Eleventh 攪乱
フィールドの中。
足音だけが響く。
向かいには、アントニー・トルー。
二丁拳銃。
防具は軽量タイプ。
上がった口角。
落ち着いた構え。
指を軸に、
くるりと回る拳銃。
無駄のない動き。
__音が立たない。
何を考えているか、分からない。
「......始め」
合図。
一歩、踏み出す。
踏み込む。
構える。
斬りかかる。
だが、
そこには誰もいない。
__プッ。
空気が抜けるような音。
わずかに聞こえる。
__カーン。
走る衝撃。
弾ける弾丸。
飛び散る破片。
わずかに防具が削られる。
威力は低い。
だが、
発砲音が静か。
(......どこだ)
__プッ。
背後。
振り向く。
チェイサーを構える。
__キィィン。
ブレードに当たる。
(......恐らく、アドオン)
踏み込む。
前へ。
__パンッ、パンッ!
連続する銃声。
だが、
渓人は止まらない。
横へ滑る。
銃弾を追い越す。
だが、
__バシュン。
発砲音。
__キュィィィン!
風切り音。
さっきとは、”違う”。
迫る弾丸。
守りの姿勢。
傾けるブレード。
__ガキィィン!
強い衝撃。
弾が、違う。
弾を流す。
だが、
もう一発。
__パン! パン!
乾いた銃声。
横に滑る。
スピードを上げる。
変わる位置。
変わる弾丸。
素早く。
何度も。
__翻弄されている。
このままではいけない。
武器を持ち替える。
チェイサーからシャークDMRへ。
狙うは。
”天井”。
__バシュン!
発砲する。
突き刺さる弾丸。
唖然とする観客席。
その時だった。
弾丸が光り出す。
繰り返し。
一定間隔で。
__位置が見える。
後ろ。
振り返る。
トリガーを引く。
__バシュン。
一つの音。
同時。
両者、身体をひねる。
弾丸をかわす。
今度は、右。
踏み込む。
構える。
アントニーの懐へ。
銃口を突き付られる。
ゼロ距離。
__バシュン。
響き渡る銃声。
__カァーン !
防具に当たる銃弾。
飛び散る火花。
削れる耐久値。
チェイサーに持ち替える。
踏み込む。
斬りかかる。
__シャー。
防具をなでる音。
手ごたえが浅い。
(......来る)
__バシュン。
発砲音。
二つの光。
同時に来る。
__キュィィィン!
風切り音。
構えるブレード。
わずかに傾ける。
腕を引く。
衝撃をいなす。
だが、
__カン!
防具に当たる弾丸。
隠された2発目。
遅れて届いた。
(......!?)
発射は同時。
着弾にズレ。
__バシュン。
今度も同時。
横へと滑る。
受けない。
__チューン。
地面に当たる。
弾丸をかわす。
懐に入る。
斬りかかる。
空を切るブレード。
かわされる。
(......右)
__プッ。
静かな銃声。
だが、
渓人は聞いていない。
”見て”いる。
振り向く。
__カン!
弾丸を弾く。
(......後ろ)
__パン!
乾いた銃声。
振り向く。
__カーン。
ブレードで受ける。
腕を引く。
衝撃をいなす。
__バシュン。
銃声。
__キュィィィン!
風切り音。
横に滑る。
銃弾をかわす。
そのまま__前へ。
足を出す。
引き寄せる。
斬りかかる。
__キーッ。
浅い手ごたえ。
決定打が__遠い。
届かないブレード。
離れていく距離。
シャークDMRは、
火力不足。
長引く戦い。
__タタタタタ。
連射。
横に滑る。
弾丸を交わす。
だが、
止まない弾幕。
渓人を追いかける。
そして、
__カン!
防具に。
弾丸が”追いつく”
削れる耐久値。
飛び散る破片。
視界の端。
”60%”
まだ余裕はある。
決定打が遠い。
違和感を感じる。
(......相手も同じ)
一撃は軽い。
だが、
確実に、決めてくる。
”計算された動き”。
__プッ。
背後。
振り向く。
__パン!
正面。
ブレードで受ける。
__バシュン。
右側。
かわす。
撃つ位置。
弾の種類。
撃ち方。
全てが異なる。
だが――
(......意図を感じる)
足が、止まる。
ほんの一瞬。
その瞬間。
__カン!
防具に当たる弾丸。
(......止まると、こう撃たれる)
視線が、動く。
アントニー。
口角は、変わらない。
ただ__
見ている。
(こいつ......)
撃っているんじゃない。
”誘導している”。
逃げる方向。
避ける動き。
それらに対応する。
”射撃パターン”。
__プッ。
静かな銃声。
だが、今は__
わかる。
踏み込む。
止まらない。
__キュィィィン!
風切り音。
当たらない。
”計算”を打ち破る
アントニーの口角、
わずかに止まる。
(......ズレた)
今までは、
すべてが”誘導通り”。
だが、今は違う。
乗って来ない。
__パン!
射撃。
弾丸が、外れる。
渓人は進む。
__前へ。
__バシュン!
迫りくる弾丸。
だが――
読める。
いや、
”わかる”。
身体を捻る。
かわす。
”最小”の動作で。
止まらない。
もっと前へ。
__プッ。
静かな銃声。
背後。
だが、振り向かない。
(そこじゃない)
踏み込む。
視界の端。
__捉えた。
アントニー。
距離、ゼロ。
銃口が上がる。
引き金。
__バシュン!
至近距離。
傾けるブレード。
弾く弾丸。
飛び散る火花。
そのまま、踏み込む。
懐へ。
チェイサーを振る。
だが――
浅い手応え。
アントニーの身体が、沈む。
回避。
(......まだだ)
左手。
シャークDMR。
押し付ける。
ゼロ距離。
引き金を引く。
__バシュン!
直撃。
防具が、弾ける。
耐久値が削れる。
だが――
まだ倒れない。
アントニーが、笑う。
至近距離。
二丁拳銃。
同時に、上がる。
(来る)
踏み込む。
撃たれる前に。
さらに内側へ。
至近距離。
ぶつかる視線。
アントニーの目が、動く。
その一瞬。
「テーザー」
電流。
__バチッ!
硬直。
ほんの一瞬。
(いける)
踏み込む。
振り抜く。
__ザシン!
深い手ごたえ。
防具が、裂ける。
耐久値が、一気に削れる。
止まる。
__ビーッ!ビーッ!
警告音。
「......防具、破壊」
審判の声。
「勝者――入江渓人」
静寂。
そして。
ざわめき。
アントニーが、ゆっくりと息を吐く。
拳銃を下ろす。
「……やるな」
小さく、笑う。
口角は、もう上がっていない。
渓人は、何も言わない。
ただ、呼吸を整える。
視界の端。
耐久値。
”23%”
ギリギリだった。
(……勝った)
実感が、遅れてくる。
だが。
止まらない。
視線を上げる。
(次の相手はどちらなのか)
第二試合を見届ける。
一方、その頃。
地下四階。
大量の装置。
多彩な実験器具。
「遺品No.033」
「解析結果:True」
画面にに表示される。
「......やっぱりか」
風間俊英。
画面を眺める。
数値が、並ぶ。
エネルギー反応。
波形。
不規則な脈動。
だが、
一瞬。
一定の周期。
揺らぎのないピーク。
(……共鳴している)
風間の指が止まる。
画面を切り替える。
別のウィンドウ。
試験会場の映像。
戦闘記録。
異質な”訓練生”。
構える。
踏み込む。
斬りかかる。
その瞬間。
跳ね上がる数値。
遺品No.033。
ケースの中。
静かに置かれている、”短剣”。
点滅する。
同じ周期で。
「......”WABE”が帰ってきた」
短く、息を吐く。
「だが__まだ早い」
端末を操作する。
警告ログを、非表示にする。
外部出力を、遮断。
すべてを、”隠す”。
最後に、もう一度だけ。
映像を見る。
戦闘記録。
その姿を、じっと見つめる。
「......似ている、か」
誰に、とは言わない。
だが、
その言葉には、確かな重みがあった。




