第1話:クビを言い渡された裏方職人、真のスキルに目覚める
「レイル、お前は今日限りで我が『暁の獅子』を脱退してもらう。簡単に言えば――クビだ」
Sランクパーティ『暁の獅子』のリーダーである剣士グラハムは、王都の豪華なギルドの個室で、俺に向かって吐き捨てるようにそう言い放った。
周囲に座る他のメンバー――魔導士のセリアも、重騎士のボルクも、冷ややかな視線を俺に向けている。誰一人としてグラハムを止める者はいない。
「……理由を、聞かせてもらえますか?」
俺――レイルは、ぐっと拳を握りしめながら問い返した。
「理由? 決まっているだろ、お前の無能さだよ」
グラハムは嘲笑を浮かべながら、俺のステータスプレートを指で弾く。
「お前の所持スキルは【クラフト】。武具の研ぎ出しや簡単な道具の修理しかできない、ただの『器用なだけの雑用係』だ。俺たち最高峰のSランクパーティにふさわしいのは、伝説級の鍛冶師や付与術師なんだよ。お前のような地味な裏方をいつまでも連れて歩くのは、パーティの格に関わるんでね」
「待ってください! みんなの武器や防具のメンテナンス、予備の魔道具の調合、毎日のキャンプの設営まで、全部俺が引き受けていました! 俺がいなくなったら――」
「ハッ! 誰でもできる雑務を誇るなよ」
グラハムは鼻で笑った。
「装備のメンテナンスなんて誰がやっても同じだろ? お前は戦闘で何の役にも立っていない。ただ後ろで震えているだけの荷物持ちだ。……ほら、これが今までの手切れ金だ。とっとと出ていけ」
グラハムがテーブルに投げつけたのは、銀貨数枚。Sランクパーティの報酬としては、あまりにも舐めきった金額だった。
「……わかりました。今までありがとうございました」
俺はそれ以上、何も言わなかった。
彼らには理解できないのだ。
グラハムの身につけている『竜鱗の剣』も、セリアの『賢者の杖』も、俺が毎日寝る間を惜しんで微細な魔力調整をし、限界以上の性能を引き出していたからこそ、彼らが無傷で戦えていたということを。
俺は銀貨を拾い上げることもせず、静かにギルドの個室を後にした。
◇◆◇
王都を追われるように出た俺は、魔物が徘徊する危険地帯『黒の森』の境界付近にある、誰も使っていない廃屋に辿り着いていた。
雨風をしのぐだけのボロい木造の小屋。
木箱に腰を下ろし、俺は深くため息をついた。
「ハハ……これからどうしようかな……」
手元に残されたのは、自分の旅用リュックと、使い古して刃の零れた一本の短剣だけ。
悔しさがこみ上げてくる。
俺だって、好きで雑用ばかりしていたわけじゃない。
【クラフト】という地味なスキルでも、みんなの役に立ちたくて、血の滲むような努力をしてきたんだ。
「……くそっ」
俺は気休めに、右手を壊れたナイフにかざした。
「【クラフト】――修理」
微弱な光がナイフを包み込む。
いつも通りの作業だ。刃こぼれが治り、少しだけ切れ味が戻る。いつもなら、ここで終わるはずだった。
だが――その瞬間。
脳内に、聞いたこともない機械的なシステム音が響き渡った。
『――条件を満たしました。所持スキル【クラフト】の真の権能が解放されます――』
『――スキル【全自動神造】へと進化しました――』
「……え?」
耳を疑った。
直後、目の前に青い半透明のウィンドウが浮かび上がる。
---
## **【所有者】** レイル
**【固有スキル】** 【全自動神造】
**【詳細】** 対象に指定したすべての物体・概念を『全自動』で修復・強化・進化させる。時間経過とともに無限に性能が上昇する。
「全自動……強化……?」
混乱しながらも、俺は手にあるナイフに意識を向けた。
すると、ナイフの上の空間に小さなカウントダウンが表示された。
『対象:なまくらの短剣』
『自動強化発動中……[10秒経過]⇒【鋼の短剣】に強化』
『[30秒経過]⇒【ミスリルの短剣】に強化』
『[1分経過]⇒【オリハルコンの短剣(神聖属性)】に強化』
「な、なんだこれ……!?」
手の中で、ボロい短剣が目まぐるしく光を放ち始めた!
鉄の錆が落ち、銀色の輝きに変わり、さらには青白く神々しい粒子を撒き散らす絶対的な『神剣』へと、わずか1分で変貌してしまったのだ。
俺は何一つ手を加えていない。
ただ放置していただけで、文字通り「全自動」で神級の武器が出来上がってしまった。
「嘘だろ……? スキルって、こんな進化をするのか……!?」
震える手で、俺は周囲を見回した。
今、自分がいるこのボロい廃屋。雨漏りがして、壁には亀裂が入っている。
「もし、この小屋全体をターゲットに指定したら……?」
俺は試すように、小屋の壁に手を当ててスキルを発動させた。
『対象:廃屋』
『【全自動建築・強化】を開始します』
『自動修復中……自動防衛機能の付与中……[予定:1時間後に【絶対不可侵の要塞都市】へ進化]』
「要塞都市……!?」
ゴゴゴゴ……と、足元が静かに揺れ始める。
ボロかった木目の壁が、見る見るうちに漆黒の頑強な魔導金属へと置き換わっていく。
「これ……俺、何もしなくても世界最強の拠点が作れちゃうんじゃないか……?」
自分の持つスキルの恐ろしさに、俺は鳥肌が立つのを感じていた。
◇◆◇
その頃――王都のSランクギルド。
「おい、どういうことだセリア! なぜ俺の剣の切れ味が落ちている!?」
グラハムは討伐クエストから帰還するなり、苛立ちを露わにして怒鳴り散らしていた。
「私に言われても困るわよ! 私の杖だって、今日は全然魔力が集中しなくて、簡単な魔法すら威力が半分以下だったわ!」
「俺の防具もだ! 普段なら弾けるはずのゴブリンの攻撃で、甲冑にヒビが入った!」
メンバーたちは互いに顔を見合わせ、愕然とする。
「まさか……レイルが毎日やってたメンテナンスって、ただの掃除じゃなかったのか……!?」
「バカな! あいつはただの無能雑用係だぞ! 今さら戻ってこいと言っても……いや、探せ! 今すぐレイルを連れ戻すんだ!!」
グラハムたちの焦りの叫びは、虚しくギルドの中に響き渡るのだった。
少しでも「面白い」「続きが気になる!」と思っていただけたら、ページ下部の**【★★★★★】**での評価と**ブックマーク登録**をしていただけると、執筆の大きな励みになります! よろしくお願いいたします!




