見えない
目を覚ましたひろみ・・・
時計を見ると・・・
10時を過ぎていた・・・・
「わー、どうしよ・・・」
大慌てで・・会社に連絡した。
「報告がすみません課長・・・昨日、いろいろあったんで、・・・お昼過ぎにでも・・・・」と言うと
「いいよ、昨日は村瀬君の件もあったし、疲れたんだろう・・・今日は、有給扱いにしとくから・・」
「えっ、・・・でも・・・」
「これから、もっと忙しくなるんだろう?まぁ、お幸せに・・ 」
課長は電話を切った。
「課長・・・」
といっても、電話からは、”ツーッ、ツーッ”と言う音しか聞こえなかった。
これから何が忙しくなるの?
しかも
この不幸のどん底に・・・
何がお幸せに・・だ
おかしいんじゃないの?
とひろみは思った。
そして、ひろみは・・・これから何をしようかと考えていた。
その頃
えみと中村は、カフェで会っていた・・
「久しぶりに会うの・・元気ないわね・・・」
えみは、アイスラテを一口含んだ・・
「そうか・・Kプロも終わったし・・・」
「でも、そんな理由じゃなさそうね・・ひょっとして、ひろみちゃん?」
中村の動きが止まった・・・
「あ~ら・・・ 図星?」
「いや、そんなことない・・・」
あせって答える中村・・・
「何、あせってんのよ・・・」
「だいたい・・昨日・・・田中は、元彼とキスしていたんだ・・・」
「で・・・」
「でって・・・?」
「嫉妬・・・したんでしょう・・・」
「そんなことない・・・」
中村は、コーヒーを飲み干し、カップを机に置いた。
その時
「何で助けてくれなかったの!!」というひろみの叫び声が中村の脳裏によみがえってきた。
「どうかしたの・・ぼーっとして・・・」
えみが覗き込むように話した。
「やはり・・おかしいわよ・・」
えみはほお杖をついて、
「そうか・・」
うつむく中村・・・
「しかし、ショックだわ~・・・」
「えっ・・」
えみは、中村を人差し指でさして
「あなたの心に、私以外の人がいるなんて・・・」
「ごめん・・・」
中村は思わず言ってしまった。
えみは、少し目をそらし、悲しいそぶりをみせ、ため息をはいた・・・
そして
手を伸ばし、中村の顔をさわった。・・・
「そんなに・・・素直に、認めないでよ・・・」
「えっ・・?」
中村は、顔を上げた・・・
「えっ・・・じゃないわよ・・・」
顔を軽くつついた。
「いた・・・」
黙る中村・・・
「りょうちゃん!!・・・」
えみは少し強めに呼んだ・・・
中村は、少し顔を上げ、えみを見る・・・
「りょうちゃん・・・・好きになっちゃったのね・・・・ひろみちゃんのこと・・」
「なっ・・・何をいうんだ・・・」
少し恥ずかしそうに答える中村・・・
「自分の気持ちに素直になりなよ・・・」
諭すえみ・・・
そして
「今日は、私を慰めてほしかったのに・・・なんか、逆じゃない・・・・」
「ごめん・・・」
「ほら、また謝る・・・、」
にこやかに話しかけるえみ、内心は、悲しみでいっぱいだった。
「ところで、ひろみの携帯を教えて・・・・」
「なんでだ・・・」
「私も話があるんだけど・・・元恋人として・・・・」
その頃、
ひろみは、肩くらいまであった髪をばっさりと切って、ボーイッシュにまとめようと決心をしていた。
いつもの美容院へ連絡を取ると、3時に予約がとれた。
えみと中村は、昼食をとっていた・・・
例の洋食屋さんで・・・
「私の自由時間・・・夕方までなの・・・」
「それだと、あまり時間がないな・・・」
「だから、今日は、違うところ行きたいの・・・」
「どこだ・・・」
「海・・・」
「海か・・・わかった。」
二人は、食事を終え、車に乗った。
中村が運転している中、えみは、携帯をかけた。
「だれにだ・・」
中村が聞くと
「もちろん・・・ひろみちゃんよ。」
ひろみの携帯がなる・・・
「誰だろう?」
見たことのない番号に戸惑いつつとった。
「もしもし・・・田中ですが・・・」
「あっ・・・ひろみちゃん?」
どこかで聞き覚えのある声・・・
「あの~、すみませんが・・・」
しかし、聞き返すひろみ
「わたしよ、えみよ・・・」
それを聞いて
なんでえみさんから電話なのと驚くひろみ・・
「こんにちは・・・えみさん」
「なに、改まっているのよ・・・」
「すみません・・・」
「今日の夕方、あいている?ちょっと会いたいんだけど・・・」
ひろみは、戸惑った。
何で、私が・・・
ひょっとして中村さんなんか変なことをいったのと・・・
「5時頃ならあいていますけど・・・」
と答えた
「じゃぁ、この間あった駅前で会いましょう・・・」
「はい・・・」
電話は切れた・




