第3話:助けた少女は最高峰の姫騎士、そして完全なる無双
「そこまでだ!」
俺の声が、静まり返った『黒の森』に響き渡る。
倒れていた銀髪の少女――高級感のある甲冑を纏った姫騎士が、信じられないといった様子で目を見開いた。
「な……!? バカな、来ちゃだめだ! こいつは災厄級モンスター『グラン・グリフォン』だぞ! 一体で一国の騎士団を壊滅させるようなバケモノなんだ、逃げて――!」
少女の悲痛な叫びを余所に、グラン・グリフォンは邪魔が入ったことに苛立ったのか、鋭い鉤爪をこちらへ向けて振り下ろしてきた。
空気すら引き裂く、必殺の一撃。
だが――俺の目には、その動きがまるで亀のように遅く見えていた。
(レベル150のステータスと、要塞のバフが乗っているからか……?)
俺は避ける動作すら面倒に思い、ただ手にした『オリハルコンの神剣』を横一文字に軽く振るった。
ただの、素振りのような一撃。
**――ズバァンッ!!!!**
次の瞬間、衝撃波が森を吹き飛ばした。
「ガ、ア……!?」
グラン・グリフォンは咆哮をあげることすら許されず、巨大な体が真っ二つに切断され、そのまま地表に激突した。
たった一振りの、攻撃とすら呼べないような動作で、災厄級の魔物が即死したのだ。
さらに、脳内にシステム音が響く。
『対象:グラン・グリフォンの死骸』
『【全自動解体・素材精錬】を開始します』
『⇒【神竜の羽衣】【最上級魔核】に自動変化しました』
死骸は一瞬で光の粒子となり、最高級のレア素材へと変わって俺のリュックの中に自動納品された。
「……え?」
一部始終を目撃していた銀髪の少女は、完全に思考が停止した様子で口を大きく開けていた。
「災厄級を……一振りの素振りで……? しかも、一瞬で跡形もなく完全解体した……!?」
「あー、大丈夫か? かなり怪我をしているみたいだけど」
俺が声をかけながら彼女に近づくと、少女はビクッと体を震わせ、弾かれたように床……いや、地面に膝をついた。
「あ、ありがとうございます! 命を救われました! 私は王都騎士団団長、アイリス・ヴァルハイトと申します!」
アイリスと名乗った少女は、俺を畏怖と崇拝が入り交じった目で見上げてくる。
「……ん? 騎士団長?」
「はい! 偵察中にこのグリフォンに襲われ、万事休すかと思いました……。まさか、このような深林に、神のごとき伝説の剣聖様が隠棲されていたとは……!」
「いや、俺はただの元雑用係の【クラフト職人】だけど……」
「そんな冗談を! 災厄級を一撃で屠り、気配だけで周囲の魔物を平伏させるお方が、ただの職人なわけがありません!」
(気配だけで平伏……あ、要塞の自動防衛オーラが出っぱなしだったか)
「とりあえず、立ち上がれないだろ。俺の家に来るといい。応急処置くらいはしてやるよ」
「は、はい! お邪魔させていただきます、剣聖様……!」
「……レイルでいいよ」
---
アイリスを連れて要塞(元・ボロ小屋)へと戻る。
自動ドアが滑らかに開き、白磁と魔導金属で構成された要塞の内部へ踏み入った瞬間、アイリスは「ひいっ!?」と情けない声を上げてその場にへたり込んだ。
「な、なんですかこの建物は……!? 王宮の最深部よりも濃密で美しい魔力が充満している……! 傷が……私の全身の傷が、ただここに立っているだけで完治していく……!?」
「あー、それ要塞の自動バフだから。まあ適当にくつろいでよ。お茶でも淹れるから」
俺が自動調理場から出してきた『神級に自動強化された特製ハーブティー』を差し出すと、アイリスは震える手でそれを受け取り、一口飲んだ。
「〜〜〜〜っっっ!?」
あまりの美味さに言葉を失い、そのまま頬を押さえてプルプルと震えだすアイリス。
「な、なんという芳醇な香り……! 飲んだ瞬間に全魔力がみなぎり、限界突破していくのを感じます……! レイル様、あなた様は一体何者なのですか……!?」
「だから、追放されたただのクラフト職人だって。昨日、パーティをクビになったばかりなんだ」
「……はい? 追放……?」
アイリスの目が点になった。
「このような、神の如き領域に達したお方を……追放……? どこの愚か者ですか!? どの国の、どのような無能がそのような正気とは思えぬ愚行を!?」
「『暁の獅子』っていうSランクパーティのグラハムって奴なんだけど」
「『暁の獅子』……! あの、最近調子に乗っている小物どもですか!」
アイリスの顔から一瞬で優しさが消え、本物の騎士団長らしい苛烈な冷徹さが露わになった。
「許せません……! レイル様のような至宝を無能扱いし、あまつさえ追放するなど、人類全体の損失です! 今すぐ騎士団を動かして、あいつらを国家叛逆罪で処刑しても良いくらいです!」
「いやいや、そこまでしなくていいよ。俺は今、この要塞で静かに暮らせて快適だし」
「おお……なんと温厚で慈悲深い……!」
アイリスはうっとりと胸の前で手を組んだ。
「レイル様! お願いです、私をあなたの従者……いえ、弟子にしてください! この命、すべてあなた様に捧げます!」
「えぇ……」
こうして、俺の要塞に最初の居候(しかも王都最強の姫騎士)が転がり込んでくることになったのだった。
---
一方その頃――王都のギルド。
「おいグラハム! お前たちのせいで『暁の獅子』のSランク昇格が取り消しになったぞ!!」
ギルドマスターの怒号が響き渡っていた。
「なっ……!? なぜですかギルドマスター! 俺たちは実績を残してきたはずだ!」
「バカ者が! お前たちが昨日提出したクエストの成果物、全部『手入れ不足による不良品』として依頼主から激しいクレームが入ったんだよ! 装備の劣化も著しく、とてもSランクの戦力とは認められん!」
「くそっ……! 全部レイルだ……! あいつがメンテナンスをサボって逃げたから……!」
グラハムは青筋を立てて悔しがっていたが、彼らはまだ気づいていなかった。
レイルという「全自動の神」を失った自分たちが、すでに坂道を転がり落ちるように崩壊し始めているということに。
少しでも「面白い」「続きが気になる!」と思っていただけたら、ページ下部の**【★★★★★】**での評価と**ブックマーク登録**をしていただけると、執筆の大きな励みになります! よろしくお願いいたします!




