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お義母様のお言葉は絶対、なのですね? でも、一つお伺いしてもよろしいかしら  作者: ましろ


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16/17

16.


更新が止まってしまい申し訳ありません。

終盤を書きながら、気になっていた1〜15話もあちこち手直ししておりました。

本日、完結まで投稿しております。

お時間がありましたら、修正後の序盤から読み返していただけると嬉しいです。



 澄み切った青空の下、奥様の葬儀が大聖堂にてしめやかに営まれた。

 色鮮やかなステンドグラスの光が差し込む聖堂から、棺は屋外の墓地へと運び出される。

 弔問客たちは時折旦那様へ厳しい視線を向けながらも、埋葬を終えると静かに去っていった。

 皆を見送りながら、墓前には旦那様とシャーロット様だけが残された。

 緊張感がわずかに緩み、冷たい風の中で静かな時間が流れる。

 お二人は新しい墓碑の前に佇み、じっとそれを見つめていた。


「ラモーナ様を愛していると仰るとは思いませんでした」


 お嬢様の言葉に、旦那様の肩が揺れる。

 だが、その視線が墓石から外されることなく、ゆっくりと口を開いた。


「……二十年近く連れ添ってきた。たった一度の諍いで切れるはずがない」

「左様ですか」


 どちらも視線を交わすことはない。ただ、奥様だけを見つめ続ける。


「……すまなかった」


 冷えた空気に溶けるように、旦那様がつぶやいた。

 それは、誰に向ける言葉なのか。

 お嬢様はただまっすぐに奥様だけを見つめ続ける。


「私は受け取りません。お母様の墓前に、命尽きるまで手向けてくださいな」


 お二人の言葉を攫うように、まだ冷たい風が吹き抜けた。


「……ああ、そうしよう」


 旦那様の応えに、お嬢様が言葉を返すことはなかった。




 屋敷へ戻られたお嬢様は、葬儀の名残が少しずつ消えていく様子を静かに見つめていた。


「長い間、ありがとう」


 その言葉は、使用人に向けた言葉か、この子爵家に向けた言葉なのか。

 私達はただ静かに頭を下げた。


「お姉様!」


 お嬢様が玄関を出ようとしたとき、ペネロピ様が階段を駆け下りてきた。


「これ!」


 そこには、日の光に輝くヴァイオレットサファイアのブローチが握られている。


「ごめんなさいっ、返すのが遅れて! 」


 呼気に合わせ、黒のドレスの上で真紅の髪が揺れている。


「……これはあなたに預けるわ」

「え? で、でもっ」

「これを見て思い出して。なんのために努力するのか」


 お嬢様の言葉に、ペネロピ様が目を見張った。


「……でも。本当に辛かったら逃げてもいい。その時は売ってしまいなさい」

「そんな……私はっ!」

「あなたの人生よ。あなた自身が決めて。これは、そのために使っていいから」


 ペネロピ様の手を、ブローチとともに握る。

 お嬢様の真剣な眼差しに、見入るようにペネロピ様がつぶやいた。


「……きれい」

「え?」

「お姉様の瞳。このブローチみたいにキラキラしてる」


 ペネロピ様が笑った。


「……私、がんばる。お姉様とお話ができるように、精一杯頑張るから。……見ていてね!」


 それだけを告げると、ペネロピ様はそっと手を放し、もう一度だけニカッと笑った。

 そして、お嬢様の答えを待つことなく、軽やかに駆けていったのだ。

 その後ろ姿を静かに見守っていたお嬢様が、今度こそ足を進めた。


 玄関を出ると、外にはランディ様が待っていた。

 お嬢様の姿を見つけると、柔らかく微笑む。


「終わった?」

「ええ」


 お嬢様が少しだけ足を速める。

 その姿は、先程までの淑女然とした歩みとはどこか違って見えた。

 そして、迷うことなくランディ様の手を取った。

 エスコートされるのを待つのではなく、自ら伸ばした手だった。

 ランディ様が一瞬だけ目を見開いた。


「おや」

「……何ですの?」


 ランディ様が嬉しそうに笑う。


「いや。嬉しかっただけだよ」


 そうして、お二人は顔を見合わせて笑い合った。


「行こうか」

「ええ」


 そうして手を携え、振り返ることなく歩き出したのだ。






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― 新着の感想 ―
拝読させていただきました。 正直、モヤモヤしています。 けして悪い意味でなく、現実ってこんなもんだろうなって感じました。 大人の言い分、子供の言い分何となく分かるのが切ない物語でした。(けっして子爵の…
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