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発散・・・

車に乗った二人・・・・


「どこに行くんですか?」


とひろみが聞く


「ソウル・・・」


「えっ・・・いやですよ・・・みんなの前で歌うことになるし・・・」


「一人でカラオケでこじんまりと歌うより、いいよ・・・絶対・・」


「なんで、そんなことが言えるんですか。」


「おれも、えみも・・・そうやってたから・・・?」


「えっ・・・えみさんも・・・」


えみのことを聞いてひろみの顔が暗くなった。


「だったら、えみさんと行けばいいじゃないですか。」


ひろみはつい本音を言ってしまった。


「それは出来ない。」


「なぜです?この間言ったじゃないですか。」


「それは・・」


言葉を濁す中村、そして、


「えみとは、もう・・もどれないんだ・・・」


「どうして?」


中村の顔を見たひろみ・・・


「すみません・・・余計なことを聞いて・・・」


「いいよ・・」


中村は昔の話をし始めた。


俺達は、実は3人でバンドをしていたんだ・・・


バンドにはもう一人、新一という男がいた・・・


・・・やがて、


中村とえみが恋に落ちた・・・


新一は何も言わなかったが・・・


えみのことが好きだった。


そして


二人が付き合いだすようになった


ある日、新一が自殺した。


それから、えみとの間には、見えない壁ができた・・


二人の間にしばらく沈黙が続いた・・・


「ごめん・・・こんなことを言って」


中村は話したことを後悔した。


「いえ・・・・」


しかし


ひろみには、まだ中村がえみに未練があるとしか思えなかった。


そして


車は、ソウルの近くに着いた・・・


二人がソウルに入るとすでに誰かが歌っていた・・・


「りょうちゃん、いらっしゃい・・・今日は、この間の子を連れてきたんでね・・ところで、すぐに歌う? 」


マスターが言うと・・


「どうする?」


中村がひろみに聞く


「歌より・・・」


ひろみがつぶやく・・・


「なに?」


「何か、食べさせて・・・」


「わかった・・マスター何か、食べ物を・・」


中村は、ひろみの食事風景を見て、ニコニコしていた・・・


「何、人が食べてるの見て、わらってるんですか?」


ひろみの問いかけに中村がにこやかに答える。


「それは、田中さんが楽しそうに食べるからだよ。」


「あんまり、じろじろ見ないでください・・・はずかしいですから。」


から揚げをほおばるひろみ・・


「さっきまで、無視してひたすら食べてた癖に・・・」


「そんなこという?もう・・・」


と顔を少し膨らませた。


「ごめん、ごめん・・・」


謝る中村・・・


しばらくして


ピアノがあいた・・・


「ぼちぼち・・・行こうか。」


と中村がいうと


「はい・・・」


やがて・・・


中村の伴奏がはじまり・・・


ひろみが歌う。


透きとおった甘い声で・・・


それにあわせ、中村も歌う。


二人は、われを忘れ思いっきり歌った。・・・

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