第10話:世界の頂点に立つ職人と、終わらない至高のスローライフ
大商人ガルドが持ち帰った、わずか3つの『余り物』。
それが市場に出回った瞬間、大陸全土の経済と政治は激震に見舞われた。
不治の病に侵されていた大国の国王が『黄金リンゴ』一口で即座に完治。
エネルギー不足で倒壊寸前だった魔導都市が『グリフォンの魔核』によって100年分の電力を獲得。
さらには『木彫りの人形』を手に入れた大貴族が、暗殺者の神級魔法を傷一つなく弾き返したという。
「……というわけでレイル様。世界中の王族や首脳陣が、あなた様を『地上に降臨された神』として正式に認定いたしました」
リビングで紅茶を淹れながら、アイリスがさらりととんでもない報告をしてきた。
「神……? 俺、ただの元雑用係のクラフト職人なんだけど」
「もう諦めてくださいレイル様。あなたが『ただの職人』だと思っているのは、世界であなた様ただ一人だけです」
アイリスはくすりと微笑む。
さらに、膝の上で黄金リンゴを美味しそうにかじっていたエレナが、モニターを指さした。
「レイル様、見てください! 要塞の周りの森に、王国の建設隊が集まってきていますよ!」
モニターに視線を向けると、要塞の防衛境界線の外側で、数百人規模の職人や兵士たちが大急ぎで何かを建設していた。
「あいつら、何をしてるんだ……?」
「国王陛下からの命令です」
アイリスが誇らしげに胸を張る。
「『神級職人レイル殿の静かな生活を絶対に邪魔してはならない』という厳命のもと、この要塞の周囲一帯を『完全絶対不可侵区域』に指定したのです。要塞の周りに巨大な外郭都市を築き、世界中の害敵や怪しい者を防波堤となって遮断する構えですよ」
「俺の家を守るための城塞都市を、国が勝手に作ってるってこと……?」
「はい! これでレイル様は、何一つ煩わしいことに悩まされることなく、心ゆくまでクラフトとスローライフに没頭できます!」
国家すらもが、一人の男の「平穏な日常」を守るために動き出す。
もはや、レイルを害そうとする愚者などこの世界には誰一人として存在し得なくなっていた。
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その日の夕方。
要塞の広大なバルコニーに立つと、果てしなく広がる美しい『神農園』と、遥か遠くに建設されつつある聖域都市の灯りが一望できた。
空は茜色から群青色へとグラデーションを描き、心地よい夜風が頬を撫でる。
「綺麗な夕焼けですね、レイル様」
「うん、そうだね」
アイリスが隣に並び、そっと俺の手を包み込むように握ってきた。
その逆側からは、エレナが嬉しそうに俺の腕にすがりついてくる。
「私、エルフの里を追放された時は、自分の人生はもう終わりだと思っていました。でも……レイル様に拾っていただけて、本当に良かったです」
「私もです。騎士団の重圧に押し潰されそうだった私が、こうして本当の幸せを知ることができたのは、すべてレイル様のおかげです」
ふたりは愛おしそうに俺を見つめてくる。
固有スキル【クラフト】が【全自動神造】へと進化してから、俺の人生は一変した。
理不尽に追放され、無能と蔑まれた過去。
だが今では、世界で最も快適な要塞と、世界最強のチート能力、そして俺を心から慕ってくれる最高の仲間たちがいる。
「……よし!」
俺は二人を引き寄せるように抱きかかえ、笑みを浮かべた。
「せっかく要塞も広くなったことだし、今夜は全自動シェフに最高級のフルコースを作らせて、庭でパーティーでもしようか!」
「「はいっ、レイル様!」」
二人の弾けるような笑顔が、夕闇の庭園に咲き誇る。
追放された無能職人の、規格外すぎる全自動スローライフ。
面倒な戦いや政治はすべて要塞が自動で片付けてくれる。
俺たちの自由で幸せな毎日は、まだ始まったばかりだ――!
**(第1部・要塞完成編 ―完―)**
【第1部完結! 読者様へのお願い】
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