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第8話 黒瀬、初めての同人誌イベント!

体育祭も終了し、あっという間に時間は過ぎ、なんとか同人誌を描き終えた黒瀬。

_____

そして今は7月。ついに迎えたイベント当日。


「和泉。ついにやってきたよ。」


「だな、ここまでよくやったな。黒瀬。」


イベント名はコミック・ステラ。


決して大きな会場ではなく、数十個程度のサークルが参加する小さなイベント。


初めてのサークル参加ならちょうど良い規模感だろう。


「すごいね、いよいよって感じだね。」


黒瀬は少し緊張した様子でいた。


「どうした?震えてるぞ?」


「......武者震(むしゃぶる)いってやつかな。楽しみだね和泉。」


黒瀬はこの数ヶ月同人誌制作に向けて、頑張ってきたのだから当然だ。


「一人でも多くの人に届いたらいいな。俺も売り子頑張るからな!」


「あ、いや。売り子はね私やるから。」


俺も協力しようと思っていたのに。そんな信用ないんか。まあまあ悲しい。


「和泉はいい感じに裏方しててちょうだい。」


「はいはい。わかったよ。なんかあったら言えよ。」


なんでだよ。そんなやらせたくないんか。まあ俺は何もしてないからな。


「よし和泉行くよ。れっつごー。」


「はいはいー。」


そして俺たちはサークルの販売スペースへ向かい、準備を進める。


「黒瀬、まずはお隣さんにあいさつだぞ。」


「もちろん。分かってるよー。アニメで見たからね。」


隣のサークルは俺たちより少し大人っぽく、綺麗な金髪のお姉さんだった。


俺たちよりずっと慣れているようで、テーブルの上を整えている。


「こ、こんにちは。今日はよろしくお願いします。」


人見知りな黒瀬はぎこちない様子で隣のお姉さんにあいさつをした。


「こんにちは。あら若い子たちだね!初めてなのー?」


「は、はい!初めてです!」


緊張している俺たちにとても優しい様子で声をかけてもらった。


「初めてなんだ!それじゃ色々わかんないことあったら聞いてね!」


「は、はい!ありがとうございます。」


そして準備を着々と進めていく。


「和泉。ちょっとトイレ行ってくるから待っててー。」


「はいよー。」


最後の仕上げに俺はスペースを整えたり、机の上の整理を行う。


「マジカル☆ハート本よし。」


「値札よし。」


「おつりよし!」


_____と。その時。


「和泉おまたせー。」


「おお。ずいぶん時間かかったな......」


そこにいたのはクラスの「女帝」でもなく、俺の「幼なじみ」でもない。


魔法少女の「ルミナ・ハート」がいた。


「ル、ルミナぁぁ!?へ?どゆこと!?」


思わず俺は声が裏返った。


ピンクを基調(きちょう)とした第一期のフリルの衣装に、特徴的なハートの髪飾り、手にはゴツい魔法のステッキ。


「和泉くんの腕もぎ取っちゃうぞ?」


そんな普通なら意味のわからないセリフに俺は。


「ルミナぁぁぁぁぁあ"!!?って黒瀬!?」


「私だよ?私。和泉ドキッとした??」


否定できない。そりゃそうだ。俺の一推しのルミナが目の前にいるのに、ドキッとしないわけがない。


「......正直驚いた。に、似合ってるよ。黒瀬なんてわかんなかったよ。」


「へへ。でしょーー?」


黒瀬はドヤっとした表情でニコニコ笑う。


「今日のために用意したんだよ?和泉を驚かせるためにね。」


「だ、だから売り子は自分でやるってことかよ!まじでびっくりだ......。」


黒瀬は魔法のステッキで俺のことを指し言う。


「和泉?かわいい?」


「......」


真正面から言われて答えられるわけがない。もちろんルミナになら言えるが、ここにいるのは黒瀬澪央だ。


「ねー?和泉?どうなの??」


黒瀬が俺の顔を楽しそうに覗き込んでくる。


「い、いやその......。」


俺が言葉を続けようとしたその時。


『まもなくイベント開始となります。サークル参加者の皆様は、それぞれのスペースにてお待ちください。』


会場内にアナウンスが響いた。


「ほ、ほら!黒瀬、準備しようぜ!始まるぞ!」


「もーう。ばか和泉。逃げたな。」


黒瀬は不満そうに頬を膨らませる。


「ほら。黒瀬、人がいるぞ!」


イベント開始時刻が近づき、会場の入り口に人がいるのが見える。


黒瀬の不満そうな顔も真剣な表情に変わっていた。


「ね。和泉、どれくらいの人の人が手に取ってくれるかな。」


「そうだな。きっと大丈夫だ。愛を込めて黒瀬が描いた作品だろ。」


黒瀬はテーブルに並べた同人誌をじっと見つめる。


「心配か?」


「そりゃね。」


そして開始のアナウンスが鳴った。


『これより第26回コミック・ステラを開催いたします!!』


黒瀬は前を向き、まっすぐな視線でこう言った。


「よしっ。やろっか。」


「おう!届けような!」


二人は声を揃える。


「いらっしゃいませーー!」


_____次回、同人誌を届けよう!編



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