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WABE ~すべてを失った少年が終末世界に抗い続ける物語~  作者: terakoya-8
特別編入試験

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11/12

Tenth 特別編入試験

 __2月6日。

 ついに試験が始まる。


 会場は思ったよりも広い。



 長方形のフィールド。

 周囲を囲む観客席。


 足を踏み入れる。

 靴音が響く。


 それだけが、こだまする。


(……ここか)

 短く、息を吐く。


 緊張は、ない。



 視線を上げる。

 観客席へと。


 無数の視線。


 

 評価する目。


 見極める目。



 だが、

 刺さらない。


 (やれることをやるだけ)


 端末を起動する。

 __装備展開。



 防具が形成される。


 手に馴染むチェイサー。


 背中には、シャークDMR。


 参加者は128名。

 通過できるのは、



 わずか”4名”。



 ゆっくりと、構える。

 呼吸を整える。


「第一試合 入江渓人」


 アナウンスが響く。


 一歩、踏み出す。

  

 向かいには見知らぬ候補生。



 硬い構え。


 浅い呼吸。


 揺れる視線。



 対するは入江渓人。



 無駄のない構え。


 落ち着いた呼吸。


 真っ直ぐな視線。



「ルールは単純だ」

 審判の声。


「防具の耐久値がゼロになった時点で敗北」


「制限時間はなし」


「形式はトーナメント戦」


「__始め」

 その瞬間。



 世界が、静かになる。



 相手が動く。


 わずかな踏み込み。


 だが、

 遅い。

 

 入江は、同時に動く。

 __そして



 “追い越す”。



 距離を詰める。


 一歩。


 もう一歩。



 最短。


 最速。


 無駄のない軌道。


 

 斬りかかる。

 __ザシン。



 深い手ごたえ。


 防具に走る亀裂。


 次の瞬間、

 砕け散る。


 静寂が訪れる。


「……勝者、入江渓人」


 短い。

 あまりにも短い決着。



 ざわめきが広がる。


 会場を包む。


 観戦席。


「......今の見たか?」


「ああ......」


「何だあいつ......」


「......ただの訓練生じゃないぞ」



 名前も知らないはずの存在。

 その一挙一動が、観衆の記憶に焼き付く。



 誰かが叫び、誰かが沈む。

 勝ち上がる者、敗退する者。



 別のフィールド。

 

 間合いの中。

 刃の届く距離。

 届いたはずだった。


 だが――数センチ。

 その差で、防具が砕ける。


 わずかな”差”が勝敗を分ける


 128から64へ。




 __第二試合。


 相手が動く。

 速い動き。


 だが、

 渓人は動じない。


 一歩、


 ”前へ”。


 ブレードを構える。


 ”迷い”がない。


 斬りかかる。

 __ザン。


 決着。


 同じ動きが、何度でも繰り返される。


 

 高い”再現性”。



 焦り。


 迷い。


 ズレ。



 それらが感じられなかった。


 64から32へ。


 空気が変わる。


 誰もが強い。


 誰もが、落ちる可能性を持っている。




 __第三試合。


 開始の合図。

 速い踏み込み。


 相手に、反撃の余地を与えない。

 距離がなくなる。


 __カキン。


 相手もただでは終わらない。

 ブレードで止める。


 だが、

 渓人の勢いは止まらない。


「テーザー」

 

 電流が走る。

 防御が崩れる。


 (......今だ)


 踏み込む。


 斬りかかる。



 __ザシン。


 防具を砕く。

 音を置き去りにする。


「……勝者、入江渓人」

 短い宣告。



 ざわつく観客席。

 早すぎる決着。


 32から16へ。


 静まり返る観客席。

 もう、誰も軽く見ていない。




 __第四試合。


 相手は距離を取る。


 警戒する。



 牽制射撃。


 だが、

 渓人は止まらない。


 身体をひねる。

 弾丸をかわす。


 ”最小”の動作で。


 前へと進む。

 一歩ずつ。

 だが、


 ”確実”に。


 そして、

 懐へ。


 ゼロ距離。

 斬る。


 防具を砕く。



 残るは、8。

 相手の”質”が違う。

 空気が重い。




 __第五試合。


 相手は二刀流。


 地面を蹴る。

 距離を詰めてくる。


 二本のブレード。

 左右からの挟撃。


 だが、


 片足を後ろに下げる。

 引き寄せる。


 後ろへとかわす。


 相手のブレードが空を切る。


 距離をとる。

 武器を持ち換える。


 すかさず、射撃。

 連射。



 1発。


 2発。


 そして、

 3発。



 外さない。


 防具を削る。


 だが、

 相手も止まらない。


 地面を蹴る。

 

 加速する。


 斬りかかる。


 

 しかし、

 渓人は動じない。


 チェイサーで受ける。


 わずかに、傾ける。



 __シャー。

 相手のブレードが滑る。

 バランスが崩れる。



 (......今だ)



 構える。


 踏み込む。


 斬りかかる。

 


 __ザシン。

 深い手ごたえ。


 防具を削る。

 ヒビが生える。


 それでも、

 相手は止まらない。


 

 向かってくる。


 観客は息を吞む。



 だが、

 渓人は動じない。


 身体をひねる。


 

 空を切るブレード。


 崩れるバランス。


 落ちる防具の破片。


 

「......勝者、入江渓人」



 

 ざわめく観客席。



 目を見開く者。


 口を開く者。


 驚く者。



 そんな中、


 静かに見守る候補生。


「......動き速いネ」

 小さく、呟く。



 技術。


 精度。


 完成度。


 

 だが、


「何されてモ、続けられるかナ」


 男の名は

 アントニー・トルー


 静かに、立ち上がる。


「準備だネ」

 そうつぶやく。


 観客席を後にした。



 残ったのは――

 わずか、4人。

 

 4人の姿。

 空中に映し出される。


 入江渓人(いりえけいと)

 無駄のない構え。


 落ち着いた呼吸。


 ブレない視線。


 圧倒的な精度。


 ”最速で終わらせる者”。




 アントニー・トルー。

 わずかに上がる口角。


 ——笑っている。


 その一手先は闇の中。


 手には拳銃型の武器。

 ”ハヤブサ”。


 二丁拳銃。


 3種の弾丸。


 ”かく乱する者”。




 川崎隆二(かわさきりゅうじ)


 狙撃銃、”ウィザード”。

 軽量ブレード、”サーベル”。


 真逆の武器。

 変化する立ち回り。


 2つの顔。


 __変化する。


 その瞬間、

 目の前には別人。

 

 狙う目から斬る目へ。


 ”切り替わる者”




 高見澤光(たかみざわひかり)


 当たれば最後。


 重量級ブレード、”ギガント”。

 地面に突き刺さる。


 沈む空気。


 立っているだけ。

 ただそれだけで圧になる。


 “当たれば終わる者”。


  


 張り詰める空気。


 ここから先は、別次元。


 入江は、ゆっくりと構える。


 視線は、もう揺れない。


 試験は、まだ終わらない。


 

「......どんな相手でもかかってこい」



「準決勝、入江渓人vsアントニー・トルー」


 呼ばれる名前。

 視線が交差する。



 逃げ場はない。

 だが、


 渓人は前へ。


 

 ”決戦”が始まる。


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