第4話 放課後の攻防
放課後になり、俺は部室へ向かう。
「黒瀬、さすがに来てないよな。悪いことしたな。」
思いがけない事故だった。勢いよく開いたドア。
誤って部室で黒瀬を押し倒し、あられもない姿にさせてしまった。
「また来てくれるかな。」
......ってなに考えてんだ俺!
別に来なくたって困らない。なのに昨日からずっと黒瀬のことを気にしてしまう。
いつの間にか黒瀬が部室に来ることを楽しみにしていたらしい。
「ああもう!!いい!今日は昨日の続きの1期62話から見るぞ。」
そして俺は部室のドアを開けた。
「あ、やっほ。笑」
「いや、いるんかーーい。」
昨日のことなんてなかったかのように、黒瀬はいつも通り靴下を脱ぎ、リラックスした様子だった。
......しかし、なぜかニヤニヤしている。
嫌な予感がする。
「ま、まさか黒瀬、聞こえてた?」
「うん笑」
_____終わった。
黒瀬は立ち上がり、俺に顔を近づける。
「また来てくれるかなーって??笑」
「やめろぉぉぉぉ!!!!」
「ああぁぁぁぁぁ!!俺をどうにかしてくれぇぇえ!!!!」
_____誰か、俺を殺してくれ。ルミナ。手足バラバラにしてくれ。
「えーなに?私がもう来ないと思って心配だったのー??」
「うるさいぞ!!だまれぇぇ!!」
「ほらほら。もう一回言ってみなよー笑」
「私とー?ずーっと一緒に??なんだってー?」
黒瀬を完全に調子に乗らせてしまった。
「は、はぁ!?そんなこと言ってないわ!!」
「ほら、顔真っ赤じゃん笑。大丈夫かなー?笑」
よし。やられっぱなしなわけにもいかない。
「黒瀬こそ!クールキャラ演じてるくせになんだあの顔は??」
「すごかったなぁ?あんなの誰にも見せられないなぁ?」
「女帝の黒瀬澪央が!?たかが幼馴染のオタクに押し倒されて、あんなメス顔するなんて!!!」
黒瀬は顔を真っ赤にし、俺に背を向けた。
(やばい少し言いすぎたか?)
「や、やめてよぉ。ごめんねって......あんなの初めてで、どうすればいいか分かんなかったんだから......。」
「男の子にあんなとこ見られるのなんて。和泉だからだよ。許したの。」
チラッと見えた目は少しうるんでいて、涙が溢れそうに見えた。
「黒瀬っ!?ご、ごめん。」
ウグッ
俺が咄嗟に謝った瞬間、黒瀬は俺の
頬を両手でつねる。
「バーカ。和泉のバカぁ。責任とってよ。」
「痛ってぇ。......ったく責任ってなんだよ!」
よくラブコメにありがちなセリフだ。
実際に聞いてみるとなんだか恥ずかしいな。
「ってかさ。和泉。」
「なんだよ黒瀬?」
どうしたのだろう。黒瀬は急に立ち上がり、俺を見る。
「コミケに行きたい。行ってみたいんだよ。」
オタクなら一度は夢見るであろう。コミックマーケット。俺も小学生の頃は憧れたもんだ。
「急になんだ。いいけどさ。目当ては何だ?ルミナ、シオンのペア推しだったよな?そこら辺か?」
「いや、それもそうだけどさ。そうじゃなくて。」
ではなんだろう。何か他のアニメとか漫画だろうか。
「あー分かった。レイヤーの写真でも撮るんだな?いいね素晴らしい!」
「違うよ。私、同人誌描きたい!」
黒瀬はスタイルもいいし、顔もいい。コスプレならまだ考えれたが、予想外の答えに俺は驚いた。
「は。嘘だろ!?コスプレしたいとかじゃなくて!?」
「へー?和泉は私のコスプレ姿が見たいんだー。すけべー。」
「ちがうわ!!!」
さっきの涙は嘘だったのだろうかと思わせるほどきりかえが早い。
「で、なんで急に同人誌なんだよ?」
「んー、なんか楽しそうじゃん?」
(舐めてやがる。世の中の同人誌作家さんごめんなさい。俺が代わりに謝ります。)
「えー?和泉は描けないの?」
「描けるわけないだろ!俺は読む専門だ!」
もちろんだが、描こうとしたことはあった。いや結構本気で描いた。しかし、かなりの駄作っぷりに俺は挫折し、制作をやめた。
「じゃあ、私が描くから和泉が手伝ってよ。」
「……は?」
「だーかーら!一緒に同人誌作ろうよ!」
……こうして俺は、思いがけず同人誌制作に巻き込まれることになった。
しかも、相手はクラスの女帝。
一体どうなることやら。




