。
“次はお前だ”
(次は、決勝)
渓人の中で実感が沸き上がる。
(負けない)
”超えてやる。”
決意を固める。
いざ、
フィールドへ。
地下四階。
風間俊英。
椅子に座る。
モニターを見つめる。
「......あれが、高見澤の“勝ち方”か」
小さく呟く。
効率。
最短。
そして、
圧倒。
「削るんじゃない。終わらせる」
視線が鋭くなる。
「真逆だな......入江君」
考えて勝つ者。
入江渓人。
押し潰して勝つ者。
高見澤光。
どちらが上か。
まだ、わからない。
だが、
「面白くなってきた」
風間は、わずかに口角を上げた。
メーターに目をやる。
安定している。
「だが......不安だ」
振り切れたメーター。
激しい脈動。
共鳴。
頭をよぎる。
(彼なら、やりかねない)
だが、
見守ることしかできない。
もう、止められない。
「もう、後戻りはできないぞ」
そう言い聞かせる。
「彼の二の舞は御免だ」
もう一度、数値を眺める。
一瞬、
跳ね上がる表示。
すぐに戻る。
「心の準備をしておこう......」
映像を試験会場に切り替えた。
観客席。
ざわめきが、消えない。
「さっきの......見たか?」
「とんでもない威力だ......」
声が交錯する。
だが、
まとまらない。
言葉にできていない。
理解が、追いついていない。
その時。
フィールドの端から。
重い足音が、ひとつ。
__ドン。
一歩。
それだけで、空気が変わる。
高見澤が、フィールドへ。
ざわめきが、止まる。
誰も、言葉を発さない。
理由は分からない。
ただ、本能的に。
“音を立ててはいけない”
そんな感覚。
視線が集まる。
だが、
誰も目を合わせ続けられない。
圧を感じる。
視線を跳ね返す。
高見沢は、何も気にしていない。
いつも通り。
ブレードを肩に担ぐ。
そのまま、定位置へ。
無駄な動きは、一切ない。
ただ立っているだけ。
反対側。
静かな足音。
入江渓人が、フィールドへ入る。
さっきまでのざわめきは、もうない。
代わりにあるのは
“見ようとする視線”。
さっきの試合。
あの戦い。
偶然ではないと、誰もが理解している。
だが、
比べてしまう。
高見沢と。
自然と。
無意識に。
視線が、行き来する。
重いブレード。
圧倒的な一撃。
対して。
無駄のない構え。
静かな呼吸。
研ぎ澄まされた動き。
真逆。
だからこそ。
空気が、張り詰める。
観客席の一角。
「……どっちが勝つと思う?」
誰かが、小さく呟く。
返事は、ない。
答えられない。
分からないからじゃない。
“決めつけてはいけない”。
フィールド中央。
距離を取って、向かい合う二人。
高見沢は、微動だにしない。
渓人は、静かに構える。
呼吸だけが、一定に流れる。
音が、消える。
観客席も。
空調も。
何もかもが、遠のく。
残るのは、
二人だけ。
その瞬間。
誰もが、理解する。
これは、ただの試合じゃない。
“決まる”試合だ。
「......始め」
その一言で、すべてが動き出す。
決勝が幕を開ける。




