プロローグ
――声が、聞こえる。ずっと私を呼ぶ声が、どこかで響いていた。早く、早く戻らないと。そう心が焦るのに、私はどこにもいけない。行けるはずがないのだ。
だってここで、終わる命なのだから。
「アーシャ・アルトラン!! 貴様との婚約を破棄する!!」
目の前でそう叫んだ青年に、小さくため息をついた。
……馬鹿な人。愚かだわ、第二王子様。そしてあれこれ嘘を並べる悪女も、本当に哀れ。今日は平和祈念祭なのよ?
六十年前に起きた魔術教団との戦争。
その犠牲となった英雄たちへと捧げる平穏をぶち壊して、ただですむと思ってるの? 思っているのでしょうね。王族だから許される、その考えが間違ってることにいつ気付くのだろう。
この国で一番権力があるのは、王族ではない。今、あなたたちへと向かってる名無しの教師。
色彩の魔術師様が、この国を動かし、守っているのよ?
そして六十年前の戦争は、彼からたくさんのものを奪った。未来のために死んだ英雄の中には、色彩様の親友や知り合いがたくさんいたの。
失われた命は決して戻らない。だからこそ、死者の願いを壊したあなたたちは、許されない。
……でも、あなたは許してしまいそうね。
小さく笑みを浮かべて、すべてを譲り渡した。
私は知っていた。私という自我は、ただの防衛機能。
この体を守るために構築された魔術だ。
あなたの目覚めと共に、私は消え去る。あなたに気付いてもらえる日は、決してないだろう。
それでもお役に立てたことを誇りに思う。
おはよう、俺。さよなら、私。
ようやく、役目を果たせたわ。
第一章が書き終わりましたので、毎日投稿をしていこうと思います。投稿は、朝の八時にやっていきます。
もし面白ければ、評価をもらえると嬉しいです。




