第4話:押し寄せる元パーティと、完全なる「ざまぁ」
アイリスが我が家に居着いてから数日。
『全自動神造』によって、元ボロ小屋の要塞はさらに進化を遂げていた。
庭には自動で最高級の野菜やフルーツが実る『神農園』が完成し、室内にはいつでも好きな料理が出てくる『全自動シェフ機能』まで追加された。
「レイル様ぁ……! 今日の朝食のオムレツも信じられないほど美味しいです……! 私、もう王宮の料理には戻れません……!」
銀髪の姫騎士アイリスは、完璧に俺の要塞の快適さに骨抜きにされていた。
そんな平和な時間を破るように――要塞の屋外モニターに、無粋な訪問者の姿が映し出された。
「おいレイル!! 中にいるんだろ!! 出てこい!!」
モニター越しに怒鳴り散らしているのは、見覚えのある顔――『暁の獅子』のリーダー・グラハムだ。
後ろには魔導士のセリアと、重騎士のボルクもいる。全員、数日で見違えるほど落ちぶれ、装備はボロボロ、顔はやつれ果てていた。
「あら……あの薄汚い者たちは誰ですか?」
アイリスが紅茶を飲みながら、冷ややかな視線をモニターに向ける。
「俺を追放した、元パーティの奴らだよ」
「ほう……」
アイリスの目が、獲物を狙う肉食獣のように鋭く細められた。
「まあ、一応話を聞いてみるか」
俺は要塞の玄関扉を開け、庭へと向かった。アイリスも静かに俺の後ろについてくる。
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「ハッ! やっと出てきやがったか無能が!」
俺の姿を見るなり、グラハムは勝ち誇ったような下衆な笑みを浮かべた。
「おいレイル、大層なカラクリ屋敷に隠れていい気になってるようだがな、お前の浅知恵なんてお見通しだぞ! お前が去ってから俺たちの装備が壊れたのは、お前が事前に何かしらの呪いでもかけていたからだろう!」
「……は?」
開いた口が塞がらないとはこのことだ。自分のメンテナンス不足を、俺の呪いのせいにするとは。
「だが安心しろ! 優しい俺たちは、お前をもう一度『暁の獅子』の専属雑用係として雇い直してやる!」
セリアが腕を組みながら、上から目線で言い放つ。
「感謝しなさいよねレイル。本来ならギルドに訴えて追放どころじゃ済まなくしてあげるところだったんだから。……ほら、早く私たちの装備を元通りにしなさい! 今夜のキャンプの設営も全部やりなさいよ!」
ボルクもヘラヘラと笑いながら頷く。
「そうだぞ。俺たちの飯の準備もな。お前みたいな無能を置いてやるんだ、タダ働きでも当然だろ?」
彼らは完全に勘違いしていた。
俺が「頼めばいつでも戻ってくる都合のいい奴隷」だと本気で思っているらしい。
俺がため息をつき、口を開こうとしたその時――
「――控えよ、無礼者どもが」
俺の後ろから、凛とした冷徹な声が響いた。
「ああ!? なんだお前は、レイルの女か――」
グラハムが横柄に振り向いた瞬間、その顔が激しく強張った。
セリアもボルクも、一瞬で顔面を蒼白にしてガタガタと震え始める。
そこに立っていたのは、王立騎士団の最高正装を纏い、腰に国宝級の宝剣を差した、王都最強の姫騎士アイリス・ヴァルハイトその人だったからだ。
「あ、アイリス・ヴァルハイト卿……!? な、なぜこんな最果ての地に……!?」
「私の問いに答える前に、貴様らの無礼な口を慎めと言っているのだ」
アイリスは氷のような眼光でグラハムたちを見下ろす。その全身から放たれる圧倒的な威圧感(覇気)に、グラハムたちは膝を突いて平伏せざるを得なかった。
「レイル様はな、災厄級モンスター『グラン・グリフォン』を一撃で打ち倒し、この私を救ってくださった偉大な『神級クラフト師』であり、私の敬愛する師だ」
「「「は……? 神級……!? 災厄級を一撃……!?」」」
グラハムたちの目が飛び出さんばかりに見開かれる。
「貴様らのような有象無象が、レイル様の寛大な恩恵に預かっていたことすら身程知らずだというのに、あまつさえ暴言を吐き、奴隷のように扱おうとするとは……万死に値する!」
**ジャキッ!**
アイリスが宝剣を半ば抜き放つ。その殺気だけで、グラハムは恐怖のあまり泡を吹きかけた。
「ひぃっ……! 違っ、違うんですヴァルハイト卿! 俺たちはただ、レイルに……!」
「黙れ! 貴様ら『暁の獅子』の横暴と無能ぶりは、すでにギルドマスターおよび王宮にも報告済みだ。本日をもって『暁の獅子』は完全解散、ならびに全冒険者資格の永久剥奪が決定した!」
「なっ……資格剥奪……!? そんな、俺たちの実績は――」
「実績だと? 貴様らの過去の戦果はすべて、レイル様が裏で施していた神級のメンテナンスとバフのおかげだったのだろうが! レイル様を失った途端にFランクの魔物にすら苦戦するような偽物どもが、増長するな!」
アイリスの容赦ない事実の提示に、グラハムは完全に打ちのめされたように絶望の表情を浮かべた。
「レイル……! 頼む、助けてくれ!! 俺たちが悪かった! お前がいないと俺たちは生きていけないんだ!!」
グラハムが必死に俺に手を伸ばし、地面に頭をこすりつけて命乞いをしてくる。セリアも涙目になりながら「お願い、助けて!」と叫んでいる。
だが――俺の心は1ミリも動かなかった。
「……今さら遅いよ」
俺は冷ややかに言い放った。
「俺はただの無能な雑用係なんだろ? 君たちみたいな『格の高いSランク様』に、俺みたいな地味なクラフト職人はふさわしくない。……あとの処理はアイリス、よろしく」
「はっ! お任せください、レイル様!」
「レイルー―――ッ!?」
アイリスの合図とともに、要塞の自動防衛システム(圧迫力場)が発動し、グラハムたちは悲鳴を上げながら要塞の敷地外へと吹き飛ばされていった。
冒険者資格を奪われ、装備も失い、信用もゼロになった彼らに、もはややり直す道はない。
「ふう、すっきりしましたね、レイル様」
「ああ、ありがとうアイリス」
晴れ渡る空の下、俺は笑みを浮かべた。
俺を縛るものは、もう何もない。
この『全自動』の要塞とスキルで、これからは自分の好きなように、自由で快適な最強の生活を送るだけだ。
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