第2話:一晩で出来上がった要塞と、勝手に爆増するステータス
「……んん……なんだか、すごく熟睡できたな……」
翌朝。
俺――レイルは、まぶしい光の中で目を覚ました。
体が軽い。
昨日までSランクパーティ『暁の獅子』で、毎日不眠不休で全員の道具を手入れしていた疲労が、綺麗さっぱり消え去っている。
それどころか、腰に当てている背もたれの感触が、昨日までの腐った木箱のそれではない。
しっとりと肌に吸い付くような、最高級のシルクと羽毛の感触だ。
「……え?」
ガバッと跳ね起き、俺は自分の置かれている状況に絶句した。
そこは、昨日まで雨漏りがしていたボロ小屋ではなかった。
壁は白磁のように滑らかな謎の金属で覆われ、天井には魔導具の柔らかな光が室内を照らしている。
俺が寝ていたのは、王族でも使わないような豪華なキングサイズベッドだった。
視界の端に、青いウィンドウが浮かび上がる。
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## **【全自動神造通知】**
『拠点:廃屋』の自動強化が完了しました。
⇒ **【絶対不可侵の魔導要塞(レベル1)】** に進化。
**【付与効果】**
・物理/魔法攻撃の完全無効化(外壁)
・室内における全状態異常の即時回復・疲労完全回復
・自動環境調整(常に最適な温度・湿度を維持)
「一晩放置しただけで、本当に要塞になってる……!?」
唖然としながら立ち上がり、室内を見回す。
部屋の隅には見たこともない豪華な調度品が並び、奥には湯気が立ち上る広大な『自動温水風呂』まで完備されていた。
さらに、俺自身のステータスを開いて言葉を失う。
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## **【所有者】** レイル
**【レベル】** 1 ⇒ **150**
**【固有スキル】** 【全自動神造】
**【所有称号】** 【要塞の主】【神殺しの芽】
**【ステータス】** 測定不能(要塞内での自動バフが永続適用中)
「レベルが150……!? 待て待て、Sランク冒険者のグラハムたちだってレベル60前後だぞ!?」
原因はすぐに分かった。
この要塞が自動で集めてくる微細な大気の魔力と、自動防衛機能が『黒の森』から侵入しようとした危険な魔物を夜間に全自動で撃退していたことで、経験値がすべて俺に加算されていたのだ。
「俺、本当にベッドで寝てただけなんだけど……」
ハハ、と乾いた笑いが出る。
努力して手に入れた力じゃない。
だが、あいつらに「無能」と切り捨てられた俺のスキルが、ただ『本気を出した』だけでこのざまだ。
◇◆◇
腹が鳴ったので、試しに要塞の自動調理場に行ってみることにした。
『対象:食材(リュックにあった干し肉と干しパン)』
『自動調理・神級昇華を開始します』
パッと光が弾けたかと思うと、パサパサの干し肉は肉汁が溢れ出す極上の『特選竜肉のステーキ』に変わり、カチコチの干しパンは焼き立ての『極上焼きたてクロワッサン』に変貌していた。
「う、うますぎる……! なんだこれ、口の中でとろける……!」
一人で豪華すぎる朝食を堪能していると――
**ドオォォォォン……!!**
要塞の外から、大地を揺るがすような凄まじい衝撃音が響いた。
「な、なんだ!?」
要塞の壁が透過し、外の様子がモニターのように映し出される。
そこには、体長10メートルを超える巨体を持った漆黒の魔物――災害級モンスター『グラン・グリフォン』が、要塞の目と鼻の先で暴れていた。
そして、そのグリフォンの鋭い爪の下には――全身傷だらけになり、剣を折られた一人の少女が倒れていた。
美しい銀髪に、高級感のある騎士鎧。
だが、その鎧はボロボロに砕け、少女の命は風前の灯火だった。
「くっ……私としたことが、こんなところで……!」
少女が絶望に目を瞑り、グリフォンの巨腕が振り下ろされる。
「おいおい、いくらなんでも見過ごせないぞ!」
俺は自動強化された『オリハルコンの神剣』を手に取ると、要塞の自動迎撃システムを起動し、そのまま外へと飛び出した。
「そこまでだ!」
◇◆◇
その頃――王都のギルド『暁の獅子』のクランハウス。
「クソがっ! なぜだ、なぜ剣が動かない!?」
グラハムは激昂し、手に持った愛剣を床に叩きつけた。
「グラハム、落ち着いて! 私の魔法もよ! 昨日のダンジョン攻略、レイルがいないせいで魔法の威力が上がらず、全滅しかけたのよ!?」
「俺の盾もヒビが入ったままだ……! 街の鍛冶屋に見せたら『こんな特殊な魔力調整、世界に数人しかできる奴はいない』って追い返されたぞ!」
メンバーたちの顔には、明確な【焦り】と【恐怖】が浮かんでいた。
今まで自分たちが「自分の実力」だと思っていた強さは、すべてレイルが裏で『全自動』並みの精度で施していたメンテナンスのおかげだったのだ。
「探せ! どんな手を使ってもレイルを見つけ出すんだ!」
「あいつがいなきゃ、俺たちはSランクどころか、ただのFランク以下だぞ!!」
かつてレイルをゴミのように追放した者たちは、自分たちが本当の「無能」であったことに、ようやく気づき始めていた。
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