表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お義母様のお言葉は絶対、なのですね? でも、一つお伺いしてもよろしいかしら  作者: ましろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/17

15.


「……伯爵……」


 しばしの沈黙の後、旦那様がおもむろに顔を上げた。

 

「私は──ラモーナとの再婚を望んでいます」


 その言葉に、伯爵だけでなくラモーナ様までが目を見開いた。


「……お前は、喪が開けるどころか、まだ葬儀すら終わっておらぬというのに、あの子が築き上げてきたものを簒奪すると申すのかっ!」


 まるで、雷鳴のような伯爵の怒号に、旦那様がそれでも懸命に言葉を続ける。


「で、ですが! 伯爵も先ほど、おっしゃったではありませんか! もっと早くに離縁させるべきだったとっ、だからっ!」

「私は娘の幸せのために貴様との離縁を望んだのだ! 間違っても、あの子が苦心して作り上げた『子爵夫人』という立場を、その女にくれてやるためではない!」 


 旦那様の背中が、びくりと跳ねた。噛み締めた奥歯が、きしりと鳴る。

 その様子を見た伯爵の眉が顰められた。

 旦那様がわずかに顔を上げかけたその瞬間。


「申し訳ありません、伯爵様!」


 突如として響いた悲痛な叫びに、二人の視線が跳ねた。

 そこには、床に額を擦りつけ、身を震わせるペネロピ様の姿があった。


「ペネロピ⁉ お前、いったい何をやっているんだ!」

「……謝っています」


 床についた手は震え、髪の隙間から覗く首元が赤く染まっている。それでも、頭を上げることなく言葉を紡ぐ。


「だって、『ちょうようのじょ』なんでしょう?」


 その言葉に、ラモーナ様が弾かれたようにペネロピ様へとお顔を向けた。


「このお部屋で一番年上は伯爵様でしょう? それに、一番偉い方なのでしょう? だったら、叱られたら謝らなくちゃ。……『お母様の言うことは絶対』なんだよね?」


 ラモーナ様の顔から血の気が引く。


「……やめて、……やめなさいっ、ペネロピ!」


 ラモーナ様がペネロピ様を立ち上がらせようと腕を引くが、ペネロピ様は頑として動こうとはしない。


「……お母様、家でも言っていたわ。使用人のミスは許されないって。……平民は土下座でもして謝るべきだって。……じゃあ、私もおんなじ。……だって、平民になるんでしょう? ……それとも、あれもまた嘘なの?」


 涙に滲む声が、静かにラモーナ様を刺した。


「……どうして……なぜあなたがあの娘のようなことをいうのよ」


 ラモーナ様が絞り出すようにつぶやいた言葉が、静まり返った部屋にぽつりと落ちた。


「だって、私のお姉様なんだよね?」


 ラモーナ様の唇が震えた。しかし、言葉が紡がれることはなかった。

 ただ、呆然と立ち尽くし、床に額づく娘を静かに見つめていた。


「ペネロピ? そろそろ立ちましょう? 床は冷えるから」


 すると、お嬢様がペネロピ様へと手を差し伸べた。

 無理やり引き上げるのではなく、静かに待ち続けるお嬢様を見つめ、ペネロピ様がおずおずとその手を掴んだ。


「……でも、まだ許すって言われてないよ?」


 伯爵様の足先に視線を向けられたまま、もごもごと口ごもった。


「まさか、私に許せと言いたいのか」


 まだ怒りの冷めやらない伯爵が、苦々しく吐き捨てられました。

 そんな二人の間にお嬢様がその身を置く。


「お祖父様。ペネロピにチャンスを与えてくださいませ」

「……尼僧院のことか」

「はい。ペネロピに学びの場を与えてあげたいのです」

「どうして……、お前は、本当にその娘が憎くないのか?」


 お嬢様がペネロピ様を見つめ、そっと微笑む。


「半分ですが、妹です。……それに、両親に振り回され続けた仲間でもありますわ」


 伯爵がじっとお嬢様を見つめた。


「私は、決して許しはしない」

「はい」

「……だが、……あの子がこの子爵家のために決めたことなら、私が口をはさむべきではないのだろうな」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
いつまでやってんねーん
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ