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第6話:ジョウロで害虫駆除、そして奴隷少女の解放

「ヒヒッ! エルフの落ちこぼれが、おとなしく縛られろ!」


『黒の森』の境界付近。

地面に倒れ込むエルフの少女に向かって、下種な笑みを浮かべた奴隷商人の男が鞭を振り下ろそうとしていた。


少女は絶望に目を瞑り、固く身を縮こまらせる。


だが――期待された打撃音は響かなかった。


「……あ?」


奴隷商人が間抜けな声を上げる。

彼が振り下ろしたはずの頑丈な皮鞭は、先端から跡形もなく消滅していたのだ。


「悪いな、俺の敷地の目の前でゴミを散らかされるのは不快なんだ」


静かな声とともに、俺――レイルは、片手に青い金属製のジョウロを担ぎながら彼らの前に立ち塞がった。後ろには、冷ややかな殺気を放つアイリスが控えている。


「あぁん!? なんだお前は! 俺たちは正規のライセンスを持った奴隷商人だぞ! 邪魔するってんなら――」


「アイリス、害虫駆除だ」


「はっ! お任せください!」


俺が肩に担いでいたジョウロを軽く傾け、水を入れる動作をする。


## **【全自動神造オート・クラフト通知】**

『装備:導きのジョウロ』の自動強化が発動中。

⇒ **【神器・水神の怒り(レベル1)】** に進化。

**【付与効果】**

・放たれる一滴の水滴が、最上級水属性攻撃魔法『グランド・デルージュ』と同等の威力を発揮。


「ただの……ジョウロ……?」


奴隷商人たちが呆気にとられたその瞬間、ジョウロの先から放たれたのは、綺麗な水滴――ではなく、空間ごと削り取るような高圧の水流刃ウォーターカッターだった。


**――ズバババババンッ!!!!**


「「「ギャあぁぁぁぁぁっ!?」」」


爆音とともに、奴隷商人たちの身につけていた凶器や防具が一瞬で微粒子となって吹き飛んだ。

男たちは全員、一傷も負わされることなく(服と武器だけを正確に削ぎ落とされ)、あまりの威圧感に白目を剥いて地面に崩れ落ちた。


わずか一秒。ジョウロを一振りしただけで、20人近いならず者たちが完全無力化されたのだ。


「ひ……あ……」


一部始終を見ていたエルフの少女は、腰を抜かしたまま絶句していた。


「あ、大丈夫か?」


俺が歩み寄り、しゃがみ込んで声をかける。

少女はビクッと体を震わせたが、俺の目を見ると、怯えとともに驚きを隠せない様子で目を見開いた。


「あなた……人間……? なのに、どうして……そんなに優しくて、圧倒的な『世界樹の気配』がするの……?」


「俺? ただのクラフト職人だよ。ちょっと庭の水やり用のジョウロを使っただけだ」


「ジョウロで空間を引き裂く人間がどこにいますか……!」


少女が思わずツッコミを入れてくる。どうやら会話する余裕はあるようだ。


俺は彼女の首に巻きつけられている、禍々しい紫色の金属でできた『奴隷の首輪』に手を伸ばした。


「あ、だめです! その首輪は王国の禁忌魔法で作られた『絶対解除不能の首輪』で、無理に外そうとすると爆発して――」


「【クラフト】――解体・浄化」


カチッ。


『対象:奴隷の呪印首輪』

『【全自動分解・神聖化】を開始します』

『⇒【神聖なる精霊のペンダント】に自動変換完了』


言葉が終わるよりも早く、絶対に外れないはずの黒い首輪は光の粒子となって砕け散り、彼女の首元には美しく輝くエメラルドのペンダントがちょこんと残された。


「……え?」


エルフの少女は首元を触り、自由になったことを確認すると、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔になった。


「首輪が……消えた……? 呪いが、浄化された……!?」


「よし、これで自由だ。怪我もひどいし、中に来て休むといい」


俺は彼女を横抱き(お姫様抱っこ)で抱え上げると、そのまま要塞へと足を進めた。


「ひゃいっ!? あ、あのっ……私、薄汚い奴隷で、しかもエルフの里でも『無能』って捨てられた落ちこぼれで……!」


「無能?」


俺は足を止め、彼女を見つめた。


「俺もな、数日前まで『無能な雑用係』って言われてパーティを追い出されたんだよ。だから、そんな言葉気にしなくていい」


「レイル様……」


彼女の瞳に、ポロポロと大きな涙が溢れ出した。


---


要塞の中に入り、アイリスが用意した温かいお茶と、庭で採れた『黄金リンゴ』を差し出す。


「う……うますぎます……! なんですかこのお茶と果物は……! 体の奥から力が満ちてきて、傷が全部消えていきます……!」


少女はボロボロと涙を流しながら、夢中で果物を頬張った。


落ち着いたところで、彼女は改めて深々と頭を下げた。


「……改めまして、私はエレナと申します。エルフの里で『万物の声を聞く』という戦闘に役に立たないスキルしか持たず、里を追放されて奴隷商人に捕まっていました……」


「万物の声を聞くスキル……?」


俺が首を傾げると、エレナは申し訳なさそうに言った。


「はい……植物や精霊の声が聞こえるだけの、地味なスキルです……」


「いや、それめちゃくちゃすごいだろ!?」


俺は思わず身を乗り出した。


「うちの要塞の庭、いま『神農園』になってて色んな神級の植物が育ってるんだけど、どれにどんな肥料をやればいいか悩んでたんだよ! 精霊や植物の声が聞こえるなら、最高の庭師になれるじゃないか!」


「え……? 庭師……? 私のスキルが、役に立つんですか……?」


「役に立つどころか大歓迎だよ! どうだエレナ、ここで俺たちの仲間として一緒に暮らさないか?」


「レイル様……!」


エレナの目が大きな輝きを宿す。


「はいっ! 私、レイル様のために一生懸命働きます! あなた様についていきます……!」


こうして、要塞に2人目のヒロイン――エルフの少女エレナが加わり、俺の「全自動要塞」はさらに賑やかになっていくのだった。

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