第5話:全自動神農園と、森に倒れていたもう一人の『訳あり』
元パーティ『暁の獅子』を完全に退けてから、数日が経過した。
彼らが冒険者資格を剥奪され、王都から追放されたという噂は、アイリスの伝達によってすぐに届いた。もう俺の平穏な生活を脅かす者は誰もいない。
「ふう……今日も良い天気だな」
俺――レイルは、要塞のバルコニーから広大な庭を見下ろしていた。
数日前までただの枯れ草だらけだった庭は、今や見渡す限りの絶景へと変わっている。
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## **【全自動神造通知】**
『エリア:要塞庭園』の自動強化が完了しました。
⇒ **【神樹と湧水の極上庭園(レベル1)】** に進化。
**【付与効果】**
・『神農園』:植えた作物が『10分』で完熟・神級化
・『万能霊泉』:飲むだけで全病全毒の完治・寿命の延伸
「10分で完熟って……農家の人が泣くぞ、これ」
試しに庭へ下り、昨日適当に植えておいたリンゴの種を見る。
すでに樹齢数十年クラスの大樹へと急成長しており、そこには黄金に輝く『黄金リンゴ(神級食材)』がたわわに実っていた。
もぎ取って一口かじる。
「甘っ……!? シャキシャキで、口の中に果汁と濃厚な魔力が広がる……!」
ただのリンゴのはずなのに、一口食べただけで体の底から力が湧き上がってくるのを感じた。
「レイル様ぁ〜! おはようございます!」
屋敷から出てきたのは、エプロン姿のアイリスだ。
王都最強の姫騎士だった面影はどこへやら、最近ではすっかり俺の要塞の快適さに毒され、すっかり甲冑を脱いで私服で過ごすことが増えていた。
「おはようアイリス。ちょうどいいところに。このリンゴ、食べてみなよ」
「わぁ、いただきます! ……もぐ。……〜〜〜〜っっっ!?」
一口食べた瞬間、アイリスは目を丸くしてその場にへたり込んだ。
「な、なんですかこの果物は……!? 食べた瞬間、私の中に眠っていた魔力回路が完全に覚醒して、レベルがさらに5上がりましたよ!?」
「え、リンゴ食べただけでレベル上がるの……?」
「上がりまくります! 意味が分かりません! レイル様、あなた様は農耕の神か何かですか!?」
「だからただのクラフト職人だって……」
アイリスが黄金リンゴを美味しそうに頬張る姿を微笑ましく見ていると――
**ピピッ……**
脳内に要塞の警戒アラートが鳴り響いた。
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## **【要塞防衛システム通知】**
『防衛境界線(エリア外縁)』にて生命反応を感知。
・対象:エルフ(瀕死状態)
・状況:奴隷商人および追撃の黒服集団(約20名)に包囲中
要塞のモニターウィンドウが自動で目の前に開き、敷地のすぐ外側の様子が映し出される。
そこには、ボロボロの布を纏い、首に『奴隷の首輪』をはめられた、長い耳を持つ美しい少女が倒れていた。
そして、彼女を囲むように、下種な笑みを浮かべた男たちが武器を構えている。
「ヒヒヒ! 逃げられると思ったか、エルフの落ちこぼれが!」
「お前のその『万物の声を聞く』とかいう無能スキル、奴隷市場じゃいい見世物になるんだよ!」
「くっ……離しなさい……!」
エルフの少女は必死に抗うが、奴隷の首輪から流れる電流によって地面に伏せってしまう。
モニターを見ていたアイリスの顔から、一瞬で笑みが消えた。
「奴隷狩り……! それにあの首輪、王国の禁忌とされている強密売組織のものです! 無抵抗の少女を痛めつけるなど……!」
「……行こうか」
俺は静かに立ち上がった。
自分と同じように「無能」と蔑まれ、虐げられている者を見捨てる趣味は、俺にはない。
「アイリス、ちょっと庭の手入れのついでに、害虫駆除をしてくるよ」
「はい、レイル様! 喜んでお供いたします!」
俺は手にした『全自動強化されたジョウロ(なぜか神器級)』を肩に担ぎ、要塞の外へと足を踏み出したのだった。
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