第5話 黒瀬澪央は同人誌を描きたい。
「......とまあ。色々と同人誌を出すって言ったって大変なんだよ!」
「えーだって出したいんだもん。」
黒瀬はどうやら同人誌を描きたいらしい。
なぜなのかは俺もよくわからない。
「というかお前、絵描けるのか?」
「え?和泉が描いてくれるんじゃないの?」
「は?」
こいつ完全に同人誌を舐めていやがる。
「そもそも同人誌というのはなぁ!好きな作品への『好き』を自分の手で描いて形にするものなんだよ!!ただ描けば良いってもんじゃない。」
「その作品への愛!こだわり!そしてなにより情熱が必要でな_____」
(俺は同人誌を描いたことがある。そんな生半可な気持ちで描かせてたまるか!)
「ただ作品を売ってお金を稼ごうとするなんてもってのほか!」
「あーーはいはい分かったってば!」
「ったく本当にわかっているのか......」
そんなやる気のない返事に俺は大きなため息をつく。
「もう。そんな言うなら、和泉が先に描いてみてよ。」
「いいぞ。見て驚くなよー?」
そして俺はノートの切れ端にシャーペンでささっと、ルミナの絵を描いた。
「う、うそでしょ?和泉......絵描けちゃうの?」
「実は俺、絵少しだけど描けちゃいます!」
描けるとは言っても、別にそこまで上手いわけでもない。そこそこ上手いくらいだ。
「本当に黒瀬が同人誌描く気があるなら教えるぞ。」
過去に描いていたからこそ、俺はこんなにも同人誌に対して熱くなっている。
「ほんとに!?ミラクル☆ハートの同人誌描いてみたい!」
「よし!!まずは黒瀬お前の絵も見せてみろ......」
_____数分後。
「黒瀬......お前!」
「まあ知ってたけどさ、普通に下手すぎる......」
黒瀬澪央。勉強では常に上位をキープ。スポーツも万能で、体育祭でも大活躍。
「だって。仕方ない。こんなのどうやって描けば良いのさ。」
しかし。不器用で昔から絵を描いたり、手先の細かい動きをするものが苦手だった。
「まあいい。黒瀬、まずは丸とか正方形を描く練習してみようか!」
「いや。流石にバカにしすぎでしょ_____」
まあ知ってはいた。丸は大きく形が歪み、正方形も台形のような形になっていた。
「和泉ぃ、どうやって描けばいいのよぉ!」
「だ、大丈夫!練習あるのみだ!」
俺も最初はこんなふう......ではなかったが、きっと黒瀬なら大丈夫だろう。
_____なぜだ。あれから10回ほど描いてみてもなかなか上手くいかない。
「もう無理。全然描けない!」
「だからさ。力入れすぎだって。」
もう一度チャレンジしてみるが、なかなか上手くいかない。
「もう無理だよぉぉぉぉぉ!」
「お、おい!だから落ち着けって黒瀬!」
「やめろ!ち、近いって!!」
黒瀬は椅子に座っている俺の上に座る。モチッとした太ももの感触と髪のいい香りに俺の理性は破壊される。
「これなら教えられるでしょ?」
「ま、マジでお前!降りろって!!」
こんな状況耐えられるわけがないだろ!!
「ほらほら教えてよ。和泉?顔真っ赤だよ?」
そして黒瀬は俺の手を自分の手に重ねる。
「ほら和泉?私の手を誘導して。」
「は、?マジでお前。こんなこと。どうなっても知らんぞ......!」
言われるがままに俺は黒瀬の手を誘導し、丸を描く。
「どうしたの?さっきはあんなに上手く描いてたのにー?」
「う、うるさい。集中しろ。」
(心臓がうるさい。鼓膜が破れそうだ。やばい。いい匂いだ。女の子ってこんなにフワフワなのか!?)
丸が完成しかけた所で俺は爆発した。
「どわぁぁぁぁ!!!!」
俺は黒瀬を突き飛ばしてしまった。
「いだっ。和泉痛いんだけど!」
「うわぁぁぁぁぁ!!!!!」
俺は部室を飛び出した。
黒瀬一人が部室に取り残された。
「和泉のいくじなし。勇気出したのに......」




